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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
二つの岸の約束
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向こうにも朝が来る

協定を使う最初の定期便が出る朝、港には、見物より働く人の方が多かった。


それが少し残念だった。


俺は、この一年余りにやったことを誰かが一目で分かるような、晴れがましい朝を期待していたのかもしれない。


実際には縄が湿り、札の一枚が裏返り、先に積むはずの樽がまだ届いていなかった。


サーヴァは船縁に肘を置き、荷を持ってくる男へ、大事に運ぶことと遅く歩くことは違うと声をかけた。


男は言い返し、その後で少し歩くのを速めた。


ユストは出航前の点検を終えて、控えに印を付けた。


二人の共同所有になったからといって、船体の色が変わるわけではない。


だが、大きな修繕の予定を尋ねられた時、サーヴァは一人で答えず、ユストの方へ顔を向けた。


そこだけ、前と違っていた。


ハルの荷は、今回は予定の便へ載った。


彼の名は彼の綴りのまま、対応する控えが別の紙に付いている。


俺はその組合せを念入りに見て、ハルに、見すぎだと言われた。


「間違ってないか確かめてる」


「俺の字が変わるまで見るな」


俺は紙を戻した。


信用とは、確かめることを無限に続けることではない。


どこで確かめ終えたことにするかも、決めなければならなかった。


レクの箱には、彼の店の印が小さく入っていた。


持ち手の下なので、使う時には見えない。


俺がもっと見える所でもいいのではないかと言った時、彼は箱の使い手が自分の宣伝を持ち歩く必要はないと答えていた。


そのくせ納品書には、店の名を大きく書いていた。


直す時に迷われるのは困るからだという。


彼の母ネルダが送った短い便りも、その便で届いていた。


レクから近況を聞いたこと、時々昼食を共にしていること。


最後に、彼が手の具合を悪くしていないかを尋ねてあった。


俺は返事で、本人へ聞いてくださいとだけ書こうとして、少し冷たすぎると思った。


代わりに、最近見た仕事の様子を、レクが話してよいとした範囲で書いた。


誰かの心配を全部切り捨てることと、本人を飛び越えないことは、同じではない。


灯台から出航の確認が来た。


昼の油灯が何でも伝えられるわけではない。


見える合図を見える範囲で確かめ、長い書類は箱で運ぶ。


急を要する照会のためには、別に費用を積み、契約した封片の残りを記してある。


術で届く文字が一行増えるたびに、どこかの誰かから切り離された体験が消費される。


紙を舟に乗せるのは遅い。


しかし、早い方にしか値段がないのではなかった。


俺は出航を待つ箱へ手を置き、今朝はその遅さを選べることを確かめた。


ミソサザイが桟橋を離れた。


人々が手を振り、船上の誰かが振り返した。


途中で腕が疲れた子供が先にやめ、その後もう一度思い出したように振った。


舟はゆっくり小さくなり、港には空の荷車と、片づける縄が残った。


俺は縄を巻いた。


出る舟を見送る時に必要なのは、胸を張って遠くを見る顔だけではなかった。


次の舟が来る場所を空ける必要がある。


父が荷車を寄せ、トマが空樽を押した。


アニは新しい行先へ出す蜂の品の見本を持って、取りまとめ役と話していた。


彼女の傷のある掌は、瓶を持つ時に少し角度が変わる。


その動きは消えていない。


俺が彼女へ謝ったことも、今日の出航がうまくいったことも、その角度を元に戻しはしなかった。


それでも彼女は、売りたい品の話をしていた。


俺の後悔のために、未来を空けて待っている人ではなかった。


定期便は、その後も予定通りにだけは動かなかった。


風で二日遅れた便があり、積荷の一部を別の便へ回した日もあった。


ただ、遅れた理由が分かる控えが届き、待つ側は、全部失ったのだと思わずに次の仕事を組めた。


間違った受取人へ回りかけた布は、相違の欄を見た係が止め、元の店へ戻した。


小さな失敗が、世界の真相のせいにされず、小さな失敗として扱われた。


それはかなり大きな変化だった。


秋の入り口、俺は二十一になった。


灯台の窓の下へ、薄い落ち葉が一枚入り込んでいた。


拾おうとすると風で逃げ、追いかけた先で古い道具箱を開けることになった。


中には使わなくなった金具と、寸法を書いた控えが入っていた。


対岸から届いた替えの部品を、その横へ並べた。


一見すると同じ形なのに、穴の間隔がわずかに違う。


村の灯台に最初からあるものと、後に足されたものも、全て同じ規格ではない。


何でも一つの仕組みに揃えようとしていた頃なら、間違って作った者がいるのだと考えただろう。


別の時代に、別の困り方をした人間が直した可能性がある。


俺は違う穴の間隔を、削って合わせる前に紙へ写した。


ノアの受理番号に関する照会も、少しだけ進んでいた。


索引に載る保管先へ、正式に問い合わせる順番が決まった。


自分のために他の依頼を後へ回してもらうのではない。


返事を待つあいだ、油を足し、窓を拭き、給金を受け取り、決めた返済を続ける。


待つことに慣れたわけではなかった。


返事の袋が来るたび、心臓は勝手に速くなった。


別の用件だと分かると、落胆した。


誰かの仕事を喜ばせる便りより、自分の謎の一行が欲しい。


そういう狭さは、俺の中にちゃんと残っていた。


ただ、袋を粗雑に置く前に、表の名を読める日が増えた。


ある日、北の仕入れ先から値上げの知らせが届いた。


封片の素材と加工にかかる費用が上がるという。


理由は幾つか書いてあったが、原料そのものの不足と、乾燥に要する時間が同じ行にまとめられていた。


オルネは、まとめたまま受け入れる前に、詳しい控えを求めようと返事をした。


俺も同意した。


高いと言って値切ることと、安くするために何を省いたかを見ることは、別の仕事なのだと、少しずつ分かり始めていた。


届いた見本を包む布にも、小さな赤い印があった。


包みを開いた者が、加工前のものと取り違えないための印だった。


俺はそれを布ごと残し、容器だけを綺麗なものへ替えるのをやめた。


見た目を整えることで消える情報がある。


何かを保存する仕事は、いつも立派な箱を用意することとは限らなかった。


その日は、新しい旅を決めなかった。


灯台の番を終えた後、俺は家へ帰った。


エルナが来る日で、途中で焼きたてのパンを受け取る約束をしていたからだ。


約束の時間を過ぎると、村のパン焼き人は俺の分を奥へしまい、探す手間が増える。


家では、エルナが小鉢を洗っていた。


袖をまくり、濡れた指で器の底を確かめている。


俺が戻ると、彼女はお帰りと言った。


それから、パンを置く所を作るため、広げていた紙を自分で寄せた。


その動きが嬉しかった。


俺のために全てを片づけるのではない。


二人で使う分だけ、場所が空く。


今の俺たちには、それくらいが、よく似合っていた。


「今日、何か分かった?」


エルナが聞いた。


「穴の位置が違った」


「何の?」


「灯台の金具。新しい方が悪いんじゃなくて、違う所へ使うものかもしれない」


彼女は少し考え、食べ終えたら紙を見せてと言った。


俺は頷き、パンを割った。


海の向こうでも、今頃、誰かが仕事の話をしながら食べているのだろう。


グレンは自分の部屋で、ネイは繕いかけの帆布のそばで、レクは明日直す錠前を脇へ寄せて。


俺が見ていないところに、それぞれの暮らしが続いている。


それらを全部、一冊の帳面へ閉じ込める必要はなかった。


届けたい物がある時に、名を確かめ、出してよいものを尋ね、受け取ったと返せる。


そのための細い道が、海の上にできていた。


エルナは小鉢の歪んだ縁へ唇を寄せた。


俺は、明日の灯台の当番を忘れないよう、食事の後で帳面に印を付けた。


向こうの朝を知った後にも、こちらで起きる朝がある。


その朝へ間に合うよう、俺たちは灯を少し早く消した。


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