長く一度、短く一度
その二日後、イェトの作業台に、柄が五本並んだ。
同じ図から作ったはずなのに、どれも形が違っていた。丸いもの、片側が平たいもの、親指を逃がす溝のあるもの。俺は最初の一本を持ち、次を持ち、最後に、どれがいいかは自分だけでは決められないと認めた。
その結論に至るまでに、木を二本無駄にした。
俺は屑籠を見た。未来の利益から引いておいた方がよい物が、日々よく増える。
昼前にキナが材料を運んできた。
俺が握ってもらうと、彼女は柄を返すより先に、先端を下へ向けた。
「積む時、こっちが出っ張るね」
「使う時の話を聞きたいんですけど」
「持っていかなきゃ使えないよ」
彼女は籠の底へ試作を入れた。先端が編み目へ噛み、抜こうとすると隣の布まで持ち上がった。
「ほら。急ぐ朝には私が嫌いな道具になる」
イェトが吹き出した。
俺は先端を外せるようにしようと言った。彼は笑うのをやめ、継ぎ目へ刃先を当てた。
「ここの面が足りん」
「少し太くして、根元は残す」
「太くすりゃ、また溝に入らん」
俺たちは図の上で言い合った。キナは途中で帰った。荷物を運び終えた人にとって、男二人が金具の幅を巡って唸る午後は、さほど見物する価値がないらしかった。
四つ目の案で、線を折り返す位置が見つかった。
先端を少し短くしても、根元の受けが狭くならない。刻線の曲がりは増えるが、力が逃げる角度を避けられる。その脇へ、先を返した時に使うもう一本を描いた。片方を使う時には、もう片方を閉じる。俺が描き終えると、イェトは紙を引き寄せた。
長い沈黙だった。
俺は黙っていた。ここで自分の案を褒め始めると、相手が罵りたいところまで提供する。
やがて彼は立ち上がり、小さな金具を選んだ。
「これで一つ作る」
それだけで、俺は午後の半分を取り戻した気になった。
夕刻には、採用試験で使う開始装置を合わせた。
荷場では、離れた二つの台へ同時に合図を送る。壁に掛けた鈴が鳴るのと一緒に、それぞれの台の細い帯へ開始の印が残る仕組みだった。目で見る印があれば、大きな荷音に鈴が隠れても時を合わせられる。
装置は荷場の物で、古い検査台を継いで使っていた。片側には、以前からある受理記録を照合する小さな板がついている。外部体験のある使い手は、過去に閉じた受け口の印をそこで一度確かめる。共通の試験線に近づいても、本人の古い受け口へ干渉しないかを調べるためだった。本来は閉じた印を読むだけで、新しい体験を送り込む作業はない。今回も荷場の係が順に確認していた。
カザの工房から来た男が、その板へ手を載せていた。
髪に削り粉が残り、袖口を何度も折っている。セドより落ち着いた年齢の男で、手を下ろすと、箱から細い留め具を出した。
「フェルド」
彼は短く名乗った。
「先の交換ができるのは、あれか」
俺が頷くと、彼は試作を持って眺めた。
「ここ、外す時に爪が要るな。冬に爪を割った奴が来たら文句を言うぞ」
言いながら、彼自身が割れた爪を見せた。俺は穴の位置へ印をつけた。競争相手の工房からも仕事が増えた。
「そういう文句は、試験が終わってからでもいいんですが」
「俺は今気づいたんだ」
フェルドは隣の台へ回った。係が照合板を畳み、その上へ布をかけた。イェトは共通の台にいる。カザは壁の向こうで、手伝いの者へ何かを言っていた。
俺は装置の脇にある、試験用の小片を見た。
用途を記した札は、開始の合図。すでに荷場が買ってある有限の小片で、これから何度かの試験に使う。端には、使った幅を示す小さな刻みが入っていた。
「鳴らすよ」
声をかけると、壁の向こうで返事が重なった。
俺は長く一度、短く一度、槌を動かした。
澄んだ音が木の壁へ当たり、梁の下へ広がった。受け側の帯へ、長い線と短い線が刻まれる。小片の白い筋が僅かに薄くなった。
「届いた」
イェトが言った。
向こうでも声がした。
俺たちは表示を合わせ、開始装置を止めた。係が片を外すところまで見てから、俺は帰り支度をした。
装置の下に、使われなくなった細い枝線が残っていた。
古い台を繋ぎ直した跡だろうと思った。それに触る仕事を頼まれたら面倒だな、とも思った。
その晩は、よく眠れた。
自分たちの先端が、初めてカザの見本と同じ溝へ入ったからだ。結果がよければ人間は寝る。俺は自分を、案外扱いやすい生き物だと思っていた。




