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第10話 どこへ


 木漏れ日の下、ドーマとミフユと一緒に培養肉を食べていると、重ねてどこへ行くつもりなのかと問われた。本当は別に隠すようなことでもない。樹の下に行くと伝えると、ドーマは少し考え込むようにして言った。


 ……行くなとは言わない。必要なら案内してやってもいい。だが、樹の下に行っても何もないぞ。たぶん意味はない。


 ……どうしてそんなことがわかる? あんたはあの樹のことを知ってんのか。あんただって、どこからどこへ行こうってんだ?


 ……ん、俺か? さて、わからんな。


 にやりと笑って応じる。鼻くそをほじりながら頭上を見あげてつまらなそうに続ける。


 ……どこへ行こうと同じことだしな。抜け出せないフェロモンの罠にはまったアリみたいなものさ。俺たちはたまたまお目溢めこぼしを受けた過去の亡霊に過ぎない。おまえとは違うんだ。


 ……なにも違わない。あたしはただコロニーの外へ出てみたかった。逃げたかった。


 ……逃げてきた、ね。外ってのはどこのことだろうな。自分の居る場所以外だと言うなら、永遠にたどり着くことができない場所かもな。


 ……ドーマはいつからトーキョーにいるんだ?


 ……最初から、ずっと。樹に護られるようになる前の東京からずっとさ。


 ……そんなことはありえない。あれが、どれほど前のことだと思ってる。なにも知らないと思ってバカにしてるのか。


 あたしの問いかけには答えず、指先の鼻くそを飛ばすと、逆に尋ねてきた。


 ……コロニーからよく逃げられたな。監視されてなかったのか?


 ……監視? ああ、監視ね。なるほど、あんたが何を言いたいか、それはわかる。でも監視なんてものはない。あると思えばあるが、無いと思えば無い。あたしみたいな落ちこぼれのくずを監視しておく価値は無かった。それだけ。


 ……なぜ、トーキョーだったんだ。外側へ行く気はなかったのか。


 ……外側のことは知らない。窓は内側にしか無かったから。


 自信なげな声だったからなのか、ドーマにとってなにかおかしなことを言ったからなのか、また声を立てて笑われた。不快なやつだ。


 ……なにがおかしい!


 ……ああ、わりぃ、わりぃ。トーキョーへ逃げてくる連中は、みんなそうなのかと思ってよ。何も見えない外側よりも、ガラス越しに見えている内側へ逃げ出したくなるのかねぇ。それがドクターの望みなのかもな。


 応えられずにいると、ドーマは遠くトーキョーを囲む壁に目をやってつぶやいた。


 ……ここで出会うのは逃げ出してきた奴ばかりだ。コロニーへ戻る気はあるのか?


 ……ない。少なくとも今のところは。なぜ逃げ出してきた場所へ戻る必要がある?


 ……そうだな、その通りだ。だが、俺からすれば壁の中にあるコロニーも外だ。さらにその外はどうなっているのか、その方が知りたい。意味があってもなくても。なんて言ったかな、なんとかの時代を生き残ったのだから。


 ……第6の時代?


 ……ああ、そんなだったかな。俺たちも樹の下へ帰るところだ。一緒に来いよ。まずは水場を教えてやる。体も洗えるしな。わりぃけど、臭いよ、おまえ。


 にやりと言って、また声に出して笑った。まったくもって不快なやつだ。横目でじろりと睨んでやるが、そんなあたしに頓着なく、ドーマは、ミフユと一緒になってシュバルツと遊び始めていた。


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