舟の一部を買う
サーヴァがユストへ舟の持分を渡す相談をしていると知った時、俺は、今までも二人の舟ではなかったのかと思った。
いつも二人が乗っている。
直す時も、荷を運ぶ時も、ユストはそこにいる。
だから二人の舟なのだという考えは、家事をしている人間なら当然家を所有していると思い込むのと、似た雑さだった。
ミソサザイは、これまでサーヴァが持ち、仕事の責任を負ってきた舟だった。
ユストの働いた時間には給金があり、その時間を重ねただけで、売る権利や大きな借入れを決める権利まで自然に増えるわけではない。
二人が相談していたのは、これからの出資と、修繕費と、定期便の仕事の取り方だった。
俺たちは同じ宿の別の机にいて、話が聞こえてきた。
盗み聞きにならない距離というのは、聞く気のある人間には存在しない。
エルナに紙を渡され、俺は自分の仕事へ戻ろうとした。
その時、サーヴァに呼ばれた。
「読め。勝手に格好よく直すなよ」
紙は二枚あった。
片方には、舟のどの修繕にいくら出したかと、今後どの割合で持つかが書いてある。
もう片方には、出航を決める時の扱いと、海上での船長の指揮について書いてあった。
共同で持つからといって、横波を受けた瞬間に二人で採決するわけではない。
所有の相談と、いま帆をどうするかは、別の時に決める。
「休みたい時は?」
エルナが聞いた。
ユストが二枚目の下を指した。
「先に決めた勤務を代わってもらう。代わりがいなけりゃ、その便を出さないこともある」
「持っている人だから、無給で全部埋める、とはしないのね」
「それをやると、今よりひどくなる」
ユストは笑わずに答えた。
救助で帰りが延びた時、彼にも会う予定の人や、済ませるつもりだった用事があった。
俺はそれを聞いたのに、舟の話になるとまた、彼を舟の一部のように考えてしまう。
サーヴァは窓の方を見た。
「私が具合悪くても、私のものだから乗る、って言うのを、こいつが止める紙にもしたい」
「紙がなくても止める」
「止まらなかった時に、仕事を失わずに済むようにするんだ」
声が少し低くなった。
俺はその言葉を聞いて、海上で彼女の指示に従うことと、何でも彼女が決めていいことを、別に考えなければならないのだと思った。
頼りになる人間ほど、その人に何もかも任せる方が楽になる。
紙には、俺たちが決めることはほとんどなかった。
読みにくい言葉を確かめ、同じ費用が二つの欄へ入っていないかを見た。
それから二人は、取り決めを立ち会ってもらう場所へ持って行った。
俺が筆で線を引いたから、俺の考えた共同所有になるわけではない。
数日後、ミソサザイの板を磨くユストを見て、俺は何か変わったかと聞いた。
「釘が抜けて見える」
「前から見えてたでしょ」
「前からだ。でも、腹の立ち方が少し変わる」
彼は釘を抜き、使えるものと替えるものを分けた。
所有するというのは、誇らしく舵を握ることばかりではないらしい。
壊れた所を見なかったことにして帰れない理由が、一つ増えることでもあった。
俺は試験取引の箱を運んだ。
レクが直した内側の段は、粉を落とさないようになっていた。
代わりに、乾いた布で掃除する時に少し手間が増えた。
よい道具にも、片づける人の時間が入っている。
甲板へ置く前に、ユストが箱の向きを示した。
俺は今回は、札が見える向きより、持ち上げる人の指が入る向きを先に選んだ。




