今の名前で受け取る
レクの件の判断が出たのは、俺たちの乗ってきた船の修繕が終わる少し前だった。
立会所へ呼ばれるまでに、彼は四つの錠前を直し、二つの新しい仕事を断り、試作箱の蓋をもう一度外した。
俺たちは港の札の写しを請け、宿代の一部を稼いだ。
エルナは水に傷んだ記録を乾かす工房を見つけ、夕食のたびに紙の話をした。
俺は最初の二晩、ちゃんと聞いているふりをした。
三晩目に、昨日と同じところで頷いている、と言われた。
彼女は怒っていた。
俺は謝り、それから本当に分からない部分を聞いた。
説明が長くなった。
好意のある相手の仕事を知ることには、眠くても聞くという側面がある。
判断書は短いものではなかった。
保全費は、保全庫と引受家の間で成立した契約に基づく。
成年後の本人が同意して負担した範囲を除き、受理番号が同じというだけで自動的に本人の個人債務へ移すことはできない。
医療職への就業を、本人が現在引き受けた工房の借入れの条件として後から加えることもできない。
一方で、レク自身が署名した借入れと、実際に受け取った道具の支払いは残った。
教育費の全てが一言で消えたわけではない。
成年後に本人が頼んだ講習の費用は別に調べ、幼い頃から家が選んだ進路のための費用と分ける。
その調べが終わるまで、工房の営業は続けられる。
俺は結果を聞きながら、勝った、と言いたくなった。
隣のレクは、唇を一度舐めただけだった。
「明日、店を開けていいんですね」
彼が確認すると、審理した男は頷いた。
「現在の契約に従って。今の名前で」
ネルダは俯いていた。
ヴェスは数字を別の紙へ写している。
引受家には負担が残る。
それは、この子を医者にする予定だったから、という理由だけで別人へ押しつけられなくなった負担だった。
廊下で、ネルダはレクへ声をかけた。
「食事に来ることまで、裁かれていないわ」
レクはすぐには返事をしなかった。
「今週は忙しい」
「そう」
「来週なら、昼に。長くは居られないけど」
彼女は頷いた。
元通りになったわけではない。
その昼がうまくいく保証もない。
ただ、借りを返す義務とは違う場所で、次に会う話ができた。
*
ディオルへの協力申請は、出さなかった。
俺は用紙を返し、外国からの個人照会として待つと伝えた。
彼は理由を聞かなかった。
俺も立派な演説をしなかった。
実のところ、早い順番を失うのは惜しかったし、レクの件の後でこの選択をすれば、自分が多少よく見えることも知っていた。
それでも、使える体験の一覧を急いで渡すことはしたくなかった。
「普通の照会は、どこまで進んでいますか」
俺が聞くと、ディオルは索引を開いた。
そこには、二つの異なる書き方の番号があった。
一つは出生の日の欄と対応するもの。
もう一つは、その枝として別の簿冊を指すものだった。
刻み方も、参照する棚の系列も違う。
「二度、同じことをしたんですか」
「この索引だけでは分かりません。二つの手続を示すのか、転記先を分けたのか、別の受信を後で一件へまとめたのか。現物の確認が要ります」
「ここにない?」
「一方は別港の古い保管先です。こちらに残るのも控えの番号だけで、信号の中身ではありません」
俺は紙へ写した。
答えは増えず、確かめる場所が増えた。
それでも、何もないところを同じ質問で叩くのとは違っていた。
ディオルは、レクの判断書の控えを別の束へ入れた。
「すべての案件に同じ結論が出るわけではありません」
「分かっています」
「同じ申立てを受け付けない理由にも、しません」
彼は顔を上げずにそう言った。
俺はその横顔を見た。
最初に番号を読んだ人間も、全く同じ位置へ留まっているとは限らない。
変わったことを一度言わせて終わるより、その後何をするかを見なければならなかった。
*
船を見に行くと、ミソサザイの船底は乾き、新しい塗りの匂いがした。
サーヴァは道具を片づけながら、俺たちへ帰りの荷の予定を見せた。
エルナの名の横に、まだ印はなかった。
「こっちで仕事を頼まれてる」
彼女は言った。
「すぐ決めなくていい?」
俺は反射的に、帰りは一緒だろう、と口にしかけた。
彼女は俺と同じ理由でここへ来たのではない。
紙屋へ行きたいと言っていた。
水に傷んだ記録の話を、眠い俺へ根気よく説明した。
その仕事が、今の彼女の前に置かれている。
「いつまでに決めればいい?」
俺はサーヴァへ聞いた。
「積荷を決める前日。それより遅いなら、食料と寝場所の分は払ってもらう」
現実的な期限が置かれると、話は愛情の試験でなくなった。
俺たちは頷き、宿へ戻る道を歩いた。
角を曲がると、レクの工房の戸が開いていた。
入口の錠前を、粉のついた手で彼が試していた。
三度、閉めて開ける。
四度目に引っかかり、顔をしかめた。
「まだ駄目?」
俺が聞くと、彼は首を振った。
「前よりはいい。まだ売らない」
エルナが笑った。
彼は卓から小さな紙を取り、俺へ渡した。
作業代の控えだった。
名前の欄には、ノア・アルヴェイン、と書かれている。
その隣に、留め具の加工作業、とあった。
外部体験群でも、役立つ知識でもなかった。
ここで俺がした、一つの仕事だった。
俺はそれを折り、財布と別の場所へしまった。
海の向こうから持ってきた問いには、まだ答えがない。
それでも、今日受け取った紙を、将来の何かのためだけではなく、大事にしたいと思った。
工房の前を、粉を運ぶ女が通った。
レクは彼女を呼び止め、試作箱を使ってみてくれと言った。
女は買わないよ、と先に答えた。
いいよ、と彼は返し、粉のついた手のままで頼む、と付け加えた。
俺たちは道を空けた。
知らない街で、明日の仕事が始まっていた。




