エピローグ
マリナを殺したのはウロボロスか。
だが奴は俺達を七人のカードと言っていた。
預言では「カード」に値する人物は十四人。
もしかしたら残り半分はアスカ達の事を指すのだろうか。
ゴブリンとオーク達を解放し、俺達は南へと出発した。
ファンタジアは不思議な街だったが、取り敢えずヒロナ様の傘下にでも落ちればいい。
天空島の黄金を手に入れれば北西にまだあるとされる空き地に新たに国を挙げれるだろうし、その時ヒロナと同盟を組めばいい。
(ん?)
煉瓦の道を歩いているとシルバーに跨ったハウルが。
少し大人になったナギサもいる。
そしてぐったりしたフォックスも。
「今朝やっとハウルさんを説得できたの!誰か解毒出来る!?」
白魔法ならクレラの出番だった。
ぬーっと念じるとフォックスの毒は引いていき、続いて治癒で体力を回復させるのだった。
「丁度いい所に来た。南の山まで連れて行ってくれ」
体長十メートルのシルバーに十人乗るのはギリギリだった。
だがエリザベスの命が掛かっている為、急がなくてはならない。
今頃仮面の男サイと一緒にアスカ、レインも到着済みだろう。
十三人。
残るカードはエリザベスか。
ハウルから得た情報によると敵はゼウス、ポセイドン、ハデスに加え注射を打ったハイディスにキヨシもいると言う。
十三人でも勝てるかギリギリの所だ。
アスカちゃんの斬鉄拳や隠れたサイの実力、レインのハープの音にも期待が掛かっていた。
所謂総力戦となる。
俺達を乗せたシルバーは魔法陣のある山頂へ降り立った。
この銀竜も貴重な戦力となり得る。
もう誰にも死んで欲しくなかった。
アスカと抱擁を交わす。
彼女は俺がクレラとキスした事を知らないはずだ。
ならば俺がこの世界を去るまでにアスカとも接吻を交わそう。
だが今はゼウス達との戦闘にフォーカスを。
フォックスが毒にやられた事でナギサが正気に戻り一日かけてハウルを説得したという形か。
フォックス九死に一生を得たな。
「よっしゃ、皆んなで魔法陣に乗ろう」
とレイン。
それにしてもサイのやつ、黄金の一部をくすねるつもりか。
まあいいさ、彼もカードの一人だ。
俺達のラストピース、エリザベスが待ってる!
白色の直径五メートルの魔法陣に飛び乗り、俺達は天空島へとワープした。
さあ、此処からだ!
敵五人が稲妻と共に現れた。
ハウルの裏切りは相手にとって意外だったようだが、何はともあれ戦闘の火蓋は切って落とされた。
前方にテレサを召喚。
一歩遅れていたらハイディスの斬撃の餌食になっていた。
ゴーレムテレサの守備力は高い。
だが零社の注射を打ったハイディスの前に、瞬く間に膝から崩れ落ちた。
レインのハープの音が戦場に鳴り響く。
聞けば「回復の音」だった。
開発中だった彼の新技だ。
おかげでテレサはまだ消えずに済んだ。
少し大人になったナギサの「超時劣化」!
一番厄介とされるゼウスに命中した。
それにしてもナギサ、めっちゃ頼もしくなってる……!
そして遂にアスカちゃんの怪力を目の当たりにする時が来た。
黒い衣を着たハデスの顔面を一発捉え、相手は後方に吹き飛ぶ程の威力。
サイは幻術で五秒間だけポセイドンの動きを封じた。
その五秒が大事だった。
銀竜の口から放たれるビームが彼を捉えたのだ。
「ソラ!今度こそ連携を成功させるぞ」
アニキが傍に来て言った。
二日、三日では兄弟にはなれなかったかもしれない。
それでもアンタとの出会いは運命だったよ!
アニキのブラストソードと大剣ソーイアロが交差する。
ーー超絶天空斬りーー
今度こそ成功した連携技はハイディスの身体に吸い込まれていった。
血を吐き倒れるハイディス。
駄目だダメージがデカすぎる。
今の俺にはアルマクルスが付いてるし、アニキの武器はブラストソードになっているのだ。
そこへゼウスの雷が容赦なく襲いかかるが、ゴーレムテレサが割って入り攻撃は失敗に終わった。
ここでテレサはリタイアだったが、充分過ぎる仕事をした。
ホワイトロックの破魔の矢がハデスの額に直撃し、隙を見たアスカはエリザベスの檻へと駆けていくのだった。
姉妹ナイスコンビネーションだ。
だがハデスはそう易易と死なない。
おまけにポセイドンも怒りを露わにしている。
「アニキ。クレラとの三人連携技に賭けてみないか?」
喩えるなら兄、弟、妹といった具合だった。
今の俺達なら高難度とされる三人連携も容易いだろう。
問題は対象を誰とするか。
やはり超時劣化が解けていないゼウスしかいない。
クレラが放つ技は黒魔法、大竜巻。
それをさっきの超絶天空斬りに被せる。
俺達は嵐を呼び起こし、ハリケーンはゼウスの身体を遥か上空へと吹き飛ばしていった。
ーー深い絆は不可能を可能にするーー。
それだけじゃない、ポセイドンもハデスも嵐に呑まれ散り散りになっていった。
勝ったのだ。
セレナ達と戦っていたキヨシは元に戻り、戦闘は終わりを告げた。
歴戦の勇者ハイディスの死は辛いものがあった。
彼もソーイアロやモリガンの元へと帰ったのだ。
エリザベスにはクレラの持っていた空腹を満たす豆が施され俺は彼女と抱擁を交わした。
話した回数は少なかったが何処か心が通じる所があったのだった。
さあこれで十四人のカードが揃った。
天が裂け光が降り注ぎそれはウロボロスの方向に伸びているようだった。
あの時フォックスが生き残って本当に良かった。
とにかくこれでマリちゃんも成仏できるだろう。
さあ最後の仕事魔王を葬る裏魔法の連携の前に皆んなに挨拶しないと。
先ずは鳥人クロウ。
旅開始時には足を引っ張っていたのは俺の方だった。
だがクロウは俺の力を信じてくれていた。
ありがとう、と握手を交わす。
リーダーレイン。
貴方の明るさにどれほど救われたことか。
イザベル号に乗った後は離れ離れになってしまったが、吟遊詩人応援してるよ。
ナギサ。
此処まで頼もしい存在になるとは予想以上だった。
笑顔も魅力的だし裏魔法が使えるんだって?
ラストの闘いでも一役買ったわけだし巡り会えて良かったよ。
エリザベス。
ずっと俺を信じて待ってくれていた事にはドキッとしたよな。
氷魔法は結局見ずに終わったがソーイアロの娘って事今になって納得だ。
フォックス。
最初の暗いイメージとは裏腹に優しさが垣間見える時があった。
終末の谷辺りではその辺が顕著だったかな?
友達になれて良かったよ。
セレナ。
彼女がアルマクルスを譲ってくれなかったらゼウス達への勝利は無かったかもしれない。
北西でのアルマクルスの発見は十四人の中でも五本の指に入るMVP候補だ。
もう少し長く一緒に居られれば彼女の自然な笑顔をもっと見られたかもしれなかったな。
レダス。
同じ現実世界の住人だけあって話が合う機会が多かった。
知識とパワーの両立に助けられてたな。
元の世界に戻っても是非交流を続けたい。
ホワイトロック。
最後の最後でお互いの恋心に気づいた感じだった。
恋愛もそうだけど、それ以前に良い人だったなー。
真っ直ぐでカッコいい印象は今でも変わっていない。
現実世界に帰るのを寂しく感じさせる大きな要因だった。
アニキ。
尊敬できる部分がいっぱいある男性だった。
それに性格も筋が通ってるって言うのかな、信頼できる存在だった。
生まれ変わってもまた会いたい。
アスカ。
三角関係とか言っておきながらクレラを優先する場面が多かったかな。
それでも今も彼女の気持ちは一ミリも変わっておらず俺の方からキスを迫った。
驚いた様子だったがなんとか応じてくれた。
クレラ。
この燃え上がるような想いをどう表現したら良いのだろう。
運命の人との関係ってこういうものなんだなって感じだ。
最後に連携技を放てたのも絆が表面化していて良かった。
「ナナシにもよろしくって言っといてくれ」
ハウルとサイにも別れを告げ、遂に裏魔法の使える四人による魔王ラグナロクの消滅が行われた。
アニキ、ホワイトロック、ナギサ、そしてキヨシはそれぞれ四方に立ち、巨大な魔法陣を作り上げた。
ゲームクリアだ。
それと同時に身体が消えかかる俺とレダスとキヨシ。
「「さようなら」」
クレラは泣いていた。
元の家の俺の部屋に下着姿で放り出された。
傍に落ちていたのは以前着ていた学生服だ。
時差あるようだから今は真夜中か。
俺の九日間に及ぶアドベンチャーはこうして幕を閉じた。
作詞力に劇的な変化があるかは分からない。
これから検証するとこ……ん?
通りの向こうに制服姿の可愛い子がいる。
何と彼女は同じ学校で一つ後輩のクレラのドッペルゲンガーだった。
(ああ……神様……!)




