窓が六つある家
最初に見に行った家には、窓が六つあった。
俺はその時点で、かなり気に入っていた。窓が多い家に住む人間は、少なくとも貧乏には見えない。雨戸を六枚閉める手間や、冬に六か所から冷えることについては、まだ考えていなかった。
「ここへ机を置いて」
俺は両手で示した。
「向こうを寝る部屋にすれば、仕事と分けられる。棚も大きいのを作れるし、来客があっても――」
「二月分を先に払う」
家を見せてくれた男が言った。
「戸板の交換は借りる側。薪置きは裏だが、屋根はない。北の窓は、強い風の日には開けない方がいい」
俺は窓を数え直した。
多ければいいというものではなかった。
エルナは壁に頬を近づけていた。何をしているのかと思うと、浮いた漆喰の下へ指を置いた。
「ここ、雨のあとに湿る?」
「昔の染みだよ」
男はすぐ答えた。
彼女は鞄から紙の切れ端を出し、壁へ軽く押しつけた。離すと片側がしんなり曲がっていた。
「昔の雨が、まだここにいる」
俺は吹き出しそうになって、咳をした。
男は二人を戸口まで送り、家賃の一部は相談できると言った。俺が少し振り向くと、エルナが俺の袖を引いた。
外へ出て、秋の風を吸った。
「あと少し下げてくれれば」
言ってから、彼女を見た。
「紙が干せない」
「うん」
「私、毎晩、雨の染みと寝たくない」
「僕も」
本当は、六つの窓の前に立つ自分を、まだ少し気に入っていた。二十三歳、職人、妻になる人がいて、客を上げる部屋もある。家賃を聞くまでは、完璧な人物だった。
その日、三軒見た。
二軒目は灯台に近かったが、井戸まで遠く、水を一桶運んだだけで俺の袖が濡れた。エルナは玄関から見ていて、毎日それをするかと尋ねた。
俺は桶を下ろしてから、三軒目へ行こうと言った。
最後の家は、母の家から少し下った道沿いにあった。
広くはなかった。窓は二つ。片方は朝の日が入り、もう片方は午後になると隣の塀の影になる。台所の床板が一枚、踏むと鳴る。裏には小さな庇があり、その下へ薪を積めた。
家主の女は、家具を全部置いていくつもりはないと言った。
「寝台は運ぶ。大きい棚も娘が欲しがってる。こっちの長い机なら、残してもいい」
机の表面には、幾つもの切り傷があった。
エルナの目が、そこで止まった。
「削っても?」
「穴を開けなければ」
彼女は俺を見た。
俺は机の縁へ掌を置いた。少し反っているが、脚の継ぎは生きている。削り直し、片方の脚の下を詰めれば、紙を広げられる。
「ここなら、窓の横へ干す綱を張れる」
エルナが言った。
俺は壁の長さを見た。
「僕の砥石は、裏の庇の下かな」
「粉が紙へ来ないところがいい」
「寒い日は?」
「台所の端を空ける。でも、研いだあと自分で拭いて」
まだ借りるとも決めていないのに、二人で作業場所を取り合っていた。
家主の女が笑った。
俺は、初めて少し恥ずかしくなった。
帰り際、戸を閉めると、部屋の中に静けさが残った。二人がここで喋る時の声を、なんとなく想像できた。卓へ物を置く音、眠る前に窓を確かめる足音。
俺は家の前で振り返った。
六つの窓はなかった。
それでも、ここへ帰ってくることは想像できた。
エルナも同じ家を見ていた。
「どう?」
俺が聞いた。
「机がほしい」
「家の話を」
「机だけ抱えて歩くつもりはないよ」
彼女は笑い、俺の指へ自分の指を絡めた。
二人で空を見た。午後の光が、窓の硝子に小さく残っていた。




