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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
帰りたい岸を選ぶ
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払ってから欲しくなるもの

村への最後の支払いをした日、俺は菓子を買った。


財布が軽くなった祝いに、さらに財布を軽くするという、理屈の整わない行動だった。それでも、帰り道の匂いに負けた。焼いた粉と蜂蜜は、人間の長期的な計画に強い。


支払いの席は、驚くほど短かった。


以前の残りを見て、今回の金を数え、最後の印を入れる。俺が持っていた控えの後ろへ、もう次の線を足さなかった。


長いこと、給金を受け取る前から一部が出ていく暮らしだった。


終わったと言われても、すぐには実感が来なかった。帰り際に、次はいつ来ればいいですかと聞きかけた。


村長は、戸口で俺を見た。


「次は仕事があれば呼ぶ。窓が鳴ってるからな」


感動的な余韻は、窓の仕事へ負けた。


俺は戸を見上げ、後日来ると言った。


あの夜、避難した人の夜が戻ることはない。アニの掌の傷も、金が揃ったから消えることはない。それは支払いのたびに説明し直す必要のない、目の前にあるものだった。


終わったのは、村へ払うこの分だった。


菓子は、エルナの家へ持っていった。


「全部食べる?」


彼女は包みを開いて言った。


「ロイの分も」


「じゃあ、これは私」


彼女は焼き色の強い端を取った。


俺は、その皿の横へ別の封筒を置いた。


ロイへの支払いだった。こちらは残っている。道具の取り分と給金を今のように続けられれば、あと数回の支払いで終えられる見込みだった。多くても一年はかけずに済みそうだと、オルネと一度確かめてある。


婚礼の費用を使えば、少し遅くなる。


俺はそのことを言った。


エルナは菓子を置いた。


「大きい式にしなくてもいい」


「僕も、そこまで大きいのは」


「窓が六つある家くらい?」


俺は黙った。


彼女は笑い、菓子を少し割った。


「服は、ちゃんと選びたい。着たことを、あとでも覚えていたいから」


俺は頷いた。


彼女が欲しいことを一つ言うと、俺にも言いやすくなった。


「食べ物は、少なくしたくない」


「あなたが食べる分?」


「招いた人の分。僕のも含めて」


エルナはもう一度笑った。


祝いの準備は、そこから急に現実になった。


借家の長机を削る日が決まり、寝台を運ぶ人が決まり、俺の服の袖が短いことが判明した。袖が短いと分かったのは母に着て見せたあとで、最初に見た時点で分かってくれてもよかったと思った。


「あんたが、これでいいって言ったんでしょう」


母は針を持ったまま言った。


「前は合った」


「前より腕が動く仕事をしてるから。立ってるだけなら、それでいい」


俺が腕を上げると、肩まで引っ張られた。


一日中、不自然に礼儀正しい姿勢を保つ婚礼になりそうだった。


ミアが後ろから布を引き、これなら脇で直せると言った。セラは低い椅子へ座り、俺の情けない姿を楽しそうに見ていた。


父だけは、今のままでも十分だと言った。


その父の服は、母が三日前から直していた。


新居には、トマが寝台の片側を担いで来た。


戸口で曲がりきらず、一度出して向きを変える。俺が先に入ろうとすると、彼は逆だと言った。


「こっちの脚が長い。先にそれを入れる」


「夫になると、こういうのが分かる?」


「寝台を運ぶと分かる」


俺は持ち直した。


午後には、エルナが青灰色の小鉢を持ってきた。


口が少し歪んだ、俺の部屋の棚に置いていた器。布を解き、新しい棚の奥へ置いた。今度も、指の入る余裕を残した。


彼女は一度出し、もう一度置いた。


「ここがいい」


俺は横へ木の鳥を置いた。今日は新しい家へ連れていく、とロイへ話すと、紐の緩みに気をつけろと言って貸してくれたものだった。


「鳥は高すぎる」


「首が伸びるから?」


「落ちたら、またお父さんに叱られる」


俺は一段下へ移した。


まだ誰も寝ていない家で、何をどこへ置くかだけが、次々決まっていった。


戸を開けると、夕方の冷たい空気が入った。


エルナが少し肩を上げ、俺へ寄った。


「今日、ここで食べて帰ろうか」


彼女が言った。


俺は頷き、火を起こすために袖を捲った。


直してもらった袖は、今度はちゃんと肘まで上がった。


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