カマフー
小和田達がバーに来た。
四人たむろし、肩を揺らしながら俺達の前を通り過ぎた。
俺達のボックス席から少し奥まった場所にある、ビップ席という少し敷居の高くなった部屋にに入った、
そのビップ席は周りが鏡に覆われた特別な部屋だ。
俺達からは、ビップ席の中が見えず、ビップ席からは俺たちが丸見えというマジックミラーで覆われている席だ。
その席から気に入った女の子を指名できる特別料金の部屋だ。
ちょうどそこにタイミングよくカマフーが現れた。
直ぐに指名がかかったらしい。
ビップ席には小和田達だけがいる。
小和田はカマフーを指名したようだ。
あとは、カマフーの腕次第だ。
もちろん、俺達の席にもそれなりの普通のホステスが隣に纏わり付いている。それはそれでこちらも楽しんで時間を潰すということになる。
特に楽しんでいるのが、ベルマンだ。こいつの弱点は女だ。
まったく、俺達が白けるぐらいにイチャついている。
時間が経つにつれ、次から次へと客が入ってきた。
俺達はノンアルコールのビールで話が弾む。
しかし、普通のビールよりもアルコールフリーの方が値段が張るのが癪に障る。
しかし今日は、俺達、それぞれバイクで来たからしょうがない。
二時間経過後、小和田達とカマフーが連れ立ってボックス席から出てきた。
カマフーが俺たちに親指を立て合図をした。
どうやら首尾は上場のようだ。
俺たちも直ぐ席を立とうとしたが、ベルマンがなごりおしそうにホステスの一人と座ったまままイチャついている。
俺達は無視した。
「死ぬまでそこにいろ」
と俺は捨て台詞を吐いてバーを出た。
もちろん、ベルマンは慌てて追いかけてきた。
束の間の別天地から目が覚めたようだ。
いつもの鋭い目に変わっていた。
俺達の携帯にはGPSでお互いにどこにいるかを確認できる。
カマフーを見失ったとしても携帯で位置検索ができる。
カマフーは首尾よくまんまと小和田達によってナンパされた。
俺たちは、奴らの車をバイクで尾行した。
数台のバイクが一斉に後を付けるのは目立つためそれぞれ、バラバラになって尾行した。
BMWは、人気のない埠頭で止まった。
俺と、ベルマンはバイクのヘッドライトを消しゆっくりとBMWに近寄り
遠巻きに様子を伺った。
カマフーの事だから心配はないと思うが、しかし相手は男四人。
どうなるかが見ものだ。
つまり、心配よりも興味津々だった。
カマフー、ひょっとしてその気になってるんじゃないかと。
どちらかといえばそっちのほうが心配だ。
仲間達が送れて俺たちに合流した。
カマフー血迷うなよ。
俺は願った。
車は、止まったままだ。
時間はどんどん過ぎていく。冷たい風が舞い始めた。
ベルマンは、言った。
「アイツ、やられてるのか」
「まさか」
と、キツネが言う。
「行ってみようか?」
コブラが心配そうな顔をした。
計画では車から出てくる四人を、俺たちがひっ捕まえるはずだ。
しかしあまりにも遅い。
俺達は痺れを切らし、BMWまで走り寄った。
そして車の中を覗き込んだ。
カマフーは、助手席でタバコを燻らせていた。
四人の男は…と言えば、
小和田は、運転席で気を失っている。
あとの三人は、と見てみると後部座席で同じく気を失っていた。
俺はドアを開けた。
とたん、カマフーはあのイントネーションが鼻にかかった声を発した。
「おそいわよ!」
「遅いって?こいつらを車の外に出す手筈だったろう」
「そうする前に襲われたーの」
「なるほど、しかし何だ、その嬉しそうな言い方は?」
「こわかったのよ」
「誰が?」
「わたしよ!」
「ところで、何でこいつら気を失ってるんだ」
「だって、ズボン下げるんだもん」
「ズボン下げたら気を失うのか?」
「そうじゃあなくて、握っちゃたの」
「だから誰が?何を握ったんだ!」
俺はもうこのカマフーとの会話にイラついてきた。
「私が、たまたま、タマタマチャン握っちゃたの」
俺達は目が点になって首をかしげた。
しばらくして納得した。
そうか、このカマフーの握力は確かクルミを丸ごと素手で割るぐらいの力があったんだ。
なんて奴だ。
だからこいつら泡吹いて気失ってるのか。
俺はもう言葉が出なかった。
もう充分過ぎるぐらいこいつらに焼き入れたみたいだった。
しかし、可哀そうだが本番はまだこれからだ。




