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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
灯を消す者、帰る者
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閉められた門

夕方、エルナは宿へ帰ってこなかった。


飯が冷める前に迎えに行ったのは、俺が優しい夫だから半分、もう半分は、待っていた証拠を温かいうちに見せたかったからだ。食堂の女は、椀の上へ皿を伏せておくから急ぐなと言った。俺は優しい夫の割合を少し減らされた気分で外へ出た。


東岸の小屋の前には、荷車が横向きに止まっていた。


車輪に楔が入り、戸へ届く道を塞いでいる。エルナは車の反対側にいた。窓を開け、こちらを見下ろしていた。


「門を閉められた」


「何をしたの」


「帰った船と、帰ったことにする船を数えた」


窓から古い帳面が一冊出た。


「受けて」


俺は両手で受け取った。見た目より重く、胸へ当てると埃が鼻へ入った。


「それは持出しではない」


後ろから声がした。


昼に塔で見た見回りだった。もう一人が荷車の横へ回り、俺の戻る道を塞いだ。


「借りる許しはもらった」


エルナが窓から言った。


「一つ前の当番には。今は出せない」


「今朝の扱いを、見せたくなくなっただけでしょう」


「あなたには、明朝塔で話を聞く」


男は俺から帳面を取ろうとした。


俺は半歩引いた。引いた足が、荷車の引き棒に当たった。背中を向ければ、帳面は守れても、窓にいるエルナを残すことになる。


この角度は嫌だ、と身体が先に思った。


俺は男を見た。


「妻を出してください」


「帳面を戻せば」


「中に人がいるのに、外から塞ぐな」


声が大きくなった。


港の何人かが振り返った。男はそれを見て、少しだけ唇を噛んだ。人を殴ることに慣れている顔ではなかった。命じられた範囲を越えず、上手に物事を片づけたい顔だった。


そこへエルナが、窓枠へ片足を出した。


「待って」


俺は彼女を見上げた。


「ちゃんと受けて」


「帳面が」


「荷台」


言われたとおり帳面を置いた。彼女は鞄を先に落とし、窓の桟へ両手を掛けた。裾が釘に引っかかった。俺の胃が痛くなるほどゆっくり、身体が外へ移った。


見回りが手を伸ばした。


俺はその腕を払った。拳は作らなかったが、強く当たった。男が声を上げる。エルナの足が俺の肩へ触れ、次の瞬間、彼女の体重が胸へ落ちた。


足が半歩滑った。


背を荷台へぶつけて止まった。エルナの肘が顎へ当たり、俺は舌の端を噛んだ。綺麗に受け止めて見つめ合うには、互いに荷物が多すぎた。


「降ろして」


彼女の声で膝を曲げた。


着地した途端、もう一人が帳面を取った。


俺は追いかけようとしたが、エルナが袖を引いた。


「行くよ」


「あれを」


「いい。ほしい所は読んだ」


彼女は鞄を拾い、港の方へ歩き出した。俺はその横へ付いた。見回りが呼び止めたが、周囲から人が寄ってきていた。窓から女を出すまで門を開けなかったことについて、漁師の一人がかなり大きな声で意見を述べ始めた。


角を曲がってから、エルナは足を止めた。


壁へ背をつけ、片手を胸へ当てた。俺も息が上がっていた。顎がじんじんした。


「痛かった?」


彼女が聞いた。


「結構」


「ごめん」


「助け方の相談を、もう少し早く」


「私もそう思う」


エルナはしゃがみ、裾の裂け目を見た。靴に乾いた白い粉が付いていた。今朝、俺が濡らした靴だった。


「帰着の新しい印、空の台船にも押してた」


彼女は言った。


「札を先に運ばせて、持ち主が後で帰る。貨物の控えでは、それで済むことがある。でも、枝を閉じる時に同じことをしたら、人が残る」


「わざと?」


「ラウゼンの指示は、残っている船を港の責任で引き受ける、だった。実際に家へ帰ったこととは違う。それを、主塔では同じ閉鎖に使ってる」


彼女の声は震えていた。怖さだけではなかった。もっと読みたかったのに途中で閉められた怒りも、俺には分かった。


「紙を取り戻す?」


俺が聞いた。


エルナは首を振った。


「人を数える。船が着く所にいる」


立ち上がろうとした彼女へ、俺は手を出した。


今度はうまく支えられた。彼女の指が、俺の掌へ少し長く残った。


宿へ帰ると、椀は温かかった。


食堂の女は、俺の顎とエルナの裾を見て何も聞かなかった。代わりにパンを二つ増やした。俺はその夜、彼女のつけた宿代の丸め方について、初めて文句を言わなかった。


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