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ALMA CRUZ Ⅱ  作者: ロゼオ
第4部 アルテマワールド
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18/22

 間話「フォックスの黄金探し」

フォックス、そしてホワイトロックはあの時零社のビルの近くに流れ着き、身柄を拘束され注射を打たれるに至った。

あの後ホワイトロックとは別行動する事になったわけだが、注射を打たれてから唸るように気分が悪い時もあれば、正気に戻る時もあった。

何にせよ身体に力が漲ってくるのは確かで、敵対している相手二人を味方に加える離れ業も成し得たのだ。


ナギサとナナシ。

今の自分に比べれば無力だった。

だが時魔法を扱えるナギサに魔力アップの補助魔法を施すと秘められた力が解放され禁術「タイムワープ」が成されるに至った。

五年分の成長を授かるそれは自身の寿命を削る。

だが、とんでもない力を手に入れるとされている。


魔力補助程度で禁術発動になるとは予想していなかった。

ナギサの才能を試してやろう、と軽い気持ちだったのだ。

結果論からするとナギサは天才の一人だったわけで、十九歳の姿のナギサは胸も少し膨らんでいた。

目が悪いのかポケットに仕舞っていたはずの眼鏡をかけている。


亜人は人間に恋はしない。

それはフォックスの中では絶対だった。

だが必ずしもあのクロウも同じ気持ちとは限らない。


サイコロを投げ、今のナギサが存在したようなものだ。

自分が零社側につくのは少し前までは考えられないようなものだった記憶が薄っすらある。

美人だろうが何だろうが、戦闘における味方として利用して終わりだ。

聞けば裏魔法を扱える気がすると言う。

二代目ホワイトロックでも名乗るつもりか。

この女性と一緒なら伝説を遺せる可能性も上がると言えた。


ヒロナ帝国中西部の岬。

ここでフォックスはある人物と待ち合わせしていた。

銀竜に跨った、そうハウルである。

零社はガゼドの者と手を組んでいるーー意外だったが、ハウルを乗せた銀竜が向かうのはガゼドとは別の所だそうだ。


「フォックスサマ、マダデスカ?」


ナナシが待ちきれなくなり堪らず言う。

このゴブリンは火炎弾(ファイアボール)が扱える以外は取り柄がない。

つまり補助のしようがないのだ。

ハウルとの待ち合わせまでにこの岬から突き落としてもいい。

不意に邪悪な案がフォックスの脳裏を過ぎった。

サーベルで刺し殺すわけじゃない。

あばよ。


フォックスはナナシを海の方へ蹴り落とした。

「ワワワッ」と声を上げたゴブリンは海の中へと真っ逆さまに落ちていった。

ハウル達を舐めない方がいい。

中途半端な力はどのみち後で殺される。

ナギサが驚いていたが、むやみやたらに何も言って来なかった。


(ナナシ、悔しければそこから這い上がってこい)


冷酷染みた自分も久しぶりな気がした。


「来た、銀竜だ!」


東の方から体長十メートルに達するドラゴンが弧を描き、翼をはためかせながら着地する。

竜騎士アレサンドロの相棒だった竜、やはり今見ても中々の迫力だ。


「これから向かうのは新コンテンツの天空島。一緒に黄金を探そう」


ハウルは紫の長髪で見事な着物を着ていた。


「そちらは?」


「ナギサ。一応裏魔法が使える」


フォックスはそう告げるなり銀竜に跨った。


「おや?エスコートは?」


「亜人に色恋沙汰は無しだ」


ハウルは再び頷きナギサが乗り終えるまで待っていた。

妙だ……これが魔王復活を企むガゼドの者か?

もっと邪悪で凶暴かと思っていたが……。

まあいい、宝探しは嫌いじゃない。


「裏魔法の秘密についてはご存知か?」


「あっ、知らないんだ。裏魔法四人の連携技で魔王ラグナロク様を復活或いは完全消滅させられるんだ。ナギサさん、この事秘密だよ」


裏魔法四人の連携で……!

ホワイトロックを手懐けた今、アニキが明暗を分けるのか。

その時フォックスを頭痛が襲った。

これは嘗て魔王を嫌っていた時の記憶……!


(うっ……!)


「大丈夫?」


「うむ……ガゼドの者にも良心はあったか」


「当たり前、です。俺らからして見ればジン王国の民こそ滑稽」


(フッ……流石は砂の街リエコスを焼き払っただけある)


銀竜はスピードを上げて遥か上空へと飛んでいく。

しっかり掴まってないと振り落とされそうだ。


「うっ……!」


ナギサが落っこちそうになった時、思わず手を差し伸べていた。

又もや頭痛。

今度はさっきよりも酷い。


(これは……ソラ達との記憶のフラッシュバック……!)


大剣ソーイアロが目当てのはずだった。

それがソラやクレラといった者たちと友情育む一歩手前までいっていた。

以前の自分は冷酷そのものだった。

正義感はあったが、基本人間を忌み嫌っていた。

クロウと同じ亜人同士という理由でつるみ、酒に溺れる日々を過ごしていたのだ。

そう言った意味ではソラとクレラとの出会いはある種の分岐点だったと言ってもいい。


三人を乗せた銀竜の向かう方向の遥か遠くに、空に浮かぶ陸が見えてきた。


(天空島……黄金探しだ)


フォックス自身の黄金の取り分は良くてほんの数パーセントかもしれない。

それでも宝探しはロマンがあると言えた。


零社の者から告げられたガゼドの者ハウルとの待ち合わせ。

そして天空島にも居るとされるソラ達の敵。

自分の中でパズルのピースが当て嵌まっていくこの感覚は、嘗ての自分にとって最悪そのものだ。


銀竜に跨って飛びながら考えた。

頭痛の後特に自分はソラサイドに立った考え方も出来始めている。

俺への呪いが解ければナギサも正気に戻るのか。

以前の彼女ならナナシを蹴り落とした事を咎めそうなものだ。


まあいい。

今ハウルに反旗を返せば振り落とされるだけだ。

フォックスはサーベルで隙を突く事も諦め、天空島上空へと進むのだった。



三人を乗せた銀竜は草原を飛び越え神殿のような建物の前で着地した。

流石新コンテンツだけあって天空島はこの神殿以外整備されてない。

だが中に強力な何者かがいる事は容易に予想出来た。

階段を登り中へ。


居たのは椅子に腰掛ける三人組だった。

真ん中に腰掛けた金の衣の男が言った。


「エリザベスを投獄してから丸四日。今だに俺様の妻になるつもりはねーらしい。水以外殆ど何も与えてねーのによぉ」


エリザベスはソラを信じて待っているのか。


「ハイディス、キヨシの二人の心が折れるのももう間もなくかと。いずれ零社からの注射をお持ち致します」


零社、ガゼド、そしてこの者たちーー。

もしかしたらジン王国の政府の裏の者達まで陰で手を組んでいるのか。

真ん中の者の名をゼウス、左右の者たちをポセイドン、ハデスというそうだ。


ハイディス、キヨシが敗れたところを見るととんでもなく強力な人たちと言える。

いや、もしや人ではなく神ーー?


何にせよフォックス達はこれから黄金探しに向かわねばならず、岩場付近まであの「シルバー」とやらに乗る事になった。

ナギサを見たゼウスの眼の色が変わったのは確かだが、今回は何も言ってこなかった。

とにかくキヨシも裏魔法が使えるそうだ。


(これでアニキを手懐ければ、四人の裏魔法使いが揃う事に)


「君、何でハイディスが歴史から抹消されたか知ってる?」


「いや……」


「裏魔法を操るキヨシと手を組むと予言されてたからだよ。十五年前は裏魔法の研究が進んでおらず魔王様の消滅にのみ焦点が当てられていた。裏魔法で復活させる等、考えもつかなかったのが当時だ」


ハウルは二十八歳くらいに見えた。

岩場に着いた三人はいよいよ黄金を探す事となった。

だが今はそれよりもこの世界の縮図にただただ呆然としていた。

ソラ達にとって敵、敵、敵だらけである。

この世界がゲームなのだとしたら、それはそれで残酷だった。

プレイヤーにも平等に死は訪れる仕組みだからだ。


「この付近にクリーチャーは出没するのか?」


「先ず間違いなく。気を抜いたら即死だよ」


ハウルの人間性については今だ完全には掴めていないが、思ったよりずっと温厚だった。

寧ろゼウスやポセイドンの方が本物の悪といった感じがする。


「クリーチャーよりも恐ろしいのが彼ら空、海、冥界の神。逆らったら即死だよ」


ハウルの言葉にフォックスは僅かに頷いた。

もはや黄金は一パーセントも懐に入らないかもしれない。


「この付近から掘り進んでいこう。魔法でツルハシは出せる?」


頷き安物のツルハシを掌から作り出すフォックスとナギサ。

だがこれでも無から作り上げるのだから上等だ。


発掘作業が始まった。

時刻は既に正午を過ぎており、エリザベスが保たないか密かに心配していた。

ソラ達と出会い人の温かさに触れた。

レインやホワイトロックやアスカですら、自分を亜人と特別視する事は無かった。

あの頃に戻りたい気持ちが無い訳でもない。

だがもう天空島の岩場に来てしまった。

採掘場で労働させられる運命には抗えないのか。


ハウルのツルハシがカンカンカンと音を立てる。

ナギサも嫌そうな顔をしていたが、しょうがなく?といった具合でツルハシを縦に振る。

ソラ達が絶望なのだとしたら、自分も自分で絶望のルートを辿ってしまったのかもしれない。


ハイディスを歴史から抹消したのは人々がまだ魔王を慕っていたから?

何にせよジン王国もそれより少しマシなヒロナ帝国も、奴らがその気になれば一瞬で滅ぼされてしまう。

天空島という新コンテンツは異世界人達に追い討ちをかける存在だったのだ。


その時、岩場の陰から何かが此方を覗いて居るのが分かった。

あれは……巨大な蛇……いや七つの首を持つヒュドラ!?

相手は体長十メートルの銀竜よりまだ大きかった。

とにかくここは闘うしかない!

幸い自分は注射によって強くなっていた上、ハウルもナギサも頼れる存在だった。


超時劣化(スーパースロウ)


ナギサが相手の動きを鈍くする時魔法をかけた。

ヒュドラには毒がある為、超時劣化(スーパースロウ)は有効打になると言えた。


そこへハウルが衝撃波(インパクト)を叩き込む。

青白い光線は動きの鈍ったヒュドラの頭部に吸い込まれていき、敵は狼狽える表情を見せた。


自分が得意なのは補助魔法か。

いや、ここはサーベルで突っ込む。

いつしか死も恐れなくなっていた。

いやこの採掘場に来てそれが加速したのか。

何にせよ自分はここで自分を試す!


ダンジョンでのゴーレム戦ではソラとクレラに任せっきりだった。

もうあの時の自分とは違う。

ヒュドラ程度に敗れるならーーそこまでの男だったって事だ。


牙。


猛毒が身体中を襲い、やがて意識は遠のいていった。

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