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ALMA CRUZ Ⅱ  作者: ロゼオ
第4部 アルテマワールド
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第十二話「修行の刻」

さあ、トーナメント第一戦。

大きさはゴーレムの方が若干大きいか。

俺は女王の方をチラチラ見ながら「テレサ」を応援していた。


思えばテレサと出会ったのは大剣ソーイアロを手に入れたダンジョンの最深部だった。

あの部屋では若きエリザベスの壁画が飾ってあったわけだが、俺、クレラ、フォックスの三人がかりでやっと倒せたクリーチャーだ。

ブルーバッファローを主食にしているとは言え、フライングレオ一体が相手だとこっちが有利に決まってる!


試合開始のゴングが鳴って数分が経った。

ヒロナ様を見つけたのが一瞬だったのは言うまでもない。

クレラと同じ褐色肌でスタイル抜群だ。

髪は銀色でオーラはあったが、確かに第一印象はキツそうだった。


おっと試合に集中しないと。

フライングレオは流石歴戦の猛者で一筋縄ではいかないようだった。

ゴーレムより素早い動きで翻弄しようとしてくる。

何度も噛み付いてくるが、防御力では此方が圧倒的だった。


もっとゆっくり召喚パートナーを決めようかと思っていたが、テレサお前で良かったよ。

わざと攻撃させて隙ができたらカウンターだ!


鉞の攻撃でフライングレオはアニキの指輪に光になって戻った。

俺とゴーレムの勝利だがテレサも傷を負っていた。

このままでは準決勝は厳しいだろう。

俺は女王に対し深く頭を下げた。


「次の試合棄権させて下さい!」


「ふ〜ん、名前は?」


「ソラです」


「気に入ったよ、そのゴーレムへの真の愛。勿論景品のゴルドの指輪は渡せないけど……私で良ければ力になろう」


カッコいいなこの人……!


「実はクレラちゃんを捜してまして……」


「クレラは今西にいないのか?もしやその目……お前クレラの恋人だな?」


「そ……そうです」


クレラを裏切る事はできない。

手に汗をかいている自分がいた。


「フッ……これは父モリガンの御守りだ、お前にやろう。だがクレラの恋人なら自分の力で捜しだせ。姉としてお前に賭けてみる事にした」


彼女は女王としてドッシリ構えておくべきという事か。

階段を降りてくるヒロナ。

クレラに比べ布面積は大きかったが、やはり踊り子の衣装だった。


「お前の連れは『アニキ』だな?西国でも一、二を争う実力者と聞く。二人で力を合わせクレラを見つけ出し魔王復活を阻止するのだ」


手渡された御守りは東洋を感じさせる物だった。


(あのモリガンの御守り……!)


これで伝説の三人全員に関連する品を、俺は手に入れ

た事になる。


「因みに最後にクレラを見たのは?」


「船がクラーケンに襲われちゃって……」


「もしやポセイドンの仕業!?」


「?」


「この中で彼に力添えする者はおらんか!」


「私が……」


「レダス!」


「フム……中々のオーラだ。行ってこい」


黒人レダスはアルカディアに流れ着いていたか。

ヒロナクレラ姉妹は白人との混血って感じだ。

何にせよ現実世界を生きていたレダスが無事で本当に良かった。

ゲームのキャラ以上に死は大きいものと言える。


とは言えクレラ達との愛のぶつけ合いに魂を揺さぶられるのも事実で、俺は彼女が恋しかった。

まだ正式に交際関係にあるわけではない。

それでも燃え上がるような恋愛をしている以上、ヒロナさんには挨拶しておくべきだった。


「レダス、アニキと再会したんだ。夜になればクレラ達の居場所を特定出来ると思う」


「その御守り……大事にしたほうが良いですよ」


「え?」


レダスが耳元で小さく言った。

首に下げられるよう紐が付いており、俺は大事そうに鎧の内側に御守りを通した。


「ゴーレム用の回復薬なら作れたのに」


「えっ、そうなの?」


アニキの言葉に俺は思わず戸惑った。

まあ今更棄権を取り消す事ない。

それにもし回復オーケーならトーナメントの意味が薄まる。

因みに準決勝の相手はシードで勝ち上がったケンタウロスだった。

現実世界ではお目にかかれない人と馬の合成獣だろうが、このゲームの中では比較的シンプルな存在だ。


でもこう考えると召喚獣も哀れだよなー見世物にされて。

いやでも人間の奴隷も存在するのか?

一番哀れなのはゴブリン達だがアニキはあの時、確かにナナシという名のゴブリンと心を交わしてた。

火炎弾(ファイアボール)だって習得させていたし、言語だって人間と変わらない。

ああもう!アルテマはゲームなんだってば!

差別云々について考えるのもいいが、先ずは自分が生き残らないと。


ドーム状の建物を跡にした俺達は先ずレダスに知恵を求めた。

繰り返すようだが彼はこのゲームのクリエイターの一人。

帝国の詳細も頭に入っているはずだ。


「此処の建物明らかコンクリートだよな?」


「正確には大理石に近い石で出来ています」


「あら、そうなの?」


「それにしても驚きましたゴーレムを召喚するなんて」


「ま……まあな!」


レダスの設定年齢は二十二歳だった。

中の人の年齢も二十代と見て間違いないだろう。


それにしてもクレラやアスカは無事なのか、何度も頭を過る。

この世界に絶対安心は存在しない。

現にあのフォックスも何者かに操られている。


「まあ夜まで安全な此処に居ましょう」


(呑気なものだな……まあでもそうか)


此処はジン王国目線で言う他国。

レダスの意見に従うべきか。



夜までまだ時間がある。

アニキの提案で俺は剣の修行をする事になった。

剣道の経験はない。

それに俺の剣ソーイアロは両手で扱う。

アニキの佩いている片手剣とは戦い方が変わってくるはずだ。


それにしても彼女候補が二人。

少し前までの俺じゃ考えられない事だ。

まあ眠れる獅子だったというわけか。

俺が本気だせば彼女の一人くらい余裕で作れ……る?


「おや、ソラ上の空だぞ?」


今のアニキの発言はダジャレじゃないと断言しよう。

ダジャレが好きなのはアスカだ、多分。


因みに俺の兜は顔を覆うサメの歯のような形の部分が上下する仕組みになっていて、基本戦闘以外の時は上に上げて顔を見せるようにしている。

十字の首飾りも顔を見せた時に見えるようになっている。


(アニキ、ホント何でも出来るんだなー)


俺はこの時アニキの口からほぼ全ての上級技は全て空、海、冥界の何れかに属する事を知らされた。

冥道クロス斬りは上級技だったんだ……!

じゃあそれを何時でも発動できるようにしねーと。


でもあの時はフォックスとクロウが居たから発動できたとも受け取れる。

やはり強者への道は平坦ではない。

まだ普通のクロス斬りの発動もままならないのだ。


そしてアニキの片手剣はごくごく普通の名も無き剣だという事をこの時知った。

アニキ……アンタバケモノだよ。

この世界に来て一週間が経とうとしている(そのうち二日半は気絶してた)が、アニキが味方でほんと良かったよ。

服もボロボロだし、腰のひょうたんには回復薬が入ってるらしいんだけど、自身の調合らしい。

立ちはだかる壁は想像以上に大きいぞソラよ……!

俺は自分に対して心の中で言った。


先ずはクロス斬りを着実にマスター!

ソーイアロからの「声」を聞くまでもなかった。

剣の素質あるんじゃねーの?と調子に乗りたくなったのは事実だがアニキは無表情だった。

まあ言われてみれば大剣を斜めに交差させるだけだからな。


問題は此処からだ。

アニキが言うには自分は天空タイプらしい。

何処で判断したか知らんが。

天空クロス斬りを使いこなせるようになれば、取り敢えず物理攻撃の面ではアニキやレダスと同等、或いはそれ以上の成果を上げれるようになる。


頑張るしかなかった。

本当は直ぐにでもクレラ達を助けに行きたい所を塀の中で特訓である。

大剣ソーイアロの底力……俺が引き出してやる!

いつまでも装備頼みだとアニキには追いつけないが、今はそんな事言ってられない。


風を切り、雲を断つ。

そんなイメージだそうだ。

ジャンプして飛び上がった。

クロウみたいに翼は無かったが、中々のジャンプ力を発揮した。

アレサンドロの鎧を着てのコレは、いよいよ自分もアルテマの世界に溶け込んで来たか。

人間離れした跳躍力。

問題はここからだ。


「せやあぁぁあ!」


大剣をクロスさせると竜巻が起こった。

天空クロス斬り……成功だ。

まだ修行を始めて一時間しか経っておらず、この習得スピードは上出来に決まってる。

そう言えば以前セレナは居合斬りを披露してたなー。

剣技は剣技で魔術に引けを取らず奥深そうだ。


その時、何者かによって俺の作った竜巻が打ち消された。

屋根の上に人影……アレは!?

紅い眼をした……ホワイトロック?

ああ……なんて事だ、フォックスに続いてホワイトロックまで。

おまけに天空クロス斬りを打ち消すなんて以前よりパワーアップしてる?

それとも裏魔法の使い手として化けの皮が剥がれたという事なのか。

何れにせよ目の前のホワイトロックのオーラは以前の何倍にも増していた。


だが流石にこの三人には勝てないだろう。

ホワイトロックはクスリと笑うと箒に跨り壁の外へと猛スピードで突っ切っていった。

隙あらば俺達の内の誰かを殺そうとしたとでも言うのか。


あの紅い眼ーー思い浮かべただけでもゾッとする。

フォックスもパワーアップしていたとしてもそれでもアニキと俺の力を買っていたのか。

記憶を失っているわけではなさそうだったし。

謎は深まるばかりだが、とにかくこの時間は修行にあてるべきだった。


それにしてもホワイトロックさん今日は眼があれだったけどアイドルみたいな顔立ちだよな。

戦うのはフォックス以上にはばかれるなー。


ま、何にせよ天空クロス斬りをモノにしたんだ。

発動には体力を使うから一日二回がやっとと言ったところか。


でもヒロナさんが言ってた「ポセイドン」って気になるなー。

ギリシャ神話の神々だろ?

そんなのと対峙するのか?

ここでの修行はもはや必須だ。


レイン達も無事だと良いな。

レインのサポートはアニキ達前衛の強力な後ろ盾になり得る。

あのハープの音色の効果は一般的な緑魔法を超えてくると見ている。


そしてクロウ。

オークを一撃で葬った剣の腕は本物だった。

まだ力の全貌を見せていないが、紅い眼をしていない事を祈るばかりだ。


修行は夜まで続いた。

手にマメが出来たが関係なかった。

そしていよいよ占星術……!

アニキは天才だった。

喩えるなら武将と軍師を兼ね備えたような、最高の男だった。


「見えたよ……!南に居る。海岸沿いを行こう」


「アスカは?」


「僕は神じゃないんだよ?」


占星術にも一日で見れる限界はあったか。

とにかく無事なのが確認できて本当に良かった。


男一人に対し彼女複数という関係性。

現代日本ではあまり褒められた構図とは言えないだろう。

だが俺はチャラ男ではない。 

何となくクレラの導かれるままにしていると言った方が近い。


俺は複数の女性に見合う男なのだろうか。

クレラやアスカの笑顔を守りきれるか。

取り敢えずクレラに対しては理屈なしの(顔も凄く可愛いと思っているが)情熱のようなものを注いでいる。

何を隠そう俺はロングヘア派なのだ。

そして姉ホワイトロックが言っていたアスカの「一途さ」だが冗談交じりでは無いんだろうなーというものを感じ取りつつあった。

つまり言ってしまえばどちらも裏切るべきではないのだ。


良い男になる為の試練。

この葛藤の果てに、見える景色があるはずだった。

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