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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
灯の届かない入江
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七人分の場所

最初の便に、エルナは乗らなかった。


俺は積荷を固定しながら、岸を見た。


彼女は小屋の前でモルと話し、紙を指で押さえている。


会えたばかりでまた離れるのは、思ったより難しかった。


だが、俺がここへ来た目的は、彼女だけを連れて帰ることではない。


そう言えば立派だが、正直なところ、彼女だけが先に乗ればかなり安心したと思う。


その気持ちを隠すために、皆のためだという顔をするのはやめた。


俺は寂しいまま、七人の乗船を手伝った。


最初の行き先はアルヴェインではなく、物資と大きな船を待てる近い港だった。


そこからそれぞれの家へ向かう便を手配する。


一度で全てを終える必要はない。


人を安全な場所へ一段ずつ動かす。


足首を傷めた商人を乗せるとき、彼は俺の肩へ強く掴まった。


「痛かったら言って」


俺が言うと、もう痛い、と返された。


俺は謝り、ユストと持ち方を変えた。


手当の袋を出し、母の説明に従って支えを作る。


治す魔法で全てを解決するなら、痛みの原因と身体の形を知らなければならない。


俺の都合で早く歩ける人へ変えることはできない。


子供は船へ乗った途端に泣いた。


母親が謝ったが、サーヴァは泣く分の場所も料金に入ってると言った。


今は救援便なので、細かい支払いの話は後だった。


母親が少し笑い、子供は相変わらず泣いた。


声が出ることだけでも、少し安心できる場合がある。



*



入り江を出ると、船の揺れが変わった。


乗客が同じ側へ寄りかけ、ユストが場所を指した。


俺も声をかけたが、自分の言葉がサーヴァの指示に重なると気づき、止めた。


指示を増やせば安全になるとは限らない。


俺は担当した荷と、足首を傷めた男を見た。


その二つだけでも仕事はあった。


男が水を求め、子供が吐き、布が足りなくなる。


英雄的な判断の入る余地はないほど、手が忙しかった。


途中、帆の端の金具が外れかけた。


ユストが縄を取り、サーヴァが船の向きを調整した。


俺は道具袋を開き、必要なものを渡した。


金具の縁に亀裂がある。


無理に締めれば割れる。


仮の締結で負担を別へ逃がし、次の港で部品を替えることになった。


補助の術を使う余地はあったが、今の揺れの中で流路を確かめるより、縄を一本増やすほうが早かった。


その選択を、魔法が役に立たない証拠だとは思わなかった。


何をどこで使うかを間違えないことも、技術の一部だった。


港へ着くと、乗客は足元が動かないことに驚いていた。


俺は自分が最初の渡航で同じ顔をしたことを思い出し、笑いかけた。


だが笑うより先に、荷が足元へ置かれないよう動かす必要があった。


七人の名前を、受け入れる宿の係へ渡した。


全員の行き先が同じではない。


家族へ連絡が届く人と、宛先を確認し直す人がいる。


ここまで運べば終わり、と言いたくなる疲れがあったが、引き継ぐところまでが今日の便だった。


最後の人が椅子へ座るのを見て、俺はようやく自分も腰を下ろした。


掌に縄の跡が残っていた。


エルナはまだ島にいる。


だが、今日運んだ七人も、誰かの帰りを待たせていた人間だった。


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