出ていく順番―エルナ
ノアは疲れた顔をしていた。
私も同じだったと思う。
彼は声をかけようとして、私が指した水の荷を先に下ろした。
その順番にほっとした。
会えたことを喜びたかった。
けれど、私たちが抱き合っている間にも、小屋の中では湯が必要だったし、何人が次の便へ乗るかを決めなければならなかった。
ミソサザイは、全員を一度に乗せられる船ではなかった。
榛色丸の乗員と客は二十二人。
船長と二人の船員は自船の応急修理を進め、船を置いて先に去るつもりはないと言った。
残る十九人も、荷物を全部持ってすぐに出られるわけではない。
歩くと息が切れる老人、足首を捻った商人、幼い子のいる家族。
それぞれ事情があり、声の大きさで順番を決めたら、静かな人が最後になる。
私は昨夜使った石を並べた。
名前を確かめ、希望を聞く。
船長が海の都合を説明し、モルが小屋の水と食料の見通しを話した。
ノアは途中から口を出しかけ、サーヴァの顔を見て止めた。
あれは、また何か失敗した後の顔だと思った。
今は、その話を聞く時刻ではなかった。
「エルナは、先に乗る?」
ノアが聞いた。
私は少し迷った。
先に出たい気持ちはあった。
温かい部屋へ行きたい。
濡れていない服を着たい。
もう自分が何を配るか考えずに眠りたい。
同時に、ここで書いた記録を次の担当へ渡す仕事が残っていた。
私が残らなければ全て崩れる、と思うのも間違いだけれど、まだ渡していないものを置いていくのも違う。
「二便目。引き継ぐ人が決まったら」
私は答えた。
ノアは口を開き、閉じた。
「分かった。何を手伝えばいい?」
私は箱を指した。
「濡れた荷と乾いた荷を分けて。中身は持ち主に聞いて」
彼は頷いた。
*
商人の一人が、自分の荷を先に積めと言った。
薬の材料が入っている。
傷めば困る人がいる。
その言い方は嘘ではなかった。
箱の中には実際に乾燥を保つべき材料があり、布の包みへ湿りが回り始めていた。
しかし、荷を積めば人を一人減らすことになる。
サーヴァはそう説明し、必要な材料だけを小分けにする案を出した。
商人は封を開ければ売り物にならないと怒った。
「それなら、元の箱で次の便へ」
彼女は言った。
「今の便は、人を七人乗せる。あなたも数に入っている。荷を優先したいなら、あなたが次へ回ることはできる」
商人は黙った。
皆が彼を見る。
その視線で選ばせてよいのか、私は少し迷った。
犠牲を選ぶ姿を人前へ晒すと、本当は言えたはずの希望が言えなくなる。
私は彼へ、小屋の陰で荷の中身を確認しようと提案した。
中には薬の材料以外に、贈り物もあった。
家族のための布、細工の入った小箱。
失いたくないのは売り物だけではないのだと分かった。
結局、彼は一部を小分けにし、自分も二便目へ回ることにした。
失うかもしれない売値と、預ける荷の場所を記した。
誰が責任を持つかを、曖昧な励ましで済ませなかった。
ノアはその間、母子の荷を運んでいた。
子供が持ってきた木の玩具を海へ落としかけ、慌てて膝をついた。
玩具は彼の袖に引っかかっていた。
子供が怒り、ノアが謝った。
助ける人だから何をしても感謝されるわけではない。
その普通のやり取りを、私は少し離れて見ていた。
太陽が雲から出ると、濡れた服の肩から湯気が立った。
私たちは、今日出ていく人の名前を確かめた。




