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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
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冬の家へ戻る

村へ一度戻ると、借家は思ったより冷えていた。


二人で戸を開けたのに、家の方はすぐに俺たちを迎える気にならなかったらしい。火を起こしても壁の冷たさが残り、寝台の布へ入れた手が、いくらか後悔して戻ってきた。


俺たちは荷を解く前に、母の家へ行った。


温かい物を食べさせてもらうためだった。


自立した暮らしには、時々、親の台所が必要になる。そういう理論を用意する前に、母は俺たちへ椀を出した。


「食べたら、薪を一本持っていきなさい」


一本では足りないと思ったが、父が後ろで三本へ増やしてくれた。


俺は黙って受け取った。


翌日から、村の仕事をした。


留守の間に溜まった補修は、どれも世界の運命に関係なかった。村長の窓、粉屋の荷台、灯台の油を置く棚の脚。だが直すと、人がすぐに使った。何年先の成果を待つ必要がないのは、気持ちがよかった。


灯台の戸を開けると、いつもの匂いがした。


油と塩、乾いた石、掃除に使った布。ジナは留守番の控えを渡し、俺の点検より先に、擦り減った刷毛の柄を見せた。


「これ、握りにくい」


「父さんは何も言わなかったけど」


「手の大きさが違う」


俺は柄を持ち直した。


仕事道具を人の身体へ合わせる。その当たり前の仕事で、北の競争に勝った。自分の灯台でも、毎回見なくてよいほど完成はしていなかった。


ジナの手の位置を聞き、少し削った。


彼女が握り、もう一度削ってくれと言った。


俺は削った。


夜は、二人の家へ帰った。


エルナはロイの家へ寄ってから戻ってくる日が多かった。俺が先なら火を起こし、彼女が先なら湯が沸いていた。二人とも遅い日は、どちらが何をしたかを数える余力がなく、残り物を温めた。


一度、彼女がどうしても仕事を切り上げられず、俺は鍋を火から下ろした。


声を掛けても返事がない。


もう一度呼ぶと、少し待って、と言った。


少しは、俺が椀を温め直して、パンを切って、切った端を二つ食べる時間だった。


「エルナ」


俺が呼ぶと、彼女は顔を上げた。


「今、薄い所が起きそうなの」


「僕の腹も、さっきから起きてる」


彼女は一瞬きょとんとして、それから吹き出した。


手に持っていた薄刃を布へ置き、紙の覆いをした。


「ごめん。食べよう」


食卓へ来た彼女は、まだ半分、紙の向こうにいた。


俺は拗ねかけたが、彼女が何を見つけたか話し始めると、聞いてしまった。古い航路帳の上書きの下に、実際に船へ渡していた目印の形が残っていたという。文字を読めない人にも、帰る岸を知らせるための形だった。


彼女はパンの皮を指で折り、その形を作った。


俺は、食べ物で説明するなと言おうとして、やめた。彼女の指の動きは、見ているだけで楽しかった。


仕事のまとめに自分の名を載せる話も、進んでいた。


今度の内容は、本人が公開を頼んだ道や道具に限った。誰かの人生を先に読んで、人が驚くところだけ持ち出すつもりはない。エルナは、名を出す前に確かめる手間も含めて引き受けた。


そのことで名を出したい欲が消えるはずもなく、刷った見本が来た晩には、彼女は机からなかなか離れなかった。


「見せて」


俺が言うと、彼女は一度だけ躊躇した。


それから、差し出した。


名前は、端へ小さく載っていた。


俺はそこを見た。


「もっと大きくてもよかったのに」


言うと、彼女は笑った。


「私も思った」


俺たちは同じ見本を二人で眺めた。


窓の外には雨が降っていた。小鉢の棚を移しておいたので、器へ水は掛からなかった。


春にまたレンネルへ行くまで、こうした夜が幾つもあった。


すべてが穏やかではなかった。疲れて返事が雑になる日も、俺が道具を食卓へ置いて怒られる日もあった。彼女が紙へ付けた糊を袖で拭き、俺がそれを見て、服を洗う方の身にもなれと言った日もあった。


言ったあと、俺も油の付いた手を外套で拭いていることを思い出した。


その日は、二人とも自分で洗った。


雪が薄くなる頃、春の切替の日が決まった。


ラウゼンからは、工事の人数と荷の量を知らせる物理の便が来た。俺たちも道具の数と到着日を返した。すべてを魔法の文字で送るほど、余裕がある仕事ではなかった。


今度は、終わったら二人で帰る日まで決めた。


道具をしまう夜、エルナは棚の小鉢を手に取り、裏の汚れを拭いた。


「留守番、お願い」


器へ言った。


「僕には?」


俺が聞くと、彼女は顔を向けた。


「荷を持って」


俺は荷を持った。


彼女は器を戻し、それから俺へ来て、襟の曲がった所を直した。


「帰ったら、今度こそ庇の隙間を塞ごう」


「まだ気になる?」


「風が来ると、あなたがすぐ家へ入ってくるから」


俺は笑い、彼女の額へ自分の額を当てた。


部屋の中は、出ていくのが惜しい温度だった。


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