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忘れ潮の灯台守  作者: Tpump6957
帰りたい岸を選ぶ
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窓が六つある家

最初に見に行った家には、窓が六つあった。


俺はその時点で、かなり気に入っていた。窓が多い家に住む人間は、少なくとも貧乏には見えない。雨戸を六枚閉める手間や、冬に六か所から冷えることについては、まだ考えていなかった。


「ここへ机を置いて」


俺は両手で示した。


「向こうを寝る部屋にすれば、仕事と分けられる。棚も大きいのを作れるし、来客があっても――」


「二月分を先に払う」


家を見せてくれた男が言った。


「戸板の交換は借りる側。薪置きは裏だが、屋根はない。北の窓は、強い風の日には開けない方がいい」


俺は窓を数え直した。


多ければいいというものではなかった。


エルナは壁に頬を近づけていた。何をしているのかと思うと、浮いた漆喰の下へ指を置いた。


「ここ、雨のあとに湿る?」


「昔の染みだよ」


男はすぐ答えた。


彼女は鞄から紙の切れ端を出し、壁へ軽く押しつけた。離すと片側がしんなり曲がっていた。


「昔の雨が、まだここにいる」


俺は吹き出しそうになって、咳をした。


男は二人を戸口まで送り、家賃の一部は相談できると言った。俺が少し振り向くと、エルナが俺の袖を引いた。


外へ出て、秋の風を吸った。


「あと少し下げてくれれば」


言ってから、彼女を見た。


「紙が干せない」


「うん」


「私、毎晩、雨の染みと寝たくない」


「僕も」


本当は、六つの窓の前に立つ自分を、まだ少し気に入っていた。二十三歳、職人、妻になる人がいて、客を上げる部屋もある。家賃を聞くまでは、完璧な人物だった。


その日、三軒見た。


二軒目は灯台に近かったが、井戸まで遠く、水を一桶運んだだけで俺の袖が濡れた。エルナは玄関から見ていて、毎日それをするかと尋ねた。


俺は桶を下ろしてから、三軒目へ行こうと言った。


最後の家は、母の家から少し下った道沿いにあった。


広くはなかった。窓は二つ。片方は朝の日が入り、もう片方は午後になると隣の塀の影になる。台所の床板が一枚、踏むと鳴る。裏には小さな庇があり、その下へ薪を積めた。


家主の女は、家具を全部置いていくつもりはないと言った。


「寝台は運ぶ。大きい棚も娘が欲しがってる。こっちの長い机なら、残してもいい」


机の表面には、幾つもの切り傷があった。


エルナの目が、そこで止まった。


「削っても?」


「穴を開けなければ」


彼女は俺を見た。


俺は机の縁へ掌を置いた。少し反っているが、脚の継ぎは生きている。削り直し、片方の脚の下を詰めれば、紙を広げられる。


「ここなら、窓の横へ干す綱を張れる」


エルナが言った。


俺は壁の長さを見た。


「僕の砥石は、裏の庇の下かな」


「粉が紙へ来ないところがいい」


「寒い日は?」


「台所の端を空ける。でも、研いだあと自分で拭いて」


まだ借りるとも決めていないのに、二人で作業場所を取り合っていた。


家主の女が笑った。


俺は、初めて少し恥ずかしくなった。


帰り際、戸を閉めると、部屋の中に静けさが残った。二人がここで喋る時の声を、なんとなく想像できた。卓へ物を置く音、眠る前に窓を確かめる足音。


俺は家の前で振り返った。


六つの窓はなかった。


それでも、ここへ帰ってくることは想像できた。


エルナも同じ家を見ていた。


「どう?」


俺が聞いた。


「机がほしい」


「家の話を」


「机だけ抱えて歩くつもりはないよ」


彼女は笑い、俺の指へ自分の指を絡めた。


二人で空を見た。午後の光が、窓の硝子に小さく残っていた。


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