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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
借りた痛みの工房
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熱いと知っている手

翌朝の荷場には、馬の汗と濡れた藁の匂いがこもっていた。


冬を前に荷が増え、屋根の下へ置き切れない包みが、通りへ二列にはみ出している。男が一人、その隙間を膝で押し広げながら車輪を通していた。俺は道具の箱を抱え、相手がこちらを見ていないと気づいて横へよけた。


荷場長は、俺たちを建物の奥へ連れていった。焼いた鉄の留め具を、樹脂の詰まった木枠へ差し込む仕事が行われていた。冷たいままでは樹脂が硬く、うまく収まらない。だから鉄だけを小さな火床で温め、離れたところから先端を支える。


「この狭さで、手を焼かずに入れられるか。まず、それだ」


荷場長は太い指を溝へ当てた。中までは入らなかった。


カザの側は、もう二つ仕上げていた。


使っている男は、俺とそれほど年が違わないように見えた。額に汗を浮かべ、左の眉に深い皺を寄せている。鉄の舌がくるりと向きを変え、黒い溝へ吸い込まれた。後ろの職人が楔を打つまで、道具は揺れなかった。


俺は見入った。


その後で、見入っている場合ではないと思った。


「セドは、先月までこの仕事をしてなかった」


カザが横から言った。


「これを?」


「ここまで細いところを。うちの年寄りから、熱を感じて指を離すまでの体験を一つ譲り受けた。石の外から眺めて覚えるより、本人には掴みやすかったらしい」


セドがこちらを向いた。


「今までだって、鉄は扱ってた」


「分かってるよ」


「なら、急に上手くなったみたいに言うな」


カザは口をつぐんだ。俺は少し驚いた。客のいる前で、彼女にそんな声を出す者がいるとは思わなかった。


セドは次の留め具へ目を戻した。手袋を引き上げる仕草が速かった。まだ一つ残っている、と言いたげに顎を突き出す。


「貸して」


カザが手を伸ばした。


「あと一つだ」


「今の手」


「熱いのは知ってる」


俺にも、指の赤さが見えた。


セドは手袋の口へ指を入れたが、汗を吸った布が剥がれなかった。ようやく外した時、薬指の横に小さな水疱ができていた。カザが息を吸う音がした。


誰かが、記録の砂時計を止めた。


見物していた荷場の者が、二つは速かったんだが、と呟いた。その声を聞くと、セドは痛む手を握った。水疱が張り、眉がさらに深く寄った。


「洗い場」


カザは彼の肘を押した。


「自分で行ける」


「私も行く」


二人が離れると、場に道具だけが残った。俺は黒い柄を見た。細くて、美しくて、さっきまで羨ましかった物が、急にこちらへ答えを求めてくる。


イェトは手袋をせず、柄を一度持った。


「冷ましてからですよ」


俺が言うと、彼は温まっていない根元を指で弾いた。


「目もある」


「知っています」


彼は親指を動かした。指の長いイェトの手では、離したところから空気が入る。俺が借りると、どうしても薬指が深く巻きついた。手首を返せば離せるが、その分、先端の線がぶれる。


「元の人、手が大きかったんですか」


戻ってきたカザへ尋ねた。


「あの男よりは」


彼女は俺の手を見た。そして顔をしかめ、自分の柄を持ち直した。


俺は家の木べらを思い出した。母の親指にちょうど合う窪みへ、俺の指を押し込むと、生地を返す度に手首がねじれた。エルナは平気で少し先を持ち、そのまま焼き上がったものを返していた。


あの時、俺は木べらに負けた気でいた。


今度はもっと高い道具だったが、俺の手は、やはり俺の形から変わってくれない。


午後、俺たちが自分の試作を使う番になった。


持ち手は短く、先端は太かった。第一の溝には入ったが、二つ目では金具の肩が枠へつかえた。向きを変えているうちに留め具が冷え、樹脂が粘った。荷場長が砂時計を見た。


額の汗が顎へ流れた。背中では、カザが腕を組んで見ている。


ここで無理に出力を上げれば、押し込めるかもしれない。小窓の筋にはまだ余りがある。しかし、押し込んだ先でどこを傷めたか分からなくなる。俺は道具を抜いた。


留め具も、途中までしか入っていなかった。


「持ち帰ります」


言うと、荷場長は頷いた。誰も慰めなかった。


俺は箱へ道具を寝かせた。蓋を閉じる直前、カザが近づいた。


「柄の話は助かった」


「そちらの金具は速かったです」


言ってから、自分でも驚いた。褒めたくて口にした言葉が、まだ胸の中ではよく馴染んでいなかった。


カザは少し口の端を上げた。


「まだ八日ある。そっちは速くなる。うちは、もう焼かせない」


彼女は箱を持って去った。焼かせない、という声だけが、それまでより低かった。


俺は洗い場へ寄った。


セドは手に濡れた布を巻き、もう片方で上着の釦を留めようとしていた。一つ失敗して、舌打ちした。俺に気づくと、その釦を諦めた。


「笑いに来た?」


「今は自分のことで忙しいです」


俺が箱を示すと、彼は少し顔を緩めた。


「見てた。お前の、太すぎるな」


「もう少し慰めてもいいですよ」


「こっちは細くて焼けた」


それを本人に言われると、返せなかった。


セドは濡れ布の端を直した。


「あの人の手では、二つ目を終える頃に熱が逃げたんだ。俺も知ってた。そこから握りを変えて、三つ目へ行く。頭の中ではちゃんと離した」


痛んでいない手で、その形を作った。薬指が少し内側へ残っていた。


「早くなったのは、本当なんだ」


声が急に小さくなった。


「去年までは、準備ばかりだった。鉄を持ってこい、布を取り替えろ、それが終わったら邪魔だからよけろって。今度は、自分の作ったところを客に見せられると思った」


俺は彼の袖の釦へ目をやった。


「手伝っても?」


彼はしばらく俺を見て、それから腕を差し出した。


釦穴が固かった。俺も一度失敗した。セドはそれを見て鼻で笑ったが、腕を引かなかった。


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