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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
向こう岸の朝食
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魚の汁と空いた席

ご覧いただき誠にありがとうございます。

ぜひ感想をお聞かせください。

完結までの構想はありますが、皆様のご意見を支えに作品を作り上げていく方針です。

エシュルの朝は、俺が起きるより早く始まり、俺が眠りたい頃には十分にうるさかった。


共同台所の床を樽が転がり、戸口で誰かが誰かの家の鍋を返した。


返された側は蓋が違うと言い、返した側は借りたときからそれだったと言った。


その争いを聞きながら、俺は顔を洗うための桶を探した。


ここでは水桶の持ち手にも印があり、似ているからと手を伸ばすと、魚を洗った水で清潔になろうとする羽目になる。


海を知らなかった村から来た男にとって、最も重要な外国語は、そっちは違う、だった。


この街へ来たのは二度目だった。


最初の滞在の後、俺たちはミソサザイで一度帰港した。


灯台の当番を引き継ぎ直し、溜まった修理の依頼を片づけ、村とロスカの間を往復するうちに、夏が終わった。


秋の入り口に、俺は二十歳になった。


年齢の欄が一つ増えても、返す金は同じ勢いでは減らなかった。


夏の夜、灯台でエルナを待ったことがあった。


ロスカから戻る荷車が遅れ、俺は夕食の包みを二つ並べていた。


父が交代の刻限に来て、食べたのかと聞いた。


まだ、と答えると、自分の分を食べればよいと言われた。


俺は一緒に食べたいのだと説明した。


「じゃあ、そう書いておけ。腹を空かせて怒るために待つなよ」


父は包みを指で押し、油が染みたところを下へ向けた。


俺は否定したが、半刻後には確かに不機嫌になりかけた。


帰ってきたエルナは、途中で荷車の輪が緩んだことを説明する前に、水を飲ませて、と言った。


俺は器を渡し、靴を脱ぐ場所を空けた。


食事は冷めていた。


それでも、窓の下で二人で食べると、俺が一人で待っていたときに想像したほど悪い夜ではなかった。


彼女は父の言ったことを聞いて笑い、次は先に一つ食べて、と言った。


夏のあいだには、そういう小さな相談もあった。


エルナの修復の仕事と、俺の港の部材照会を合わせ、もう一度二人で渡ったのは秋だった。


サーヴァはその間にも荷を運び、俺たちのために船を止めてはいない。


今回の帰港便までは三週間。


前より手際よく荷をほどけたことを、俺は密かに成長へ数えていた。


宿の女主人は、朝から魚の汁を煮ていた。


大きな鍋の中で骨と白い肉が揺れ、煮崩れた玉葱が底へ沈んでいる。


湯気に顔を近づけると、塩気と脂の匂いがした。


最初に食べたときは朝から重いと思ったが、今ではパンだけの日のほうが頼りなく感じる。


人間の郷愁は、胃袋の習慣によって簡単に新規契約を結ぶらしい。


エルナは既に卓についていた。


髪の片側が跳ね、爪の際に薄い糊が残っている。


昨夜、寝る前に一つだけ確かめると言った仕事が、一つで終わらなかった証拠だった。


「その手で、パンを取らないほうがいいよ」


「洗ったよ」


「指のところに、糊」


エルナは爪を見て、布で擦った。


「乾いてる」


「乾いたら、パンの材料になる?」


「ならない。お皿を取って」


俺は汁を受け取った。


昨日の受理番号を頭の中で並べ直していたせいで、眠ったと思ったら朝だった。


番号は食事の材料にならないのに、考えると腹だけは減る。


向かいの席に、新しい男が座った。


背は高かったが、身体を小さく折る癖があった。


布で包んだ紙を卓へ置き、器を受け取ってもすぐには食べない。


左耳の下に、髭の生えない細い傷がある。


その顔に見覚えがあった。


海の戻った日、帰還者の荷物を運ぶ列の中で、古い鍋の取っ手を両手で抱えていた男だ。


俺がその名を思い出すより先に、彼が顔を上げた。


「ノアだね」


「グレンさん」


名前が出て、少しほっとした。


人を覚えていることを、記録師見習いだった頃より意識して確かめるようになっていた。


「来られたんですね」


「沿岸便で。昨夜、荷を降ろした」


彼は紙を見た。


「ここなら、これを読める人がいると聞いた」


布の中から出てきたのは、一通の通知だった。


死んだものとして扱う、と書かれていた。


俺は顔を上げた。


グレンは、俺が驚くのを待っていたわけではなく、汁が冷めないうちに食べようとしていた。


匙が器の縁へ当たり、小さく鳴った。


紙の決定日は古かった。


受領を示す印だけが新しい。


エルナが手を伸ばす前に、読んでよいか聞いた。


男は頷き、少し場所を空けた。


「いつ届いたんですか」


「向こうの湾へ、半月ほど前。古い便を仕分けたときに出てきたらしい」


「事故の頃の知らせ?」


「違う。俺が何年も帰らなかったから、死んだことになった」


グレンは口を拭いた。


「家へ帰るつもりで来た。でも、ここへ先に行けと港で言われた。家は、もう俺のものじゃないらしい」


共同台所では鍋の蓋を巡る議論がまだ続いていた。


失くしたものを元へ戻してほしい人間が、同じ朝に何人もいる。


その望みの大きさも、元へ戻せる範囲も、同じではなかった。


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