第11話 魔力の痕跡
研究は、時に敵を生む。
レオンの研究所で発見された
「魔法適性」という新しい概念。
しかしその直後、
適性781の冒険者エルムが誘拐されてしまう。
犯人の目的は何なのか。
レオンは、残された魔力の痕跡を追い始める。
「……ここだ」
レオンは足を止めた。
研究所から少し離れた路地。
そこが、エルムが姿を消した場所だった。
地面には争った跡がある。
踏み荒らされた砂。
折れた木箱。
しかしそれ以上に、レオンの目には別のものが見えていた。
魔力の流れ。
空気の中に、淡く歪んだ光のようなものが残っている。
ミリアが不安そうに周囲を見回す。
「何かわかりますか?」
レオンはゆっくりと頷いた。
「これは転移魔法じゃない」
「え?」
アルドが眉をひそめる。
「転移なら魔力が渦状に残る」
レオンは地面に残る魔力の歪みを指でなぞる。
「だがこれは違う」
「引き剥がされた痕跡だ」
ミリアが小さく息を呑んだ。
「空間魔法……ですか?」
「その可能性が高い」
アルドが腕を組む。
「つまり相当な魔法使いってことか」
レオンは黙って頷いた。
普通の誘拐なら、
睡眠魔法
麻痺魔法
それで十分だ。
だが犯人は
<空間系魔法>
を使った。
つまり。
「エルムを確実に連れ去る必要があった」
ミリアが言う。
「でも、どうして……?」
レオンは静かに答えた。
「理由は一つだ」
「魔法適性」
「……!」
ミリアとアルドの視線がレオンに集まる。
「エルムの適性は781」
「普通じゃあり得ない数値だ」
アルドが呟く。
「そんなの……研究者くらいしか興味持たねえだろ」
その言葉に、レオンは小さく頷いた。
「だからだ」
「犯人はそれを知っていた」
ミリアの声が震える。
「つまり……」
「研究目的」
レオンは短く答えた。
沈黙が落ちる。
やがてアルドが言った。
「で、どうする?」
レオンは地面を見つめた。
魔力の流れは、まだ残っている。
細く、かすかに。
だが確実に。
どこかへ続いている。
「追う」
ミリアが驚いた。
「え?」
「魔力の痕跡は完全には消えない」
レオンは静かに言う。
「少なくとも俺には見える」
アルドが笑った。
「なるほどな」
「便利な能力だ」
レオンは歩き出す。
魔力の流れは
街の外へ。
さらに先へ。
「行き先は……」
レオンは目を細めた。
「旧鉱山地区だ」
♦
暗い部屋。
机の上に書類が置かれている。
その人物は、静かにページをめくった。
「魔法効率化……」
「消費魔力十分の一」
小さく笑う。
「興味深い」
ページの最後には名前があった。
レオン・アルヴェル
その人物は呟く。
「魔法を構造として解析する研究者」
「危険だな」
書類を閉じる。
「魔法の秩序が崩れる」
沈黙。
やがて静かな声。
「だが…研究としては美しい」
その人物は窓の外を見る。
夜の街。
遠くを馬車が走っている。
その中には、
縛られたまま眠るエルムがいた。
「適性781…素晴らしいサンプルだ」
その人物は静かに言った。
「この研究…使えるかもしれない…!」
いよいよ誘拐事件の追跡が始まりました。
レオンの能力が少しずつ役に立ち始めています。
そして最後に少しだけ登場した
「その人物」。
この事件の背後には、
どうやらただの誘拐ではない事情がありそうです。
次回は
旧鉱山地区へ向かいます。
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