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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
まだ生まれない名
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できないからではなく

審理の朝、俺は襟を三度直した。


エルナがそれを見て、もう十分だと言った。


彼女自身も髪を結び直していたから、十分というのは美しさの評価ではなく、これ以上いじると遅れるという意味だった。


レクは工房の上着で来た。


「それでいいの?」


聞くと、彼は袖を見下ろした。


「洗った」


「そうじゃなくて」


「仕事を続けたいって話をしに行くのに、仕事の服じゃ駄目か」


俺は口を閉じた。


実際のところ、見た目で損をしてほしくなかった。


だが、その心配をする俺は、彼の働く姿を隠したほうがよいと言っているようにも見えた。


立会所の廊下には、小さな鉢に草が植わっていた。


葉の先が黄色くなり、水をやりすぎたのか足りないのか分からない。


俺はそれを見ていた。


入室を待つ時間に、見つめても失礼にならないものが必要だった。


ネルダはヴェスと来た。


レクを見ると何か言いかけたが、やめた。


部屋の卓は長く、窓は高かった。


海からの光が天井へ当たり、座った者の顔を間接に照らしている。


審理する二人のうち、年長の男は指に布を巻いていた。


書きすぎて傷めたらしい。


俺は勝手に、この人も人間だと思って安心した。


指を傷める人間なら公正だという保証は、どこにもないのだが。


最初に争点が確認された。


工房を借りるためにレク自身が負った金。


引受家が保全庫へ払った金。


医療職を継がせるために用意した教育の費用。


ヴェスは一つの表で説明したが、ソルダは別々の紙へ数字を移してあった。


「同じ人に関係する支出であることと、同じ契約の支出であることは分けます」


彼女は静かに言った。


ディオルも証人として来ていた。


庫の職員が作った古い分類表を読み、医療技能が見込まれたとする判定の範囲を説明した。


「その判定は、今のレク氏が患者を診療できるという資格認定でしたか」


「違います。受理された体験に含まれる要素の判定です」


「当人の成長後の意思を確認した記録は」


ディオルは頁をめくった。


「進路指導の記載があります。ただし、本人の署名とは別です」


俺は胸の奥が熱くなった。


うまく進んでいる。


次に自分が説明すれば、もっとはっきりする。


出番が来ると、俺は用意した紙を出した。


レクが現在の身体で医療の仕事を身につけていないこと。


過去の知識が不完全であること。


前の世界の道具をこの街で再現できないこと。


「つまり、この人には期待された能力がないんです」


言ってから、レクがこちらを見た。


責める顔ではなかった。


そのため俺は、なおさら自分が何を言ったか聞き直さなければならなかった。


ソルダが筆を置いた。


「能力がない場合だけ、進路を変えてよいという申立てではありません」


静かな声が、卓の中央へ落ちた。


俺は用意した紙を握った。


役に立たないから解放してくれ。


それでは、役に立つ人は閉じ込めてもよいことになる。


俺は、彼を助けるつもりで、彼に課せられた物差しの短い側へ立たせていた。


「訂正します」


声が掠れた。


「僕が言えるのは、体験を持つことだけで今の身体の技能は決まらない、ということです。でも、それ以前に、この人が何の仕事をするかを、僕ができるかできないかで決める話じゃなかった」


レクは視線を下げた。


頷いてもくれなかった。


俺の訂正を慰めるために、彼が何かする必要はない。


ネルダが、膝に置いた手を重ね直した。


「では、私たちがこの子に使ったものは、何だったのでしょう」


その問いは、審理のためだけの言葉ではなかった。


レクが顔を上げた。


「育ててくれたんだと思う」


彼は言った。


「でも、それなら育てたことにしてほしい。まだ働いていない医者を買ったことにしないでほしい」


ネルダは息を吸い、長く吐いた。


誰もすぐには言葉を継がなかった。


外で荷車が通り、窓の硝子がかすかに震えた。


部屋の中がどれほど静かでも、街の仕事は続いていた。



*



その日に全ての判断は出なかった。


工房の道具の引上げは、審理が済むまで止められた。


現在の借入れについては既定の支払いを続ける。


保全費と教育費については、引受家の契約と本人の債務を分けるため、追加の原本を確認することになった。


廊下へ出ると、俺の足は思ったより疲れていた。


座って話していただけなのに、山を歩いた後のようだった。


「さっきは、ごめん」


レクへ言うと、彼は窓の外を見たまま答えた。


「医者になれない人間だって、皆の前で言われるのは慣れてる」


俺は黙った。


「慣れてても、好きじゃない」


「うん」


彼は俺を見た。


「工房へ戻る。昼を食べる。あんたも来るなら、途中でパンを買って」


俺は頷いた。


許されたと理解するのは早かった。


それでも、次に一緒に何をするかは渡してもらえた。


俺はパンを選び、二人分より少し多い量を買った。


多く買えば失言が軽くなるわけではない。


そのことは会計の直前に思い出し、最後の一個だけ戻した。


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