表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

第11話 思いの石


 思いがけない道連れができて心強いような面倒なような気分だ。ドーマたちが歩きだったせいで、あたしも自動二輪を押して移動することになった。まあ、ここらまでは妹たちも追ってこないから、そう急ぐこともない。


 付近に廃ビルは少なく、ドーマによると先人たちの宗教的スポットだったらしい。オテラと言っただろうか、伸び切った草の陰に、ごろごろと大小様々な石が転がっている。踏み石にちょうどよく、足場にしていたら、あまり踏むなとドーマに怒られた。


 いまも水が流れている川があるからと案内を受けていく途中に石像が立っていた。あちこち壊れ、辛うじて人の形をしているとわかる程度だが、これまたドーマによると、人を殺すことを仕事としていた誰かが罪滅ぼしのために建てたのだという。

 石像が罪を滅ぼすというのは、よく意味のわからない話だ。先人たちの行為は謎が多い。石像のおかげかどうかは別として、罪は滅んだ。責める者も責められる者も、誰も居なくなってしまったのだから。もちろん赦す者も。


 これを建てたヒトは、果たして未来に誰もいなくなると想像しただろうか。あたしにはわからない。そもそも罪などというものが存在していたかどうかも怪しいものだ。

 近くに湧いていた温泉は枯れてしまったとドーマが残念がっていた。こんなものより、温泉が残っていれば良かったのに。


 たどり着いた水辺は涼しく、綺麗な丸い小石が、さらさらと音を立てていた。流れから外れて少し深くなったところは、写真で見た泉のようだった。冷たい水に体をさらして思う。


 いまでは何処にあるのかもわからないけれど、かつてはルルドという聖地があった。病は癒え、罪は消え、死者は蘇るという。空想か事実か、アリアから聞いた話だ。


 すべての水は繋がっている。


 アリアはよく言っていた。人の体に切り離された水ですらそうなのだと。水が還りたがるから人は死ぬのだと。

 この水はどこに繋がっているのだろう。本当に、すべての水は繋がっているのだろうか。あたしたちは水から離れすぎた。それとも地下墓地カタコンベを通って、この地とあの地はつながっているのだろうか。アレトゥーサの泉のように。


 ざぶん!


 みずしぶきがあがり、頭から水を浴びせられた。水面に顔を出して、にゃははと笑うのはミフユだ。上から飛び込んできたらしい。

 最初は互いに警戒し合って打ち解けなかったが、もともと人懐っこいたちなのか、ぐいぐいと距離を詰めてきた。いまもあたしに抱きついて離れない。


 ……アリエッタのお肌はすべすべのモチモチのつるつるなのだ。真っ黒でピカピカしてて、とってもキレーなのだぁ。


 ……ぽんぽん飛び込むんじゃないよ。


 ……どうして?


 ……危ないだろ。


 ……ふぅん、アリエッタは心配性だな。おかあさんみたい。ミフユはよくわからないけど、オトナはケッコンとかするんだろ。ドーマとケッコンしたらいいのだ。


 ……はぁ? なんであんな奴と。


 ……ドーマは良い奴だぞ。別に水場に来る用事も、樹の下へ行く用事もないのに、嘘ついて案内してくれてるんだから。ドーマと交尾したらいいのだ。


 ……こ、交尾って。ミフユ、その言葉はあまり使うな。おまえ、いま何歳だ?


 ……うーん、わからんのだ。でもでも、樹が生まれる前からここにいるから、樹よりも先輩なのだ。


 樹よりも先輩? そんなことはありえない。問い詰めようとした時、またまた大量の水を頭から浴びせられた。


 ざぶん、と飛び込んできたのはドーマだ。


 みずしぶきが治まると、そこに、すっぱだかのドーマが立っていた。


 ……おお、入ってるな。どうだ、気持ちの良い水場だろう?


 ……なに、しれっと入ってきてんだ!


 手近な瓦礫を思いっきりぶつけてやったのはいうまでもない。あたしはまだ誰とも交尾する気はないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ