おしおき
損得抜きで腹を割って話しあえる仲になり、そこから信頼、友情が芽生えれば、
仲間の結束はより固くなる。
と思うのは幻想かもしれない。いつも油断は大敵という言葉を思い出すことだ。
心のぶれは誰にでもある。
闇に隠れた本心は当の本人でさえも覗けない場合がある。
その時が来るまでは…。
順子を付け狙う男共を調べ上げるのに元暴走族の仲間達は、奔走してくれた。
ただ、彼らも仕事を持っている。
四六時中奴らの身辺を探るわけにも行かない。
休日を利用し、それぞれ手分けして調べたのだった。
死を待ち続けるだけの横たわった弟の願いの為に俺のダチ達は
無償で動いてくれた。
調べていくうちにある程度の事が分かった。
BMWの運転席から順子に声を掛けていた金髪の男、名前は小和田 快。
奴の過去から、素顔が見えてきた。
高校生のときに傷害事件を起こしていた。
ところが、立件されずでウヤムヤになった。
俺もダチ達も、数えきれないぐらいの喧嘩をやった。
傷害事件すれすれの刃傷沙汰も起こしている。が、相手はすべて暴走族。
チンピラ共だ。一癖、二癖もある輩だ。
そんなこんなで
警察に一、二度お世話になったこともある。
ところが、小和田の傷害の相手は、女性だ。
しかも、卑劣な婦女暴行。
なのに、刑事事件になっていない。
その理由を知って俺たちはあきれた。
小和田の父親は警察庁の役付きをやっている。
警察官僚の一人だ。
そのせいか表沙汰にならずにすべて内々にことが運びお咎めなしだ。
信じられない話だ。
権力の前では正義もねじ伏せられる、と言う事らしい。
しかも、正義を施行する組織が正義を捻じ曲げている。
小和田とつるんでいる輩があと三人いることがわかった。
あのBMWに乗っていた男達だ。
仕事もろくに就かないゴロツキ共だ。そいつ達の名前と、素性も分かった。
「奴ら、どうやら順子さんに狙いをつけているようだ」
族仲間の一人、キツネが俺に告げた。
そうそう、俺達、族仲間は名前では呼び合っていない。
みんな愛称で呼んでいる。
ほとんど俺が名付け親だが。
ちなみに俺はウルフ。
意味はない。
仲間がそう名付けただけだ。
先ほどのキツネと言う奴は、俺が名付けた。
ずる賢さは、ダチ仲間では群を抜いている。
「順子さんもえらい奴に目を付けられたな」
もう一人の仲間スカンクがあきれた顔で言った。
スカンク、コイツは蓄膿症で鼻が馬鹿になっている。
だからどんな臭いも平気な奴。
しかもコイツのおならは天下一品ときている。
臭いも音も。
「今のところまだ、主だった動きはない。
声を掛けている程度だがいつ牙を剥くか分からない。時間の問題だ」
族仲間では一番の強面、ベルマンがはき捨てるように言った。
ベルマン・・ホテルの従業員ではない。ドーベルマンの略だ。
性格はそのものズバリ、ドーベルマン以上の獰猛な奴だ。
「どうする。あのままほっとけばあいつらは、いずれ順子さんを襲うだろう。
特に、あの小和田って奴、蛇のように執念深い男のようだ」
仲間の中で一番若いコブラが俺に忠告した。
コブラ・・・それほど意味はない。コイツは自分で自分のニックネームを付けただけだ。
俺が変なネームを付ける前に。
「そろそろ、奴らのお尻をペンペンしてやらないとまた悪さするぜ。三人共まとめて面倒見てやったらどうだい」
ベルマンは、タバコに火をつけながらいつもの鋭い眼で俺に探りを入れてきた。
どうやら仲間達の血が騒いでいるようだ。
向こうは申し分のない卑劣な豚野郎共。
情けなど必要はないだろう
「久しぶりに一暴れするか。ここんとこ、体もなまっているからな」
俺はそう言った後、周りの連中を見渡した。
俺のその言葉を仲間たちは待っていたようだ。
皆、頷きながら笑みを浮かべた。
昔の元暴走族、ワルそのものの顔がそれぞれ蘇った。
俺たちがやろうとしている事は、そう大した事じゃない。
この豚共が、今まで犯した罪に比べれば可愛いものだ。
要するにベルマンが言ったようにお尻ペンペンをしてやるだけの事。
こいつらのだらしない親達がやらなかった躾というものを代わりに俺達がやったまでのこと。
計画はキツネが立てた。
とにかく早く終わらせなくちゃいけない。
事を早く済ます、というのが俺達の主義だ。
まずは奴らを拉致する。
正義のために、世直しの為に、そして俺達の為に奴らを捕らえる。
しかし、どうやって奴らを捕まえるか?
まずは餌をやるしかない。
極上の餌で奴らを吊り上げる。
奴らの餌といえば、女だ。
小和田達におとりの女を近づける。
女に奴らが食らい付いたところを一網打尽。
ちょうど打って付けの女がいる。
いや、女モドキといったほうがいいのだろう。
名前は
フーコ。
これも俺が名づけたニックネームだ。
おかまのフーコ。
通称カマフー。
もちろん俺のダチの一人だ。
今はバー「釜釜」でまじめにオカマして飯食っている。
もともと変わった奴だったが、ここまで変わるとは思っていなかった。
最初に会った時、おねえ言葉が鼻に付いた変わった奴だった。
なぜか俺に纏わり付いて慕ってくる変わったニューハーフ。
もちろん俺にその気はない。
だが、
厚化粧をし、スカートをはかせればほとんど女と見間違う。
まさしくいい女の部類に入る。
ただし、男。
りっぱな物が付いている。
それに加え、腕っぷしも強い。
空手に関しては俺とどっこいどっこいだ。
そのカマフーを奴らに近づけることにした。
前から見ても後ろから見ても背中がぞくぞくするぐらいのグラマラスな容姿、カマフー。(だけど、男)
俺達は小和田達がいつもたむろするバーを探し当てた。
先にボックス席に着いて奴らが来るのを待つ。
カマフーはこのバーで、前もって臨時ホステスになってもらった。
面接で直ぐ採用となった。
この店のマスターがチョッカイを出すようになったと、カマフーが言っていた。
まずは完璧だ、と俺は確信した。
きっと、小和田達もカマフーに言い寄るだろう。




