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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
帰りたい岸を選ぶ
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高い給金の部屋

レンネルへ戻ると、俺は真っすぐ塔へ行った。


衣服が潮臭く、襟の内側に塩が白く浮いていた。洗ってからの方が見栄えはよかったが、今きれいな服へ替えると、外を回った時間まで隠す気がした。


ラウゼンは俺を上の部屋へ通した。


暖かかった。


窓は大きいのに、風が入らない。継ぎ目には厚い布が詰めてあり、暖を無駄にしない工夫が見えた。使う人がよく考えた部屋だった。


「帰れたか」


「帰りました。遅れて、荷を濡らして、予定より泊まり賃も使いました」


俺は答えた。


「それでも、一便は通りました」


「皆が、その費用を払えるか」


「一度に全便を置き換えるのは無理です。途中の灯りと、荷を乾かす小屋も要る」


俺は港の外を指した。


「でも、短い道しかないから誰も離れられない、というままにはしたくない」


ラウゼンは卓の角へ腰を預けた。


「外の岸へ行く数を減らしたのが、不満か」


「知らせる前に荷を受けた人がいます」


「知らせてから止めるまでに、我先に入る者が出る」


彼は言った。


「君が今会ってきた者だけではない。ここにも、あの便で冬を越す人間がいる」


声は荒くなかった。


俺は、倉で掬った粉を思い出した。


「だから、あの人たちは明日のことを聞けない?」


俺が言うと、ラウゼンは目を細めた。


今の一言で、彼を怒らせたのが分かった。


だが彼は、そのまま怒鳴らなかった。卓から離れ、一枚の図を広げた。


中央へ集まる線。


同じ印を使い、帰り先を一人の管理者がまとめて揃える形だった。古い一巡の線の上へ、いくつも継ぎ足しがされている。


「君なら、どこを外せるか分かるだろう」


ラウゼンは言った。


「イサナがいちいち直している差を減らす。口を整理し、使う岸を絞る。今のように、全部を彼女の中で繋がせ続けない」


「それでも、一人はここに要る」


俺は図を見た。


「当面は」


彼は俺を見た。


俺は、何を言われるか分かった。


分かったのに、黙っていた。


「君に、手伝ってもらいたい。外から直すだけではなく、ここへ入ってほしい」


窓の光が、図の上を白くした。


「僕を、次の管理者に?」


「すぐに全部ではない。身体が若く、線の意味が分かり、違う受け方の危険も知っている。村の塔を維持してきた経験もある」


二度何かを受けたから、特別に選ばれたのだとは言わなかった。


俺がここでしてきた仕事を、ちゃんと見ていた。


それが、嫌だった。


話が馬鹿げていれば、笑って帰れた。相手が俺を何も知らずに使おうとしているなら、腹を立てられた。


ラウゼンの出した給金は、俺の今の収入よりずっと高かった。


住む部屋もある。


エルナが紙を扱う場所を、この階の空き室に作れると、彼は言った。介護に使う費用も、今ほど苦しくないだろう。ロイの家へ払う分も、ずっと早く終わる。


聞きながら、俺は本当に計算していた。


「休日は」


口に出たのが、その質問だった。


ラウゼンはすぐには答えなかった。


「交替できる人間を育てる」


俺は図の先を見た。


「イサナにも、そう言った?」


沈黙が来た。


ラウゼンは俺から目を逸らさなかった。


「彼女の始めた時代から、私はここにいたわけではない」


「今はいる」


俺は言った。


「今、彼女を下ろせていない」


部屋の暖かさが、急に重く感じられた。


窓の外では、荷車が通る。舟が入り、人が走る。ここへいれば、あの動きの全部が自分を通る。必要とされる。自分がいなくなったら困ると、毎日、誰かが言う。


昔の俺なら、欲しかったと思う。


今の俺も、一瞬は欲しかった。


「僕は、ここへ住まない」


俺は言った。


「結婚したからか」


「それもあります。借りた家へ帰りたい。灯台の仕事も、道具を作る仕事も続けたい。あなたが提示した金は、欲しいです」


ラウゼンは少し顔を上げた。


「欲しいから、先に断っておきたい」


俺は図から手を離した。


彼は長く黙り、それから紙を戻した。


「外から手伝える範囲を、明日聞く」


それが、その日の終わりだった。


宿へ戻ると、エルナは俺の服を見て、先に脱いで洗えと言った。


俺は洗い場で塩を落とし、火の前へ座ってから話した。


給金の額を言うと、彼女の眉が少し上がった。


「それは、欲しくなるね」


「うん」


「私の部屋まで決めたんだ」


その言い方は冷たかった。


彼女は火を見たあと、俺へ顔を向けた。


「あなたが断った理由を、私のせいにしてない?」


「してない。僕も、帰りたい」


エルナは、俺の手を引いた。


指の間に洗い残した塩があった。濡れた布で拭い、それから、その布を自分の膝へ置いた。


「帰ろうね」


彼女は言った。


俺は頷いた。


火のそばへ、もう少し椅子を寄せた。


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