第10話 適性781の冒険者が消えた…!
研究所に王都からの来訪者が現れた。
だが、それ以上に重大な事件が起きてしまう――。
研究所の前に、見慣れない馬車が止まっていた。
黒いローブを着た男が降りてくる。
胸元には、銀の紋章。
ミリアが小さく声を漏らした。
「……王都?」
男はゆっくりと研究所の中へ入ってきた。
そして静かに名乗る。
「王立魔法管理局、監察官のセリオスだ」
アルドが眉をひそめる。
「管理局? こんな辺境に何の用だ」
セリオスは部屋を見渡した。
机の上には魔力測定器。
ノート。
魔道具の部品。
そして言った。
「最近、この街で妙な噂が流れている」
「魔法適性を測る装置がある、と」
研究所の空気が少し張りつめた。
ミリアがレオンを見る。
レオンは落ち着いた声で答えた。
「事実だ」
セリオスの目が細くなる。
「王都でも存在しない技術だ」
「それを個人が作った?」
アルドが腕を組む。
「問題でもあるのか」
監察官は淡々と言った。
「大いにある」
彼は机の上の装置を指差す。
「もし魔法適性が数値化されれば」
「魔法学校の選抜」
「貴族の血統」
「騎士団の人事」
「すべての制度が揺らぐ」
ミリアが驚く。
「そんな……」
セリオスはレオンを見た。
「技術は、世界の秩序を変える」
「その責任を理解しているのか?」
レオンは少しだけ考え、答えた。
「真実が秩序を壊すなら」
「その秩序の方が間違っている」
監察官の口元がわずかに動いた。
興味を持ったようだった。
その時だった。
外から慌ただしい足音が響く。
「先生!」
扉が勢いよく開いた。
冒険者の一人が飛び込んできた。
「大変だ!」
アルドが立ち上がる。
「何があった」
男は息を切らしていた。
「エルムが……!」
ミリアが叫ぶ。
「エルムさん!?」
エルム。
昨日、魔力測定を受けた若い冒険者だ。
魔力量は12。
だが。
魔法適性は
――781。
男は震える声で言った。
「いなくなったんだ」
部屋が静まり返る。
アルドが聞く。
「どういう意味だ」
「宿屋の部屋が荒らされてた」
「窓が割れてて……」
「血も少し」
ミリアの顔が青くなる。
「誘拐……?」
レオンは机の装置を見た。
魔力測定器。
魔法適性測定。
昨日から街で噂になっている。
レオンは静かに言った。
「偶然ではない」
セリオスが眉を動かす。
「何?」
レオンはノートを閉じた。
「エルムは、この街で唯一」
「魔法適性781を記録した人間だ」
アルドが低く言う。
「つまり」
レオンは答えた。
「この研究が原因だ」
研究所の中が重く沈む。
ミリアが小さく言った。
「そんな……」
セリオスがゆっくりと口を開いた。
「言ったはずだ」
「技術は秩序を変える」
そして窓の外を見る。
「そして、欲望も呼ぶ」
アルドが剣の柄に手をかける。
「先生」
レオンは立ち上がった。
「探す」
「必ず見つける」
ミリアが驚く。
「先生……」
レオンは静かに続けた。
「研究は、人を救うためにある」
「危険に晒すためではない」
そして扉へ向かう。
「エルムを連れ戻す」
研究所の外では、夕暮れの風が吹いていた。
レオンは思った。
自分はただ
魔法の仕組みを知りたかっただけだ。
だが今、その研究は
世界の欲望を動かし始めている。
そしてその中心にいるのは
――この小さな研究所だった。
研究は、時に人を救い、時に争いの火種にもなります。
レオンの研究所は、ついに“世界の利害”に触れてしまいました。
だれが、なぜ、適性者をさらったのか…?
次回をお楽しみに!




