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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
灯を消す者、帰る者
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酸い実の籠

イサナの部屋には、黄色い実の皮が積んであった。


椅子の肘に小刀が置かれ、床に落ちた皮だけは足で寄せてある。俺が拾おうとすると、彼女はそれは食べないと言った。


「そういうつもりじゃ」


「若い男は量を食うからね」


窓際の籠を指したので、一つ取った。爪を立てると、皮から細かい汁が散った。匂いが鼻を抜ける。口へ入れた瞬間、顎の奥が痛くなった。


イサナは俺の顔を見て笑った。


「うまいだろ」


「目が覚めます」


「その答え、嫌いだよ」


彼女の声には張りがあった。けれど、皮を剥く手はときどき止まった。小刀を持っているのを忘れたように机を見て、それから、何をしようとしていたかを思い出して刃を動かす。


俺は七人の話をした。


彼女の指が止まった。


「昨日の夕方、戻った船は一つだった」


「こっちの港と同じ数です」


「二つの帰着は、私を通ってない」


膝の布を払って立ち上がる時、椅子に手をついた。俺が支えようとすると、先に目で止められた。そのくせ、扉の前で外套を取ってくれと言う。何を頼まれ、何を勝手にするのか、その境目が人によって違う。俺は外套を肩へ掛け、襟の内側の髪をそっと引き出した。


照合室へ入ると、油と熱い鉄の匂いがした。


石壁の内側に、幅の違う金属の輪が三つ重ねてある。一番古い輪はところどころ丸く擦れており、後から添えた細い輪には、細かな刻線が密に走っていた。最初の仕組みが人の帰着を一つずつ確かめるものだったことは、もう分かっている。問題は、その上へ何を足し、何を閉じずに残したかだった。


若い当番が俺たちを見ると、立ち上がった。


「先生。今朝は下で待つようにと」


「誰の先生だい」


「僕のです」


「なら、そこを見せて」


男は引かなかった。腰の鍵へ手を触れ、窓の方を見た。外に見回りが一人立っていた。


イサナは息を吐いた。


「お前、ここへ来て最初に何を取り違えた」


男の耳が赤くなった。


「その話は」


「答えな」


「出た時の印と、戻った時の印です」


「今日は?」


男は机を見た。


俺はその視線を追った。表向きの帰着板は二本とも閉じていたが、裏に回る細い線が、主輪の内側へ入っている。元の枝から返ってきたものを受けた形ではない。中央が自分の名で、枝の返事を代わりに書いていた。


手が勝手に道具袋へ近づいた。


まだ触るな、と自分へ言った。触ればすぐ外せる位置だった。簡単に直る物を見ると、人間は大変な事情より先に、その簡単さへ飛びつきたくなる。


「この二本、船からの帰着じゃないですね」


男は返事をしなかった。


イサナが机へ近づいた。


「枝を締めたあとの代行印だ。まだ船があるうちに、入れたんだね」


男は小さくうなずいた。


塔の外で足音が止まった。


「暫定の扱いです」


ラウゼンが言った。


外套を片腕に掛け、朝の風で髪を乱していた。塔へ入る前に港を歩いたらしく、長靴の縁に魚の鱗が一枚付いている。磨いた靴で机の向こうから命じるだけの男なら、俺はもっと気楽に嫌えただろう。


「その二隻は外の停泊所にいます。こちらへ来る経路は別に取れる」


「取れる道と、帰ってきた人は違います」


早口になりかけたので、俺は一度息を吸った。


「港の家族へ、帰ったと伝わっています」


ラウゼンは若い当番を見た。男はさらに顔を赤くした。


「伝え方を直します」


「板も戻してください」


「中央への締結が済めば、個別の板は使わない」


「まだ済んでない」


イサナの声が、俺の声に重なった。


彼女はその二本を抜き、自分の前へ置いた。若い男が息を呑んだ。見回りが扉を半分開けたが、ラウゼンが手を上げて止めた。


「あなたを休ませるためでもある」


ラウゼンが言った。


イサナは彼を見なかった。


「私を連れて外へ出て、そう言いな」


照合室の空気が変わった。丸い窓の端から風が入り、机の紙が一枚めくれた。誰も押さえなかった。


ラウゼンは外套を椅子へ掛けた。


「ノア。話がある」


俺は彼の顔を見た。怒っていると思ったが、疲れの方が強かった。だからといって、今朝の七人をその疲れへ含めてしまう気にはなれなかった。


「ここで聞きます」


「君の仕事の話だ」


頭の中に、嫌な形で金額が浮かんだ。


この期に及んで、俺はまだ高い報酬に反応するらしい。自分でも少し安心した。聖人になっている場合ではない。家へ帰れば、妻の乾燥棚と俺の作業台を、同じ狭い部屋へ収めなければならないのだ。


イサナは俺の背を軽く叩いた。


「行っといで。こっちは私が見てる」


小刀を持っていない方の手だった。その指先に、黄色い実の汁の匂いがした。


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