窓を塞いだ理由
三日目の朝、剥がれた紙の下から、俺の生まれた日の数字が出た。
数字だけを見ていると、ずっと前に見た表と同じだった。違いは、その上に小さく書かれた言葉にあった。
案件を開いた日。
俺は声へ出して読んだ。
同じ頁の下には、線の細い別の欄がある。こちらは実際に口を通った時刻だった。書き足すため、あとから上の表を貼ったのだという。
「二度目まで、僕の生まれた日として数えてた」
「この頁の見出しを、そのまま全部の日付にした写しがある」
エルナは言った。
「別冊へ移す時に、追記の段が消えてる。元の紙はまだここにある」
最初に、悔しさが来た。
俺たちは何年も、日付が合わないものを見ていた。俺より前に受け取られた声、まだ呼んでもいない人の知らせ。わずかな欄の違いが、俺の頭の中では、神様や死の予定にまで育っていた。
紙を作った人間は、そこまで考えていなかったのだろう。余白が足りないから別へ書き、元の番号を付けただけだったかもしれない。
「怒ってる?」
エルナが聞いた。
「ちょっと。僕の人生、もう少し広い紙へ書いてほしかった」
彼女は笑いかけて、途中で止めた。
剥がした表の端に、まだ読めない線があった。
予備口の使用を示す短い横線。端に小さな三角が二つ並んでいる。下の数字は水で滲み、目を細めるほど見えなくなった。
「向こうの部屋にも、同じ三角があった」
ダナが言った。
管理の女に聞くと、三角の札が付いた物は、海側の検査室へ移したという。二年前に屋根から水が入り、濡れた物だけを乾かしに運んだままだった。
ただし、廊下は通れない。
床の下に雨水がたまり、板が腐った。入口から見える所は乾いていたが、奥を杖で押すと深く沈む。窓を石で塞いだ部屋には風が抜けず、傷みが早かった。
「どうして窓を塞いだんですか」
俺が聞くと、女は外を指した。
波を避ける壁が、途中で切れていた。
「あれを延ばす金が出なかった。硝子を三度替えるより、埋めた方が安いって」
全部に、個別にはもっともらしい理由があった。
その結果、俺の二度目がある部屋へ行くには、外から屋根のない階段を下りなければならなくなっていた。
俺は顔を上げた。
「干潮は?」
「午後の終わり。通れるのは、その前後だけ」
ダナは靴紐を結び直した。
「今、外を見る」
エルナは紙を閉じなかった。
「ここは私が読む。箱を持ち上げる時は、呼んで」
俺たちは建物の横から斜面へ回った。
低い所に海水が溜まり、石へ生えた海藻が、濡れた髪のように揺れていた。壁に沿って、古い作業用の階段がある。途中の二段は砕けていた。高い位置に鉄の輪が三つ残っていたが、一つは錆びて根元が痩せている。
ダナは最初の輪へ綱を掛けず、上の柱まで戻った。
「ここから通す。帰りに荷が増える」
俺は頷いた。
こういう時、彼女の準備を見ると息が楽になる。俺が知らない足場を、知っている人が見ている。しかし、綱の取り回しを確かめる彼女の手も、たまに止まる。その時は、次の石を押してから動いた。
午後、最も低くなる潮を待ってから、俺たちは綱を下ろした。一度に下りることはしなかった。
先にダナが空身で下り、欠けた段の向こうの敷居を確かめる。俺は上で綱を送った。波が来るたび、彼女の靴底の下に白い泡が広がった。
戸は開かなかった。
鍵ではなく、内側へ倒れた棚が塞いでいた。戸口の隙間から細い棒を入れ、引いてみる。動くのは棚の端だけで、下の箱が足に噛んでいた。
「下から押せれば」
ダナの声が来た。
俺は道具袋を下ろした。
交換先端の細いものを選び、柄を短くする。力を使って押すには弱い。箱の向きを少し変えればよいと、ダナが隙間の先を教えた。
術は使わなかった。綱で道具を落とさないよう手首へ繋ぎ、柄の端をゆっくり返した。
乾いた木が擦れる音がした。
もう一度。汗が耳の下を流れ、顎から落ちる。前より軽くなったところで、戸の下から潮水が入り、靴の先が冷えた。
「いったん出る」
ダナが言った。
「あと少し」
俺の口が先に動いた。
彼女は答えず、俺の目を見た。
俺は道具を抜いた。
上へ戻ると、波が先ほどより二段高く上がっていた。箱一つのために、俺自身の記録をここで終わらせるところだった。そうなると出生より死亡の方が、ひどく簡単な書き方になる。
エルナが戸口で待っていた。
「今日は駄目?」
「明日の干潮に、上から箱を引く綱も要る」
ダナが答えた。
エルナは頷き、俺へ水を渡した。俺が飲む間に、彼女の指が濡れた袖の裂け目へ触れた。
「中身は急に逃げないよ」
俺は水を飲み込んだ。
それはそうだった。二十年ほど、箱に入っていた。急いでいたのは俺だった。
翌日の干潮には、管理の女が知り合いの運び手を連れてきた。
棚を少し持ち上げ、別の綱で箱の角を引く。俺とダナが見つけた邪魔の場所は役に立ち、戸は、きしみながら人一人分だけ開いた。
中には潮の匂いが籠もっていた。
壁の札は落ち、箱の底は湿っている。それでも上の棚に載せた細長い筒は、水を被っていなかった。
ダナが差し出した筒の蓋に、二つの三角があった。
俺は受け取った。軽かった。
腕に抱えて階段を上がる間、箱を胸へ押しつけすぎないよう、何度も持ち直した。
上で待つエルナが、乾いた布を広げた。
筒から出てきたのは、茶色い縁の帯だった。
彼女はそれを光へ透かした。幾つかの暗い染みと、短い線が見えた。
塔の窓の輪郭が、その中にあった。
俺は息を止めた。
白い塔を、初めて見るのではなかった。




