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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
山に眠る色
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四つの穴

夜が明けるまで、荷は一つも山を下りなかった。


下りたのは怪我人だった。


ボルンの足は大きく腫れたが、手当てをした女は、骨を折ったとは今のところ思わない、と言った。本人はそこで顔を明るくし、次には靴の値段を話し始めた。女は靴のことは靴屋へ言えと答えた。


荷止め役の手は、しばらく道具を握れないことになった。


二人が運ばれる時、ヘドは上の小屋にいた。


ダナが戸口を離れず、俺もそこへ入った。彼の外套は綺麗なままではなかった。梃子へぶら下がっていた袖が裂け、掌には革の色がついていた。


俺は少し、怒りにくくなった。


それが腹立たしかった。


卓の上に、鉤形の欠けのある石を置いた。


ヘドは見た。


「選んだ見本です。ここにありました」


「部下が間違えたのかもしれない」


彼の声は乾いていた。


俺は赤い布をその横へ置いた。


「包み直している所を、僕たちは見た。止めた荷を今夜出すと言ったのも、横戸を開けるなと言ったのも、あなたです」


ヘドは口を開きかけた。


外から足音が来た。荷主の女と、坑の持分を持つ老人、それから町の預り役が二人入ってきた。工房の試験で止めると決めた荷の数を、キナがその場で読み上げた。


足りない箱はなかった。


台車から下ろした石も、雨を避けて数えてあった。


俺が濡れた斜面で見た赤い印は、今、卓の上でただの染みに見えた。それでも、見本を抜いて別の箱へ回し、残った布へ未乾燥の石を詰めた順番は、包み手の男が自分の口で話した。


横戸の向こうで一度閂へ手を掛けた、あの男だった。


ヘドは彼へ顔を向けた。


男は目を逸らしたが、話をやめなかった。


「印が見えると数が合わなくなるから、裏へ入れろって。札は完成の方を巻けって」


雨が屋根から落ちる音が、妙に大きかった。


老人がヘドの前へ手を出した。


出荷印を渡せ、と言った。


ヘドはすぐには動かなかった。指を懐へ入れ、そのまま止まった。


「これが出なければ、次の仕入れを払えない」


「お前にはもう出させない」


老人は手を下げなかった。


俺は二人を見ていた。


ヘドの事情が全部なくなったとは思わなかった。払えない金は残る。冬も来る。だが、俺たちが帰ればまた彼の言うことが通る、という場所から、その人間が引き下ろされていた。


ようやく卓へ置かれた出荷印は、指の太さほどの小さな物だった。


その小ささを、俺はしばらく見ていた。


*


数日後、乾燥小屋の入口で、キナが俺へ包みを投げた。


俺は受け損ね、胸で抱えた。


「軽い」


言うと、彼女は満足そうに頷いた。


「数を減らした。重さの分は足してもらった」


「よかったね」


「よかった。帰る靴の金が増える」


彼女は俺の足元を見た。


俺の靴は、数日前より山を知っている顔になっていた。先端の白い傷へ泥が入り、片方の底から釘が少し出ている。


「あんたも、次は考えて買いな」


「思い出が増えたところなんだけど」


「靴に覚えさせても、足が痛いだけだよ」


笑いながら荷を取り返し、彼女は下へ向かった。


北第三坑では、乾いた物だけを少しずつ出すようになった。


板の札は棚へ掛けるのでなく、その荷と一緒に動かすようになった。乾燥が間に合わない箱は奥へ戻り、完成していた物は手前へ出た。働き手は増やした棚の据付けや、荷下ろし路の修繕へ回った。全員が同じ仕事を続けられたのではないが、朝、坑口で会った顔は、その日もそこで忙しくしていた。


ボルンは足を高くして座り、部材の端を削っていた。


手元には、俺にはまだ使い道の分からない形の木片が積まれている。


「出歩くと怒られる」


彼は言った。


「安静にって言われたんでしょう」


「言われた。座っていればいいと思ったら、脚へ力を入れるなとも言われた。最初に全部言ってほしい」


俺は彼の前へ椅子を寄せた。


ボルンは刃を置き、手の木片をひっくり返した。


「灯りがなかった」


ぽつりと言った。


俺は頷いた。


「音はした。上の台車だと思った。でも、身体が先に、下から空のが来る方へ避けた。昔はどこを通っていたのか、あの時だけ、分かる気がした」


彼は指で木屑を払った。


「分かってなかった」


俺には、慰めになる話がすぐには浮かばなかった。


ボルンは俺の顔を見て、息を吐いた。


「そういう顔になるから、あまり言いたくない」


俺は顔を直そうとした。


「もっと駄目だ。何か買わせようとしてる顔だ」


今度は笑ってしまった。


ボルンも少し笑った。


机の横に、新しい道順の板があった。右、左、何本目。細い字で、まだ余白が多い。


「歩けるようになったら、もう一度、一緒に」


俺が言うと、ボルンは板を裏返した。


「一回で覚えるつもりなら、やめておけ」


「何回?」


「分からん。俺は、分かるところまで」


彼はまた木片を取った。今度は削る前に、俺へ端を持つよう頼んだ。


*


古い金具が見つかったのは、荷下ろし路の巻胴を外した時だった。


腐った木枠の下から、長い鉄の板が出た。錆は厚かったが、裏面は比較的きれいで、穴の縁だけが他の部分より黒い。


俺は見た瞬間、手を伸ばした。


四つの穴が、一列に並んでいた。


中央の二つだけ、間が少し狭い。


「折るなよ。もう曲がってる」


イェトが言った。


俺は荷へ戻り、紙を探した。


村の灯台で写したものだ。


同じ金具に見えるのに、対岸の替え部品とは穴が合わなかった。削ってしまう前に、紙へ残した。あの日、エルナは食べ終えてから見せて、と言った。


畳んだ紙を開き、古い板へ重ねた。


一つ目。


二つ目。


三つ目を指で確かめる時、俺は急に呼吸を忘れた。


全部、合っていた。


イェトが紙の端を押さえた。


俺は裏返して、向きを変えて、もう一度重ねた。紙が湿りで伸びた分を見込んでも、内側二つの狭さは同じだった。


「村の灯台の部品です」


「それは、いま外した荷下ろしの下にあった」


イェトが言った。


「下に?」


「巻胴を据えた時の板じゃない。古い土台へ、あとからこの台を乗せてる。穴も全部は使ってない」


俺は柱の跡を見た。


四つの穴のうち、今の留め具が通っていたのは端の二つだけだった。中央の狭い二つには、別の何かが載っていた時代がある。


山と灯台。


俺は紙の上へ掌を置いた。


前からあった物が、急に遠い場所へ手を伸ばしたようだった。俺の身体の中でも、忘れかけていた欲が起き上がった。知りたい。事故を片づけた報酬より、褒められた仕事より、今はこの穴が欲しかった。


「これ、借りられますか」


イェトが片眉を上げた。


「重いぞ」


持ち上げると、確かに重かった。


俺は両手で抱え直した。


「持ちます」


初めて荷を増やす理由に、迷いがなかった。


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