ジョーカー2
「何か事件でもあったんですかね」
タクシー運転手はそう言いながら辺りをキョロキョロ眺めた。
「ご苦労さん、チケットで頼むよ」
藤田は、タクシーチケットを運転手に渡し、急いで数人の警官が取り巻いているビルに向かった。
「あ、刑事さんだったの」
運転手は体を揺らしながら走り行く男の背中を眺めた。
現場は廃墟ビルの三階の一室だった。
床は血糊で赤黒く染まっていた。死体は四体、四人ともキャップのような帽子を被っている。
ただ頭を覆っている部分が破けていた。
頭を散弾銃で打ち抜かれたような状態だ。
頭蓋骨がこめかみ部分から上を撃ち抜かれたように脳漿が溢れ出ている。
まさしく凄惨な現場だ。
数人の鑑識課が忙しく動き回っている。
「ご苦労さん」
藤田は鑑識課の一人に声を掛けた。
「凶器は何だい、散弾銃のような感じでもないな」
「いや、散弾銃なら顔は残っていませんよ。見てください。仏さん達は頭だけ
砕かれいます。この傷口見て下さい」
鑑識課の男は遺体の頭の部分を指差した。
「全周五センチほどの幅で頭蓋骨が砕かれています。それと
この脳漿を見て下さい」
頭蓋骨の中からはみ出た白っぽい豆腐のような脳みそを指差した。
「よく見るとキラキラ光ってる物があるでしょう」
「うん、確かに、なんだこれは」
「金属片です。五ミリほどの金属の塊です。工場から出る金属の破片か何かでしょう」
「何でそんなものが脳みそに入り込んでるんだ?」
「たぶん、これが頭蓋骨を割った凶器です」
「えっ?」
「見て下さい。四人全員キャップを頭に被っています。そのキャップには、縁に厚い鉄の板状の物が取り付けられています。想像するにその鉄枠の内側に火薬が仕込まれていて
その火薬の内部に金属片が収まり、火薬の爆発と同時に金属片が頭蓋骨を砕いた、と推測できるんです」
「ふーん、しかしなんで、そんな手間のかかる殺し方をしたんだろう」
藤田は腕を組み首をかしげた。
「課長、おはようございます」
突然の聴きなれた声に藤田は振り向いた。
「いやあ、下田。大変な事件だなあ」
藤田がそう言うと、下田はハンカチを口に当て吐きそうな表情をした。
「おいおい、この神聖な現場で吐くんじゃないぞ。外で吐いて来い」
「いえ、大丈夫です。もう十分外で吐きました。胃には、もう何も残っていません」
「そうか、下田はこういう凄惨な現場は初めてだったんだなあ」
「はい、死体を見るのも初めてで」
「なるほど、まあ、最初はそんなもんさ。ところでガイシャの身元はワレタかい?」
「はい、免許証がありましたので今、本庁へコピーを送り前科の有無等を洗い出ししています」
「課長、これを」
下田は一枚のトランプのカードを見せた。
「なんだそれ?」
「ガイシャのそばに落ちていたんです」
「トランプのババか」
「指紋はついていませんが、ヒョッとすると犯人が置いていった物じゃないでしょうか」
「もしそうだとしたら、こいつは厄介だぜ」
「えっ?」
下田は怪訝な顔で藤田を見た。
藤田はそのカードを見て直感した。
俺たちへの挑戦状だ。
第二、第三の同じような犯行がおきるかもしれん。




