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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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殺人命令

俺はガラス越しの男達が話し合っているのをドラマを見るような感覚で眺めていた。


眼を異様に釣り上げた男が大声でジョーカーに訴えた。

「ドアを開けるように仲間に伝えろ」

奥村は一歩前に踏み出し銃口をジョーカーの眉間に合わせた。


「この状況では開けられない」

ジョーカーは言った。


奥村は、今度はマジックミラーに向かって大声で叫んだ。

「ドアを開けなければジョーカーを撃ち殺す。助けたければドアを開けろ!」


「僕が開けろと言わない限りドアは開かない」


「じゃあ、言うんだ。ドアを開けろと言え!」

ジョーカーは何も答えなかった。


奥村は銃を二、三度ジョーカーに突きつけるような仕草を見せ怒鳴った。

「言っておくがこれはモデルガンじゃない。

三十八口径の自動拳銃だ。この距離ならお前の頭を貫通する。

死にたくなければサッサとドアを開けろと言うんだ」


「死は望んではいないがこれ以上生きたいとも思っていない。撃ちたければ撃つがいい」


「死ぬのが怖くないのか?銃を向ければ誰でも拝みながら命乞いするんだ。

自分はそうじゃないと最後まで言えるのか試してやろう。手足から一発づつ撃ち抜いてやる」


「もういい、銃を下ろせ」

棚村は、奥村と佐藤に命じた。


「元基君、君の父親を殺したのは私達の組織だ。だが、これは

日本の為にやった事なんだ。元基君。我々は兵士なのだ。

日本に害を及ぼす人間達を粛清し、平和で安全な国になるように陰で支えている、見えない兵士なのだ。

君が我々を憎むのは分かるが、そこのところを理解してくれないか」


「白根伊織は僕の養父です。

伊織と言う人物は僕の知る限り日本に害を及ぼすようなことは行っていません。

僕にとって、誠実でやさしい養父でした。

調べていくうちにあなた方の組織を知りそして、

養父が自殺ではなく他殺だと分かった時は驚きました。

地下警察という組織の存在、あなた方が犯した罪」


「白根伊織が養父?…そうだったか。

君の生い立ちは知らないが君もそれなりに苦労したのだろう。

一つ訊きたいのだが、一体何のために我々を調べようと思ったのだ。

今の話を聞けば、君は養父は自殺したと思っていた。殺されたとは疑っていなかった。

何を調べようとしていたのだ」

棚村はジョーカーに尋ねた。


ジョーカーは黒いサングラスの柄を右手の指でつまんだ。

ユックリとサングラスは外された。

外されたサングラスから現れたのは金色の瞳と青色の瞳の眼だった。


男達はそれを見て後ずさりした。


「知りたかったのは、僕自身の事です。この不気味な目を持った人間がどうして、何のためにこの世に生まれたのか知りたかった」


「それと我々とがどういう風に結びつくのだ」


「因縁ですよ。全ては繋がっていた。

僕達は運命的に繋がっているんです。どす黒い反吐が出そうな切っても切れない腐れ縁ですけどね」


「意味が分からないが」


「知りたければ僕の目を見てください。この青い眼と金色の眼をよく見てください。全てが分かるはずだ」


「君の眼を見る?」

棚村は不思議そうな顔でジョーカーの眼を見つめた。


「目は口以上に語ってくれる。僕の眼を見るんだ」


他の男達も言われるままジョーカーの眼を見つめ始めた。

ジョーカーの金色の瞳が光りを放しはじめた。

そして片方の青い瞳は次第に深みを増し面積を広げるように水晶体を覆い尽くした。


五人は、ジョーカーの眼を食い入るように見つめた。


俺自身も吸い込まれるようにジョーカーの眼を見入っていた。

『兄さん!駄目だ。ジョーカーの眼を見るな!』

博史の叫びで、俺は慌てて目を逸らした。

横にいるベルマンは、立ち尽くしたままジョーカーの眼を見つめていた。

『ジョーカーはあの眼で彼らを洗脳しようとしている。あの金色の瞳で人の心の奥深くに自分の意思を植え付けていくんだ』

「あの青い眼は何だ」

『まだ分らない。とにかく彼の眼は見ない事だ』


突然、黒いコートの男達が床にうずくまる様にしゃがみ込みはじめた。

数人の男は激しく嘔吐するように口を開け咳き込んでいる。


「全てが理解できたはずだ。これから先、あなた方が何をしなければならないかも分かったはずだ」


コートの男達はよろけながらも立ち上がりジョーカーを見据えた。


「それぞれ、ここを出たら普段通りの生活に戻ればいい。そして、高級官僚の道を歩み続けることだ。

そして、君たちの仲間、地下警察の一員をできるだけ多く、僕の前に連れて来るように。

僕のこの金色の眼で正しい方向に導いてやろう。

多くの者を救いたい。

そしていつか君達は、自身の手で君達の邪悪な組織に反旗を翻すのだ。

この国を、いや世界を救うために

武器を持って立ち上がるのだ」


そう言い終えたジョーカーはマジックミラーに向かって頷くように頭を縦に振った。

ベルマンはそれを合図にもう一つのボタンを押した。

ブザーが鳴りドアロックが開く音が鳴った。


「さあ、行くがいい。僕の忠実な兵隊さん」

そう、黒コートの男達に言い放った。

男達は夢遊病者のようにドアの外に出始めた。

ジョーカーはコートの男達がすべて部屋から出るのを確認した。


ジョーカーはサングラスを掛けマジックミラーの前に立った。

俺とジョーカーはマジックミラー越しに対峙することになった


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