魚の汁と空いた席
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完結までの構想はありますが、皆様のご意見を支えに作品を作り上げていく方針です。
エシュルの朝は、俺が起きるより早く始まり、俺が眠りたい頃には十分にうるさかった。
共同台所の床を樽が転がり、戸口で誰かが誰かの家の鍋を返した。
返された側は蓋が違うと言い、返した側は借りたときからそれだったと言った。
その争いを聞きながら、俺は顔を洗うための桶を探した。
ここでは水桶の持ち手にも印があり、似ているからと手を伸ばすと、魚を洗った水で清潔になろうとする羽目になる。
海を知らなかった村から来た男にとって、最も重要な外国語は、そっちは違う、だった。
この街へ来たのは二度目だった。
最初の滞在の後、俺たちはミソサザイで一度帰港した。
灯台の当番を引き継ぎ直し、溜まった修理の依頼を片づけ、村とロスカの間を往復するうちに、夏が終わった。
秋の入り口に、俺は二十歳になった。
年齢の欄が一つ増えても、返す金は同じ勢いでは減らなかった。
夏の夜、灯台でエルナを待ったことがあった。
ロスカから戻る荷車が遅れ、俺は夕食の包みを二つ並べていた。
父が交代の刻限に来て、食べたのかと聞いた。
まだ、と答えると、自分の分を食べればよいと言われた。
俺は一緒に食べたいのだと説明した。
「じゃあ、そう書いておけ。腹を空かせて怒るために待つなよ」
父は包みを指で押し、油が染みたところを下へ向けた。
俺は否定したが、半刻後には確かに不機嫌になりかけた。
帰ってきたエルナは、途中で荷車の輪が緩んだことを説明する前に、水を飲ませて、と言った。
俺は器を渡し、靴を脱ぐ場所を空けた。
食事は冷めていた。
それでも、窓の下で二人で食べると、俺が一人で待っていたときに想像したほど悪い夜ではなかった。
彼女は父の言ったことを聞いて笑い、次は先に一つ食べて、と言った。
夏のあいだには、そういう小さな相談もあった。
エルナの修復の仕事と、俺の港の部材照会を合わせ、もう一度二人で渡ったのは秋だった。
サーヴァはその間にも荷を運び、俺たちのために船を止めてはいない。
今回の帰港便までは三週間。
前より手際よく荷をほどけたことを、俺は密かに成長へ数えていた。
宿の女主人は、朝から魚の汁を煮ていた。
大きな鍋の中で骨と白い肉が揺れ、煮崩れた玉葱が底へ沈んでいる。
湯気に顔を近づけると、塩気と脂の匂いがした。
最初に食べたときは朝から重いと思ったが、今ではパンだけの日のほうが頼りなく感じる。
人間の郷愁は、胃袋の習慣によって簡単に新規契約を結ぶらしい。
エルナは既に卓についていた。
髪の片側が跳ね、爪の際に薄い糊が残っている。
昨夜、寝る前に一つだけ確かめると言った仕事が、一つで終わらなかった証拠だった。
「その手で、パンを取らないほうがいいよ」
「洗ったよ」
「指のところに、糊」
エルナは爪を見て、布で擦った。
「乾いてる」
「乾いたら、パンの材料になる?」
「ならない。お皿を取って」
俺は汁を受け取った。
昨日の受理番号を頭の中で並べ直していたせいで、眠ったと思ったら朝だった。
番号は食事の材料にならないのに、考えると腹だけは減る。
向かいの席に、新しい男が座った。
背は高かったが、身体を小さく折る癖があった。
布で包んだ紙を卓へ置き、器を受け取ってもすぐには食べない。
左耳の下に、髭の生えない細い傷がある。
その顔に見覚えがあった。
海の戻った日、帰還者の荷物を運ぶ列の中で、古い鍋の取っ手を両手で抱えていた男だ。
俺がその名を思い出すより先に、彼が顔を上げた。
「ノアだね」
「グレンさん」
名前が出て、少しほっとした。
人を覚えていることを、記録師見習いだった頃より意識して確かめるようになっていた。
「来られたんですね」
「沿岸便で。昨夜、荷を降ろした」
彼は紙を見た。
「ここなら、これを読める人がいると聞いた」
布の中から出てきたのは、一通の通知だった。
死んだものとして扱う、と書かれていた。
俺は顔を上げた。
グレンは、俺が驚くのを待っていたわけではなく、汁が冷めないうちに食べようとしていた。
匙が器の縁へ当たり、小さく鳴った。
紙の決定日は古かった。
受領を示す印だけが新しい。
エルナが手を伸ばす前に、読んでよいか聞いた。
男は頷き、少し場所を空けた。
「いつ届いたんですか」
「向こうの湾へ、半月ほど前。古い便を仕分けたときに出てきたらしい」
「事故の頃の知らせ?」
「違う。俺が何年も帰らなかったから、死んだことになった」
グレンは口を拭いた。
「家へ帰るつもりで来た。でも、ここへ先に行けと港で言われた。家は、もう俺のものじゃないらしい」
共同台所では鍋の蓋を巡る議論がまだ続いていた。
失くしたものを元へ戻してほしい人間が、同じ朝に何人もいる。
その望みの大きさも、元へ戻せる範囲も、同じではなかった。




