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ALMA CRUZ Ⅱ  作者: ロゼオ
第4部 アルテマワールド
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12/22

 間話「ハイディスの動向」

赤髪サングラスの男キヨシと合流したハイディスは、ジン王国首都アーディスを訪れていた。

目的は天空島の黄金。

言い伝えでは本当に実在すると言う。

だが天空島に行くためにはセレナの飛空艇が必要だった。

二人して見事な黒馬から降り、アーディスの中でも貴族地区へ。

ハイディスとキヨシは王宮への立ち入りが許されている数少ない人間だった。


キヨシはこのゲームのベテランユーザーで歳も自分と然程変わらない四十代だ。

裏魔法のみを極めた一風変わった戦い方をする人だが、確かに強い。

そして自分と組む事で政府の裏の者も手出しできなくなっていた。

そう、裏魔法習得者は危険視される。


自分を歴史から抹消したのは誰だったのか。

本来ならソーイアロ、モリガン、アレサンドロと並んで四天王としてもてはやされていたはずだ。

ジン王を陰で操る裏の者たち……。

どこか暗い陰謀を連想させられるのだった。


「キヨシ様、ハイディス様のお通りだ。道を開けられよ」


王宮への行く手を塞ぐ騎士たちは敬礼した。

ジン王が半ば操り人形とされているとはいえ、王国はアルテマの中では比較的安全な地域だった。

銀竜がガゼドの者へと寝返った話は耳にしていた。

今、王国はまさに天空島の黄金を必要としている時。


セレナの事は知っていた。

これからのジン王国の未来を担う若者だと感じている。

彼女と共に飛空艇で空に浮かぶ天空島へ……王の間へと通されたハイディスは早速話を切り出した。


自分のこの世界での役目はまだ完了していない。

十五年前魔王ラグナロクを葬った後も剣の腕は落ちぶれてはいなかった。

政府の裏の者が裏魔法を危惧する理由とは?

そして奴らの真の目的とは?

仮に黄金を手に入れたとて、奴らはジンから根こそぎ奪うだろう。

セレナの飛空艇を借りるという選択は言わば賭けだった。


話を終えるとジンの傍で待機していた女騎士が口を開いた。

エリザベス。

あのソーイアロの一人娘で正義感は強そうだった。

それに良い目をしている。

幼いと言えば失礼だろうが、どこか純真さを感じさせるの瞳だった。


「私も同行します。私も何かの役に立ちたい」


今セレナは王の間にはいなかった。

ジン王の返事次第で今日中に空へと飛び立てる。

もう正午だった。

異世界人の少年と出会ってから丸一日が経つのか。


「分かったよ。セレナの飛空艇に、エリザベスも遣わそう。ただし残りの騎士団はアーディスに待機させる」


頷いた。

長年の誼でジンには敬語を使う必要がなかった。

此方のほうが十年以上歳上というのも大いに関係するだろうが、何にせよ飛空艇とその操縦士セレナの協力を得ることには成功である。


生きた証ーー。

今度こそ皆の記憶に遺せるだろうか。

天空島には未だ見ぬ強敵が潜んでいる可能性も十分にあり得る。

だが自分とキヨシの黄金の取り分は破格となりそうだ。

それによって出来ることもまた変わってくる。

例えば自分だけの軍隊を持つ、等だ。


「僕の裏魔法が真価を発揮する時かな」


キヨシが誰から裏魔法を教わったかは不明だった。

出会った頃から強力で、自分とタッグを組むのはもはや必然だったのだ。

だがジン王とエリザベス以外部屋には居ないとは言え、裏魔法については話さない方が良かった。

いや、多少空気を読まないくらい強気でいないとこの世界では生き残れない。


頷きハイディス達は飛空艇の操縦士セレナの所へと向かった。

この国の若き希望ーー。

スラム街のアニキやモリガンの娘クレラ等もいる中、セレナは王国への忠誠心がずば抜けていた。


「お久しぶりです」


「やあ、破天荒な剣技でも生み出してる?」


この歳までこの世界で過ごした記憶が自分にはある。

キヨシが言う事から察するには自分はゲームの中のキャラに過ぎないのだが、セレナのような若者にも善の心があると期待してみる。

薄汚れた心も何度も目にした。

命を奪う事への抵抗もいつからか無くなっていた。

それでもキヨシは魔王討伐には興味がないようで、気が合う彼と黄金を手にするのはこの世界を愉しむのに理に適っていると言えた。


エリザベスがセレナに天空島について説明する。

一瞬驚いた様子の彼女だったが、「直ぐにでも」と飛空艇の所へと案内された。

セレナがその才能を遺憾無く発揮すれば、剣技の中でも特に強力な究極剣技の発動に至るだろう。

生まれた時代が違えども互いに尊敬し合える部分はあった。


天空島。

もはや伝説とされていた空に浮かぶ島の存在が、ここ最近になって現実味を帯びてきたのである。

異世界人が来るたびアルテマはアップグレードされるとでも言うのか。

あの少年ソラが来たのもここ最近だろう。

とにかく謎だらけのこのゲームで「黄金」という言葉の響きは、これまでの差別や陰謀といった事柄から自分を解放させられる気がしていた。


ソラ。

キヨシと同じ異世界人だがその瞳はあのクレラと酷似するものがあった。

二人が何処か心を通わせているのは見て取れたが、事はそう単純にいきそうにないとも言えた。

何はともあれ二つの魂は取り敢えず近くに居られる事を喜んでおり、ゲームという枠を越えた恋愛が展開されていそうだった。


飛空艇に乗り込んだ。

運転席のセレナの隣、つまり助手席にはキヨシが座る事になった。

後ろ側のソファにエリザベスと二人っきり。

争いを好まなさそうな彼女の真意を問いてみることにした。


「ずっと……おかしいと思ってた。この国の有り様、いやこの世界そのものに対して」


ゲームの世界だと説明すべきではないだろう。

それを信じない可能性すら無きにしもあらずだ。


「父ソーイアロの仲間ならきっとこの国を変えられる。天空島の黄金は多分その引き金になるって」


やはり真っ白な心の持ち主のようだ。

とにかくソーイアロの一人娘を敵に殺させるような事は避けねば。

天空島に敵が居ないゲームなどこの世に存在するのかというのが、キヨシから得た見解だ。


空に舞う飛空艇。

キヨシによる天空島があるとされる場所についての説明は無事済んだようだ。

嫌な予感がしないでもない。

だが後戻りなど出来はしなかった。



飛空艇はグングンスピードを上げ、南東へ。

瞬く間に海上を越えた。

この狭いアルテマを縦横無尽に飛び回れる代物は、セレナを含めても数名しか操縦できない。

そう言った意味ではあのソラとやらの御一行にセレナが加わるのも面白そうだった。

取り敢えず今回は彼女と手を組み、飛空艇で黄金を持ち帰る手筈になっている。


「見えてきた」


前方に空に浮かぶ島が。

それもかなりデカい。

ハイディスは思わず運転席に手を掛け身を乗り出した。

思った以上に緑が生い茂っているようだが、取り敢えず草原に着地で良いだろう。


セレナの運転する飛空艇は「アーティファクト」という仇名が付いており、銅で覆われた色をしていた。

プシューと音を立て降り立つアーティファクト。


本当に天空島はとんでもない規模だった。

草原の果てに岩場があるのだが、その先もずっと島は続いているようで、又してもアルテマを創ったクリエイターの底力に唸らざるを得なかった。


天然の金髪のエリザベスが四人の内の最後に地面に降り立つ。

あのソラの金髪は染めてあるように見えた。

だったらキヨシの赤髪も、どちらかと言えば染めてあるように見える。

異世界では染髪が流行っているのだろうか。

何処か平和な面影すらそこから連想させられる気すらしてくる。

だがアルテマに生まれた以上自分は戦いの道を歩む事になるだろう。

現にこの天空島でも嫌な予感しかしない……ん?


落雷だった。

薄紫の雷と共に現れたのは三名の強者だった。

強者と認定したのは言うまでもなくオーラからの判断だが、一体何者なのか。


「我々は天空島の主ゼウスとその兄弟ハデスとポセイドン。おのれ侵入者め」


ゼウスと名乗る男は金色の衣に身をつつみ、灰色の髪で髭を生やしていた。


「恐らく水色の衣がポセイドン、黒の衣がハデスだね」


キヨシが口を開いた。

異世界でも有名な三人なのだろうか。


「ギリシャ神話の神々」


神々……!?

アルテマの中でも圧倒的な力を誇るだろう。

ギリシャが何か存じ上げなかったが、何にせよ戦闘は避けられそうになかった。


「エリザベス、アンタは下がってて。キヨシ、セレナ。最初から全力で臨むぞ」


ハイディスは背中の大剣に手をかけた。

三対三の殺し合い。

察するにゼウスは雷を操るようで、三人のリーダー格だった。

残るポセイドンとハデスはそれぞれ水と闇を使うことが最初の数秒で予測できた。


ハイディスは熟練者。

敵の特性をパターンから推測出来る。

ポセイドンは白髪でやはり髭、ハデスは白髪混じりの黒髪で髭は剃ってあった。

人間で言うと五十代か?

歳上と戦うのは久しぶりだった。

若者が多く戦闘も尽きないアルテマではの話である。


セレナがハデスに斬りかかった。

流石若者動きが速い。

ハデスも負けじと真っ黒な剣で対抗する。

剣同士がぶつかり合い、鍔迫り合いとなった。

鍔迫り合いは実力が拮抗していないと起きない。

ググッと力を込めるセレナだったが、相手もそう易易と力を緩めてはくれない。

隙が出来たら最期、その緊張感が既に草原中に伝わっていた。


「ゼウスの相手は俺がする。キヨシはポセイドンを」


どう見てもゼウスが一番厄介だったが、自分とキヨシの実力差は紙一重。

最悪ハイディスの死が迫っていると言えた。


予想通り掌から水を生み出すポセイドン。

透明な水が彼の周りを生き物であるかのように動き回っていた。

雷に比べ威力は劣るだろうが、絶対にキヨシも油断すべきではない。


察するにこの闘いに勝利すれば黄金は手に入れたも同然だった。

彼らを超えるエネルギーを、島の後方からは感じない。

だがこの三人のご登場とは悪い予感は当たっていたと言えた。


キヨシが裏魔法を放つ構えを見せる。

極秘の禁術とも揶揄されるそれは、あのモリガンすら扱えなかったほどの習得難易度だ。


「幻術『冥界の牢獄』!」


ハーピー等が扱う幻術とは格が違った。

それに一瞬気を取られたのがハデスだった。

その隙をセレナは逃さない。


ハデスの暗黒の剣を叩き落としたセレナだったが、ここでゼウスが助太刀した。

雷を放つまでのスピードが速すぎる。

ビリビリと薄紫色の電気に感電したセレナは、叫び声と共に動かなくなった。


直ぐさま大剣での攻撃を仕掛けるハイディスだったが、剣を拾ったハデスが行く手を遮る。


「私冥界の神ハデス以外にあの技を使える者が居たとはな。だがポセイドンのポテンシャルを甘く見るな」


ポセイドンは幻術を弾き返したようだった。

そして瞬く間に攻撃に転じる。

黒魔法「水激流(ウォーターハザード)」とは比べ物にならない量の水がキヨシを呑み込んだ。


まさかここまでの三人とは……。

神々の仇名は伊達じゃない。

ハイディスは膝を地につけ「エリザベスは殺さないでくれ……」と目を閉じるのだった。

殺されるか捕らえられるかの二択だった。

キヨシは裏魔法が使えるので彼への対応次第で裏魔法について何か分かるかもしれない。

それにセレナにもまだ息はあるはずだ。


捕らえられる。

自分達について何か知っているのか。

新コンテンツの天空島の主たちは誰か地上の者と繋がっているのか。

謎は謎のままハイディス達は牢獄に送られるのだった。







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