↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
灯の届かない入江
PR
68/196

出ていく順番―エルナ

ノアは疲れた顔をしていた。


私も同じだったと思う。


彼は声をかけようとして、私が指した水の荷を先に下ろした。


その順番にほっとした。


会えたことを喜びたかった。


けれど、私たちが抱き合っている間にも、小屋の中では湯が必要だったし、何人が次の便へ乗るかを決めなければならなかった。


ミソサザイは、全員を一度に乗せられる船ではなかった。


榛色丸の乗員と客は二十二人。


船長と二人の船員は自船の応急修理を進め、船を置いて先に去るつもりはないと言った。


残る十九人も、荷物を全部持ってすぐに出られるわけではない。


歩くと息が切れる老人、足首を捻った商人、幼い子のいる家族。


それぞれ事情があり、声の大きさで順番を決めたら、静かな人が最後になる。


私は昨夜使った石を並べた。


名前を確かめ、希望を聞く。


船長が海の都合を説明し、モルが小屋の水と食料の見通しを話した。


ノアは途中から口を出しかけ、サーヴァの顔を見て止めた。


あれは、また何か失敗した後の顔だと思った。


今は、その話を聞く時刻ではなかった。


「エルナは、先に乗る?」


ノアが聞いた。


私は少し迷った。


先に出たい気持ちはあった。


温かい部屋へ行きたい。


濡れていない服を着たい。


もう自分が何を配るか考えずに眠りたい。


同時に、ここで書いた記録を次の担当へ渡す仕事が残っていた。


私が残らなければ全て崩れる、と思うのも間違いだけれど、まだ渡していないものを置いていくのも違う。


「二便目。引き継ぐ人が決まったら」


私は答えた。


ノアは口を開き、閉じた。


「分かった。何を手伝えばいい?」


私は箱を指した。


「濡れた荷と乾いた荷を分けて。中身は持ち主に聞いて」


彼は頷いた。



*



商人の一人が、自分の荷を先に積めと言った。


薬の材料が入っている。


傷めば困る人がいる。


その言い方は嘘ではなかった。


箱の中には実際に乾燥を保つべき材料があり、布の包みへ湿りが回り始めていた。


しかし、荷を積めば人を一人減らすことになる。


サーヴァはそう説明し、必要な材料だけを小分けにする案を出した。


商人は封を開ければ売り物にならないと怒った。


「それなら、元の箱で次の便へ」


彼女は言った。


「今の便は、人を七人乗せる。あなたも数に入っている。荷を優先したいなら、あなたが次へ回ることはできる」


商人は黙った。


皆が彼を見る。


その視線で選ばせてよいのか、私は少し迷った。


犠牲を選ぶ姿を人前へ晒すと、本当は言えたはずの希望が言えなくなる。


私は彼へ、小屋の陰で荷の中身を確認しようと提案した。


中には薬の材料以外に、贈り物もあった。


家族のための布、細工の入った小箱。


失いたくないのは売り物だけではないのだと分かった。


結局、彼は一部を小分けにし、自分も二便目へ回ることにした。


失うかもしれない売値と、預ける荷の場所を記した。


誰が責任を持つかを、曖昧な励ましで済ませなかった。


ノアはその間、母子の荷を運んでいた。


子供が持ってきた木の玩具を海へ落としかけ、慌てて膝をついた。


玩具は彼の袖に引っかかっていた。


子供が怒り、ノアが謝った。


助ける人だから何をしても感謝されるわけではない。


その普通のやり取りを、私は少し離れて見ていた。


太陽が雲から出ると、濡れた服の肩から湯気が立った。


私たちは、今日出ていく人の名前を確かめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。