出た札を戻す
翌朝、セラへの便りを南行きの沿岸便へ預けてから、俺は果実を買って塔へ上がった。
イサナは持ってきた果実のうち、一つだけを別にした。
「これはもう少し置く。せっかちに切ると、ただ硬い」
「選んだのは店の人です」
「私に自慢したら、あなたの責任だよ」
俺は自慢しようとしていた口を閉じた。
下の受け場のさらに奥に、昔の地域受理所へ繋いだ線の配列が残っていた。現在の塔では使っていない。丘側の倉に記録が移される前、外から来た容器を仮に留めた部屋へ続くという。
そこへ入れば、俺の出生地の受理を扱った場所を、現在の番号と対応させられるかもしれなかった。
下の受け場からその倉まで、昔は荷を担いで石段を何度も折り返したという。あとから、その間を短く歩くための内回りが作られた。舟を通す口よりずっと小さいが、行った人の帰りを残す仕組みは同じだった。
イサナは下の図へ、三人分の札の形を描いた。
「人を通す古い内回りは、帰りの札を残す。外から入った数だけ、出たあとに返す。途中で名を消すと、その人の帰る側まで閉まる。あの石の文章は、この手順だ」
俺は図の外周を指した。
「こっちから歩いて戻れる?」
「奥の梯子は潮が低ければ。ただし近道の線を使ったら、戻る時も帰着を返す。入口を普通に歩いて出たからといって、繋いだままにしない」
彼女は台の上の輪を見た。
「古い一巡式なら、それで終わる。あとから、帰ってきた札を全部ここでも確かめるよう足した。いまは、そっちの線がついている」
ラウゼンは午後の調査を認めた。
外側の波が強くなりそうなので、二つ目の鐘が鳴る前に下の床から戻る。終えたら港の仕事で取った寸法も提出する。俺たちが何を写したかを、運用に関わる部分だけ確認させてほしいとも言った。
その時には、過大な要求とは思わなかった。
古い帰路の調査に必要な二つの作動片を、港の検査用の在庫から借りた。片方は短い試験、もう片方は三人が同じ内回りを往復する時の、入口と帰着の確認に使う。管理者が量と適合を確かめ、使った物は透明になって返す手順だった。
イサナが俺の山用の片も見た。
「山で一枚使って、短い動作用があと一枚、金具用が一枚。どちらも手をつけていないね。混ぜないよう、包みを替えて」
俺は購入した三枚のうち、山で使った一枚を使用済みの箱へ移した。残り二枚には、持ち込んだ修繕用の印をつけた。帰着用の量を、勝手にほかの試験へ使う余裕はなかった。
サーヴァには、夕方までに戻ると伝えた。
彼女は空を見て、ミソサザイを内側の繋ぎ場へ移すと言った。沖へは出ない。ユストは低い桟橋の舟を先に上げていた。
「帰りが遅れたら、鐘で知らせる」
俺が言うと、サーヴァは首を振った。
「誰に知らせる鐘か、先に決めろ。鳴れば都合よく聞こえると思うな」
下の受け場には外から引く小さな鐘がある。ユストが近くの繋ぎ場で待ち、鳴れば様子を見ることになった。見えない場所の合図は、使える経路と、そのための片がある時だけだった。
俺は彼女に、出航の朝より細かく順序を確かめた。
今度はエルナも、俺をからかわなかった。




