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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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俺と博史

もうすこし、俺と弟の関係を話そう。

俺達二人はまさしく瓜二つ。

誰もが見間違う。

長年俺たちを育てた親でさえ見間違うのだから、他人が見れば誰が兄で弟か

区別はつかないだろう。


外見でたった一つの違いと言えば、手の痣の位置。

俺が右手の甲で、弟の博史が左手の甲。


その痣を隠せば俺は博史に成りすますことができる。もちろん博史も。

それをいいことに、俺は今まで、いやなことや都合の悪いことを全部弟に押し付けてきた。


従順な弟は素直に俺の言葉に従った。


父親が大事にしていた車に傷をつけたとき、弟が身代わりになってくれた。

母親が用事を頼んだときも、

そして俺が万引きで捕まったときも

博史が全て代わりを務めてくれた。


俺と博史はまるっきり考え方が違う。

あいつが正なら俺はたぶん悪だろう。

色で言えばあいつが白なら俺は黒ということになるかもしれない。

あいつが光なら俺は影。



ひとつの卵子に二人の人間が生まれる。

あいつと俺は一卵性双生児の片割れ同士。

人の心に善と悪が同居しているなら

あいつが善を受け継ぎ俺が悪を受け継いだ。

そんなところだろうか。


俺が人間の醜い内面を全て引き受けた。

そう思うようになったのはいつだろうか。


両親が飛行機事故で死んだ。

あの時からだろうか。

中学生の頃、弟が脳腫瘍だと分かった時からか。

周りの人間が保証金、母親が立ち上げた会社の経営権をめぐって俺達兄弟の中に割り込んできた時からだろうか

とにかく、、まだ悪になりきってなかった俺が悪に徹してやろうと思ったのは

その辺りに間違いない。


弟の不思議な力に気づいたのは、幼稚園の頃だった。

俺がめずらしく風邪で幼稚園を休んでいた時、突然弟の助けを呼ぶ声が聞こえた。

弟の声だった。

博史は幼稚園に行っているのになぜ、家にいるのかと思い俺は家の中で弟を捜したぐらいだ。

後で分ったのだが、声が聞こえたとき弟は幼稚園でいじめに会っていたのだ。

その事をきっかけに、弟の不思議な能力を始めて知った。

俺が見たものをリアルタイムで離れていながら弟は見る事ができること。

離れていても俺の心の中で会話ができること。

俺は驚いた。

今まで気づかなかったのは、いつも弟が側にいたからだ。

離れる事がなかったから気づかなかっただけだ。


もちろん、弟をいじめた奴らは二度と手を出さないように俺が懲らしめた。


実は俺にも多少の秘められたパワーがある。

弟に比べれば微々たるものだが。

要するにずば抜けた運動能力だ。弟のひ弱な分、俺がその才能を全て引き受けたって感じだ。

具体的に言えば、並外れた動体視力、瞬発力、持続力、まあ、体を動かす筋肉の質と量が

並外れているということかもしれない。


俺のことはさて置き

もう一つ驚くべき力が弟にはあった。

それは人の心の中を覗く事ができる事だ。

弟のその特異な 才能が花開いたのは、両親が亡くなった時だ。

母親が起こした会社の存続の是非の時だった。


この時、色々な人間が俺たち兄弟の前に現れた。

寄ってくる人間達は多かれ少なかれ事業で蓄えた資金や財産を、掠め取ろうとしているハイエナ達だった。

その善人面したハイエナ共を仕分けたのが、弟の博史だ。

心の奥底を見通せば相手の考えている事等、博史には一目瞭然だった。

ほとんどの人間は、ある程度の企みをもって近付いてきた。

左も右も分らない子供

から、会社の権利や資金を掠め取るのは分けない事だと思ったに違いない。

弟は信用できる者だけを選び始めた。


その中でただ一人、秘書をしていた奥平という八十過ぎの男だけは他の者とは違っていた。

会社のために身を粉にして働いてきた事が読み取れた。

母親も、秘書という肩書きでいつも相談相手として傍らに置いていたようだ。

俺達はこの奥平という男に会社の全てを任せた。


その頃、俺は俺でがむしゃらに強くなりたかった。

空手、合気道、少林寺、ボクシング。

全てマスターした。

並外れた運動能力を持つ俺には技を会得するのにそんなに時間はかからなかった。

強さは良くも悪くも俺の心を慢心にする。

いつの間にか高校に入る時分には暴走族の頭になっていた。

高校を卒業した後は、族は解散したが。

しかし、いまだにその残滓を俺は引きずっていた。


俺を慕う十人のかつての族仲間達。

今ではお互いの近況を話し合う呑み仲間となっている。


と言う事で、俺達、元暴走族は

BMWの連中の割り出しにかかった。




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