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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
灯の届かない入江
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光る水

夜の水面は、美しかった。


その美しさが腹立たしかった。


岸へ寄る波の内側で、青白い光が細かく砕けていた。


うねりが通るたびに線が広がり、何もない暗いところへ、道のような明るさが現れる。


灯りを持った小舟がいくつも走っているようにも見えた。


前の世界にも、似た現象の名前があった気がする。


俺はその名前を口にしかけたが、同じ生き物である証拠はない。


似ているものを知っているというだけで、向こう岸の人より今夜に詳しくなるわけではなかった。


「星が落ちたみたいだな」


ユストが言った。


「綺麗だね」


俺は答えた。


「腹立ってる?」


「少し」


彼は笑わなかった。


昼の旗は下ろされ、岸には別の小さな灯りがあった。


俺たちは遠くでそれを見ながら、波の明るい場所と、実際の岸の輪郭を比べた。


すぐには一致しない。


明るさが動くと、岸まで近づいたような錯覚を覚える。


サーヴァはその夜、入江へ入らなかった。


風を避けられる外側の水面で待ち、翌朝にザロが示した石の並びを確かめる。


眠る者と見張る者を分け、温かいものを食べる。


待つためにも、積んできた水と燃料を使った。


俺は灯台の術で短い照会を送れないかと聞いた。


船に古い帰路を開く装置はない。


携帯の信号具も、相手の受信点を確かめず勝手に開けるためのものではなかった。


ここにある封片は、必要な補助作業のために用途を決めて積んだ分だ。


「使えば、何を確かめられる?」


サーヴァが聞いた。


「岸にいる人数を」


「向こうに返せる人と道具があるかも、まだ分からない」


俺は頷いた。


「僕が、安心したいんだと思う」


「それはそうだろう」


彼女は少し意外そうに俺を見た。


「安心したいのが悪いんじゃない。そのために何を使って、誰へ仕事をさせるかの話だ」


俺は封片の箱から手を離した。


夜の間、何度か眠り、何度か目を覚ました。


起きるたびに、状況が変わっていてほしいと思った。


波は同じ方向から来て、岸の光はまだそこにあった。


夜が長いのは、太陽が怠けているからではない。


自分が一刻ごとに結果を欲しがるからだ。



*



明け方、ユストに肩を叩かれた。


空が青黒くほどけ、海の光はもう見分けにくくなっていた。


代わりに岩の端が見え始める。


岸に人が出て、長い棒を持って水辺を歩いていた。


俺は目を凝らした。


一人がこちらへ腕を上げた。


短い髪だった。


遠くて顔は分からない。


それでも、その腕の動かし方を知っているような気がした。


気がしただけでは、名前を呼ばなかった。


旗が上がり、ザロの小舟が岩の外へ来た。


彼は今なら小艇を一つずつ通せると告げた。


水の上に見える白い筋を避け、向こうの石を確かめる。


指示を受けるのはサーヴァとユストで、俺は荷をまとめた。


岸へ近づくと、声が聞こえた。


「その箱、水?」


エルナだった。


「うん」


「先に、そっちを」


俺は笑いそうになり、同時に泣きそうになった。


再会の最初に求められたのは、水の箱だった。


生きている人には、飲む水がいる。


それは何度知っても、感動より先に来る当たり前だった。


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