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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
山に眠る色
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同じ箱の軽い石

下の部屋は、昨日の荷でいっぱいだった。


地面に近い窓があり、開けると外の枯れ草が中へ入ってきた。乾燥のための炉はあったが、灰は冷たい。壁際の薪には、蜘蛛の細い糸が一本かかっていた。


ヘドは、ここは前に使った部屋だと言い直した。


俺は、説明を聞くたびに石の通った道が伸びていくのを、黙って聞いていた。最初は数日乾かした。次には別室で下処理した。その別室へ来ると、さらに前の部屋がある。


オルネの言葉を思い出す。


上手くいった見本だけ見せられて帰るな。


老人はこういう顔で笑う相手を、俺より何人も見てきたのだろう。


「上の棚から、僕が選んだ物を取っていいですか」


ヘドは一度、入口の男へ視線をやった。


「もちろん。必要な数を」


俺は三枚選んだ。


一枚には縁へ小さな鉤の形の欠けがあり、もう一枚には斜めに黒い点が並んでいた。どれも同じ厚さに削られているが、持つと重みが違う。箱へ収める前に、キナから秤を借りた。


「それ、荷札より信用できるからね」


彼女は錘を置きながら言った。


俺は重さを書いた。石の端を紙へ当て、外形も取った。


ヘドは何も言わなかった。


坂を下りる時、木箱を運ぶと言ったのは彼の部下だった。俺は断りかけたが、左肩の紐が皮膚を擦って痛かった。案内所へ先に回しておく、という言葉を受け入れた。


その程度なら、大丈夫だと思った。


昼過ぎ、イェトの工房で木箱を開けた。


鉤の形の欠けがなかった。


俺は石をひっくり返した。黒い点のある一枚も、見つからない。代わりに、よく乾いた淡い灰色の板が三枚、布の上へ綺麗に並んでいた。


自分が間違ったのかと思った。


まっさきにそう思うのは、俺が謙虚だからではない。自分に記憶の穴があると知っていると、他人に大声で異議を唱えるのが怖くなる時があるのだ。


紙を出した。


欠けを写した線があった。


俺はそれに石を重ねた。角が合わない。


「替えられた」


声に出すと、腹の中に熱いものが下りた。


イェトが石を受け取り、爪で弾いた。


「いい音だな」


「褒めてる場合ですか」


「褒めてない。これは売っていい石だ」


彼は俺を見た。


「悪いのが出る場所を知っていて、いい物を選んだ奴がいる」


ヘドが肉を差し出した時の手が浮かんだ。俺はあの肉を美味しく食べた。食べたことまで取り消したくなったが、それをしても腹が減るだけだった。


ダナが箱の裏を調べた。


「外はそのままだ。次は箱ごと離すな」


「分かってる」


言い方が強くなった。


ダナは俺を見たが、何も言わなかった。俺は少しのあいだ、机へ向けて息を吐いた。


「ごめん。今のは、八つ当たり」


「知ってる」


それで済んだ。


夕方、キナが工房へ来た。


額に髪が張りつき、唇が乾いていた。水を渡すと一息で半分飲み、籠から小さな布包みを出した。


「上の荷。今、包み直してる」


赤い印が、内側へ折ってあった。


俺は布へ触れた。指が冷たくなった。


「いつ出る?」


「明後日の昼。街道の大荷へ繋ぐ。下の荷主がそれより遅くは待たない」


イェトが顔を上げた。


「誰が決めた」


「ヘド」


キナは残った水を飲み、器を置いた。


「重い分を払えと言ったら、次から私には回さないってさ」


彼女は笑った。笑うと、怒っているのがよく分かった。


「だから次からのために、今、軽くしてもらいに来た」


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