高い給金の部屋
レンネルへ戻ると、俺は真っすぐ塔へ行った。
衣服が潮臭く、襟の内側に塩が白く浮いていた。洗ってからの方が見栄えはよかったが、今きれいな服へ替えると、外を回った時間まで隠す気がした。
ラウゼンは俺を上の部屋へ通した。
暖かかった。
窓は大きいのに、風が入らない。継ぎ目には厚い布が詰めてあり、暖を無駄にしない工夫が見えた。使う人がよく考えた部屋だった。
「帰れたか」
「帰りました。遅れて、荷を濡らして、予定より泊まり賃も使いました」
俺は答えた。
「それでも、一便は通りました」
「皆が、その費用を払えるか」
「一度に全便を置き換えるのは無理です。途中の灯りと、荷を乾かす小屋も要る」
俺は港の外を指した。
「でも、短い道しかないから誰も離れられない、というままにはしたくない」
ラウゼンは卓の角へ腰を預けた。
「外の岸へ行く数を減らしたのが、不満か」
「知らせる前に荷を受けた人がいます」
「知らせてから止めるまでに、我先に入る者が出る」
彼は言った。
「君が今会ってきた者だけではない。ここにも、あの便で冬を越す人間がいる」
声は荒くなかった。
俺は、倉で掬った粉を思い出した。
「だから、あの人たちは明日のことを聞けない?」
俺が言うと、ラウゼンは目を細めた。
今の一言で、彼を怒らせたのが分かった。
だが彼は、そのまま怒鳴らなかった。卓から離れ、一枚の図を広げた。
中央へ集まる線。
同じ印を使い、帰り先を一人の管理者がまとめて揃える形だった。古い一巡の線の上へ、いくつも継ぎ足しがされている。
「君なら、どこを外せるか分かるだろう」
ラウゼンは言った。
「イサナがいちいち直している差を減らす。口を整理し、使う岸を絞る。今のように、全部を彼女の中で繋がせ続けない」
「それでも、一人はここに要る」
俺は図を見た。
「当面は」
彼は俺を見た。
俺は、何を言われるか分かった。
分かったのに、黙っていた。
「君に、手伝ってもらいたい。外から直すだけではなく、ここへ入ってほしい」
窓の光が、図の上を白くした。
「僕を、次の管理者に?」
「すぐに全部ではない。身体が若く、線の意味が分かり、違う受け方の危険も知っている。村の塔を維持してきた経験もある」
二度何かを受けたから、特別に選ばれたのだとは言わなかった。
俺がここでしてきた仕事を、ちゃんと見ていた。
それが、嫌だった。
話が馬鹿げていれば、笑って帰れた。相手が俺を何も知らずに使おうとしているなら、腹を立てられた。
ラウゼンの出した給金は、俺の今の収入よりずっと高かった。
住む部屋もある。
エルナが紙を扱う場所を、この階の空き室に作れると、彼は言った。介護に使う費用も、今ほど苦しくないだろう。ロイの家へ払う分も、ずっと早く終わる。
聞きながら、俺は本当に計算していた。
「休日は」
口に出たのが、その質問だった。
ラウゼンはすぐには答えなかった。
「交替できる人間を育てる」
俺は図の先を見た。
「イサナにも、そう言った?」
沈黙が来た。
ラウゼンは俺から目を逸らさなかった。
「彼女の始めた時代から、私はここにいたわけではない」
「今はいる」
俺は言った。
「今、彼女を下ろせていない」
部屋の暖かさが、急に重く感じられた。
窓の外では、荷車が通る。舟が入り、人が走る。ここへいれば、あの動きの全部が自分を通る。必要とされる。自分がいなくなったら困ると、毎日、誰かが言う。
昔の俺なら、欲しかったと思う。
今の俺も、一瞬は欲しかった。
「僕は、ここへ住まない」
俺は言った。
「結婚したからか」
「それもあります。借りた家へ帰りたい。灯台の仕事も、道具を作る仕事も続けたい。あなたが提示した金は、欲しいです」
ラウゼンは少し顔を上げた。
「欲しいから、先に断っておきたい」
俺は図から手を離した。
彼は長く黙り、それから紙を戻した。
「外から手伝える範囲を、明日聞く」
それが、その日の終わりだった。
宿へ戻ると、エルナは俺の服を見て、先に脱いで洗えと言った。
俺は洗い場で塩を落とし、火の前へ座ってから話した。
給金の額を言うと、彼女の眉が少し上がった。
「それは、欲しくなるね」
「うん」
「私の部屋まで決めたんだ」
その言い方は冷たかった。
彼女は火を見たあと、俺へ顔を向けた。
「あなたが断った理由を、私のせいにしてない?」
「してない。僕も、帰りたい」
エルナは、俺の手を引いた。
指の間に洗い残した塩があった。濡れた布で拭い、それから、その布を自分の膝へ置いた。
「帰ろうね」
彼女は言った。
俺は頷いた。
火のそばへ、もう少し椅子を寄せた。




