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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
船を出すまでの春
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春の風を待てない

返信を送った朝、俺はいつもより早く起きた。


早く起きたからといって、準備が早く終わるわけではなかった。


紙を一枚忘れ、家へ戻り、母から朝食を持たされ、灯台へ着いたときにはエルナが先に机を片づけていた。


「寝てない顔」


「寝たよ」


「長さは?」


「その質問は公平じゃない」


エルナは俺の持ってきた包みを見て、先に食べて、と言った。俺は従った。


最近、重大な出来事の前には、食べるか寝るかを他人から確認される。大人としての信用は、思ったより細かなところで失われるものらしかった。


送る文は、最初に書いたものの半分以下になっていた。


アルヴェインの岸にいること。帰還者全員の帳面は送らないこと。


今回は本人が認めたセラとハルの名、セラの保守員としての番号だけを照会すること。


そして、外部受理について自分の分を調べたいという、ノア・アルヴェインの申出。


エルナは、自分の工房から別の問い合わせを添えた。独立した紙の控えを持って訪ねる場合、誰に会えばよいか。


入港の手続と、書類を預けず閲覧する方法があるか。


最後に船と帰期について聞く。


俺の出生が謎だという長い説明は、ほとんど削った。重要なことを短くすると、重要でない人間になったような気がして落ち着かなかった。


セラが古い保守図と、現物の線を指で照らしていた。


父は扉のそばに立ち、エルナは使用前の記録を取る。誰かが俺を監視するためだけに集まったのではない。


それぞれが、自分の確認する箇所を持っていた。


新しく書いた三つの日付欄が、紙の上に並んでいる。


案件を受け付けた日。信号が実際に着いた日。


文字を紙へ移した日。


レムの荷物を止めた俺には、それが格好のよい整理術に見えなくなっていた。


別々の日を一つに押し込めたところで、人が待っている時間まで短くなるわけではない。


「ここまでなら、出生の線へは触れない」


セラが言った。


「向こうが送り始めても、この止め目は閉じたまま。返事が来ないからって、足さないで」


「分かってる」


「もう一度、口で言って」


俺は少し恥ずかしくなったが、操作の順を読み上げた。


封片の小箱を開いた。


雨を待った職人の時間は、見た目には静かな石の中にあった。俺は内容を味わわず、検査された外側の刻みを送信部へ合わせる。


流れが繋がると、石にあった淡い筋がわずかに明るくなった。


帯へ刻んだ短い字の並びが、順に黒ずんだ。


一つ目の行が出るまでが長かった。待つ時間を誰かから買って、今度は自分が待っている。


俺はその皮肉を面白がる余裕を失い、父の指が止め具に添えられているのを見ていた。


二行目。


セラが頷いた。


最後の字のあと、俺は流れを止めた。封片の中の乳白色の筋が消え、向こうの台が透けて見えた。


石の形は残っていたが、もう同じ時間はない。


成功した、と誰かが言う前に、エルナが終えた時刻を書いた。


俺は自分の頭の中を確かめるようなことをしなかった。減ったのは、俺が失わずに済んだ記憶とは別の場所にあった人生の一部だ。


自分に痛みがなかったから、何も払っていないことにはならない。


「終わり」


セラが言った。


肩の力が抜けた途端、朝食の最後の一口を飲み込んでいなかったことを思い出した。


大事な旅の始まりにしては、口の中が乾いていた。




*




ジナが灯台へ来たのは、その翌日だった。


村の屋根や戸を直す仕事をしている女で、夜の当番なら家の用と分けられるという理由で手を挙げた。目の前で光る古い環には、それほど興味がないらしい。


「触らなければいいんだね」


「こっちは。灯器のほうは、油を見て――」


「油は分かる。どこから先を触らないのか、線を付けて」


俺は説明を止めた。


自分が覚えるときは分かったつもりになっていた区別が、誰かへ渡すと急に曖昧になる。古いものと新しいもの、今動かすものと、動かさず様子を見るもの。


それを俺の勘で分けたまま、人に留守番を頼もうとしていた。


俺たちは色の違う紐を使い、触る場所を分けた。


記憶を使う調査は、俺が戻るまで予定しない。文字が届いたらそのまま写し、読み方が分からなければ形を写す。


灯器の故障で油が漏れたら、合図より先に火を扱う。


「私が読めない字が来ても、手当は同じ?」


「同じです」


「ならいい」


ジナは頷き、用意した控えへ自分の名を書いた。


俺は自分の役目が簡単な仕事に見えないよう、難しい箇所をもう一つ説明しかけた。ジナはその前に窓の掛金を指した。


「こっち、遊びが大きいよ」


毎日触っているのに、俺は気づいていなかった。




*




試験の日は、朝のうちは穏やかだった。


改造した舟へ砂袋を積み、実際の荷に近い重さを置いた。サーヴァが舵を持ち、トマと俺が乗る。


ユストはミソサザイで少し離れてついてくる。岸にはエドと父、エルナがいた。


昨日確かめた浅瀬の標識が、今日も同じ場所に浮いていた。


そのように見えた。


「砂袋を動かすとき、勝手に立つな」


サーヴァが言った。


「知ってます」


「知ってても言う。私にも言え」


俺は頷いた。


新しい舟の板は、足の下で乾いた音を立てた。削った木の匂いと、継ぎ目へ入れたものの匂いがまだ強い。


俺が拾った釘がどこへ使われたのかは分からない。それでも乗った瞬間、自分のした小さな作業が全部、底のどこかに集まっている気がした。


岸を離れた。


最初の曲がりはうまくいった。


トマが俺を見て笑った。俺も笑い返した。


二人で何かに乗って運ぶというだけのことが、子供の頃の成功に似た味を持っている。そのときの記憶は残っているものもあり、もう戻らないものもあった。


俺は今日は今日だと思い、すぐに今日は成功するとも思った。


その二つは、別のことだった。


岬を回る手前で風が増えた。


水面に細い皺が広がり、岸の草が一斉に同じ側を向いた。サーヴァは帆を減らすよう言い、俺とトマは練習した通りに手を動かした。


ここまでは間違えなかった。


標識が、舟の正面から少し右へ流れた。


「あれ、動いてる」


トマが言った。


俺は標識の向こうに見える石の並びを確かめた。旧道の石積みだ。


岸から何度も見た。近くに浅いところがあるのも知っている。


「内側なら戻れる。あの石の――」


「そのまま、待て」


サーヴァの声と重なった。


俺はトマへ櫂を入れる位置を指した。説明を続けたほうが役に立つと思った。


地形については俺のほうが知っている。彼女が見ていない部分を伝えれば、今よりよい道を選べる。


トマがどちらを見るか迷った。


櫂の先が水へ入り、舟が少し横を向いた。横から来た波が底を叩き、足元の砂袋が一つずれた。


「櫂を上げろ!」


サーヴァが叫んだ。


今度は俺も黙った。


舟が水の斜面を下りた。腹の底が浮き、次の瞬間、硬いものを擦る長い音がした。


木の音なのに歯の根へ響いた。


トマが膝をついた。


俺は腕を伸ばし、彼の袖を掴んだ。立ち上がるな、と頭のどこかで言われていたので、尻を板へ押しつけたまま引いた。


濡れた袖が指から滑りかけ、皮膚へ爪が当たった。


舟の右側で、縁の板が割れた。


水が入った。


「桶!」


サーヴァが言った。


トマが桶を取った。俺は砂袋を戻そうとして、サーヴァに止められた。


「今は動かすな。水を出せ。そっちの小さいの」


小桶を取る手が震えた。底を擦った木片が浮き、桶の縁へ当たった。


俺は水を掬い、外へ捨てた。思ったより少ししか減らない。


岸は近かった。


近いことが、何の助けにもならなかった。


サーヴァが帆を落とし、舟をこれ以上横へ向けないよう舵を押さえた。向こうでミソサザイが回り、ユストがこちらの様子を見ている。


旗を出せる状態ではなかった。無事で待てという合図を掲げる場面でもない。


サーヴァが腕で決めていた合図を送り、ユストは近づく側を変えた。すぐに縄が飛んできたわけではなかった。


彼も水と、こちらの傾きと、足元に見えない石を見る時間が要った。


その時間が長かった。


俺の頭に、帰路を支える刻線が浮かんだ。


何かを使えば、舟を少しだけ持たせられるかもしれない。あの石までの距離。


灯台へ帰った道。エルナと歩いた、まだ失っていない夕方。


方法の前に、差し出すものを数えていた。


またそれで、今ここから一人だけ立派に抜け出せるつもりか。


トマの桶が俺の膝に当たった。


「こっち、溜まってる」


俺は水を掬った。


サーヴァが縄を受けた。ユストの舟がゆっくり張りを作る。


引かれた瞬間にすべてが解決するのではなく、こちらの底が石へ噛んだまま別の場所を壊さないよう、二人が何度も声を掛け合った。


俺の仕事は水を出すことだった。


あまり役に立っていない気がするくらい、同じ動作を続けた。


舟がわずかに動いた。


長い擦れる音が、今度は短く切れた。底が離れ、舟が水へ戻る。


その動きで俺は倒れかけ、トマが肩を支えた。


片方の櫂は、少し遠くを流れていった。


誰も追わなかった。




*




岸へ上がると、靴の中の水が急に冷たくなった。


ミアがトマの膝を見た。擦り傷と打ち身があり、歩けるが腫れるだろうと言った。


俺の手の甲も切れていたが、見せる順を後にした。そうすることで何か返せると思ったのかもしれない。


「手も」


姉は見抜いたように言った。


父とエドが舟を引き上げていた。水を抜くたび、底の中に残った砂が広がった。


役に立たなかった砂袋を見て、俺は腹が立ちかけた。役割を果たしていたのは袋のほうだった。


サーヴァが俺の前へ来た。


「次、同じことをしたら降ろす」


「ごめん」


「謝ったから乗れるとは言ってない」


俺は口を閉じた。


彼女の頬にも細い傷があった。さっき縄を受けたときだろうか。


どの瞬間か、俺は見ていない。


「地形を知ってるなら、出る前に言う。走りながら直す必要が出たら、私へ言う。二人へ別々に指図するな」


「分かった」


「何が?」


俺は答えた。言葉にしようとすると、ひどく単純なことだった。


サーヴァは最後まで聞き、踵を返した。慰める言葉はなかった。


エルナが近づいてきた。


俺は、彼女の前ではもう少しよい顔でいたかった。手の傷より、そのことのほうが強く痛んだ。


「無事?」


「うん」


彼女は俺の袖に触れた。まだ水が落ちていた。


「帰ってきてよかった」


俺はその言葉を、今日の判断が許されたことに使いたくなった。


エルナは俺の手がひどく冷たいことに気づき、乾いた布を取ってきた。俺の何が悪かったかを、そこで彼女が代わりに説明することはなかった。

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