綺麗な一覧表
協定の説明役を頼まれた時、俺は断るふりを一度だけした。
「僕でいいんですか」
尋ね方からして、よくないとは答えさせる気がなかった。
向こうの港を知り、こちらの灯台を知り、外部の体験を受け取った者として両方の言葉を分かる人が必要なのだと、港の取りまとめ役は言った。
聞きたいことを全部言われた。
これで舞い上がらない人間がいるなら、人生のどこかで相応に褒められて育ったのだと思う。
俺の場合、褒められなかった理由にも俺の責任があるので、ここを被害として語るのはやめておく。
説明会は、ロスカの立会所に近い広間で開かれた。
壁には新しい航路の図が掛けられていた。
定期便が動けば、貨物の到着を毎回一から照会する手間が省ける。
代金が届く前に次の仕入れを諦めなくて済む商人もいる。
潮の向こうに家族を持つ人は、手紙を誰へ預けたかを追いやすくなる。
どれも、欲しいものだった。
問題は、そのための一覧表に、いくつもの欄があったことだった。
現在名。
旧記録名。
帰還前の番号。
受理の系列。
世帯。
保存封片の保有。
照会を代行できる者。
一枚へまとまると便利そうに見えた。
実際、便利なのだ。
探す側にとっては。
俺は説明の練習で、ハルの例を省いた。
名の綴りを相手の様式へ合わせたくない人、家族の所在を商売相手へ知らせたくない人。
そうした人も別に相談できます、と一行にまとめた。
話が滑らかになった。
滑らかになった分だけ、何かが転がり落ちた気がしたが、時間が限られているのだから仕方がないとも思った。
休憩の時、エルナが俺の説明用の紙を見た。
「別に相談する人は、荷を止められるの?」
「まだ決まってない」
「では、止められないとも決まってない」
「今ここで全部話したら、協定そのものが進まないよ」
言い返してから、ベレスの整った説明を思い出した。
似ていると言われるのが嫌で、先に相手の違いを探したくなった。
俺は良いことを進めようとしている。
本人の意向を無視するつもりはない。
後で調整できる。
どの言葉も、自分の声で思い浮かぶから、さっきより説得力があった。
エルナは俺を責めるために黙っているのではなかった。
時間を見て、次の仕事へ戻る必要があった。
対岸の記録工房との協力について、別の席で相談しているのだ。
「私があなたの説明を直す係になったら、私の話す時間がなくなる」
彼女は言った。
「聞いてくれてありがとう。でも、あなたが直して」
俺は紙を持ったまま、広間の外へ出た。
廊下の窓の下で、商人が二人、支払いの遅れについて話していた。
新しい欄が増えてもいいから早く通してほしいと言う男と、その欄に書くための証明を取るだけで一月かかると言う女。
同じ商人でも、同じ便利を欲しがってはいなかった。
俺は紙を裏返した。
一覧表を綺麗にするのは得意なつもりだった。
書いてあるものを正しく並べれば、よくできた仕事に見える。
書くのを嫌がる人間を表の外へ出せば、さらに綺麗になる。
紹介役というのは、誰を外へ出す役なのだろう。
その夜、俺は説明を書き直した。
例外という見出しを消し、必要な情報と、必要とされていない情報を分けた。
分けられない欄には、自分で答えを作らず、未決と書いた。
見栄えは悪くなった。
次の日の説明で、広間の係は眉をひそめた。
俺は前日の原稿に戻したい気持ちを抱えたまま、最初に、統一に加わらない荷の扱いがまだ決まっていないと話した。
席の後ろから、初めて手が上がった。




