日付が三つある
エルナはその夜、食べ物を持ったまま眠りかけた。
皿の上で匙が止まった。目は開いていたが、焦点が鍋を越えて別の場所へ行っていた。俺がパンを取り上げると、手だけが追ってきた。
「返して」
「いま寝てた」
「考えてた」
「パンを?」
彼女は俺の手からパンを取り返し、半分に割った。中がまだ温かかったので、そのまま一口食べ、残りを俺へ渡した。
狭い宿の部屋に、石の冷たさを持ち帰ったようだった。窓を閉めても二人の肩がなかなか温まらず、俺たちは椅子を寄せて座った。
エルナが写してきた紙には、古い受け場の部屋割りがあった。
一方は舟と乗り手の名を合わせる所。もう一方は、舟から離れた体験を容器で保全し、必要な所へ一回だけ渡す所。最初の図では離れていた二つへ、後から同じ建物の入口番号が振られている。
「同じ入口、と読んだら混じるね」
彼女が言った。
俺は二枚の受理痕の控えを出した。角を落とした板と、丸い逃がしのある板。形はここにある枠の図と似ていたが、番号も大きさも違った。
俺に使われたその物だと言える証拠はない。似ているからといって急いで結べば、あとから自分でほどけなくなる。
「もう一枚、ある」
エルナは薄紙を外した。
受け付ける日、実際に到着した印、後で別の台帳へ移す欄。それぞれの場所が、床の作業の順に対応していた。
新しい様式では一列に見えるものが、古い部屋では、別々の窓口と棚へ分かれていたのだ。
俺は指で、その三つを順番になぞった。
「先に受け付けた箱へ、あとから物が来る」
「そう。しかも書き移した日に、古い受付の日を表へ出す。ここにある別の荷の控えだと、実到着の印は内側にある」
彼女は例として写した、塩で端の欠けた紙を見せた。
同じ時刻を三種類の言葉で書いたのではない。仕事をした場所が、三か所あった。
頭の中で、俺の出生の日とセラの声が、少しだけ離れた。
離れて、その間へ暗い空白ができた。
セラは、いつ俺を見たのだろう。俺は、何歳だったのだろう。日本で倒れた時に届いたと思っていた声を、別の場所で別の身体が受けていたなら。
想像しようとすると、乳児の小さな手の上へ、三十一歳の指が重なった。
俺は紙から手を引いた。
エルナは俺の顔を見て、皿を少し遠ざけた。何かを言う前に、俺の膝へ自分の膝を寄せた。
「これは、ここの荷の例。あなたの時刻は、まだ分からない」
「うん。分かってる」
分かっていても、身体が先に怖がることはあった。
その夜、俺はセラへ便りを書いた。
山で見た物、古い刻みの読む向き、入口の先を辿れそうなこと。レンネルで調べたあと、当時の地域受理所へ行きたいこと。救難を送った頃の修理の控えが残っていたら、一緒に確かめたいこと。
合流できる時期と、脚に無理のない移動を相談したいとも書いた。明日来てくれとは書けない。彼女の暮らしを途中から切り取って、俺の疑問のそばへ置く気にはなれなかった。
最後に、こちらは二人とも元気だと付けた。
エルナはその文を見て、俺のこめかみへ指を当てた。
「元気は、明日まで寝てから確認」
彼女は封を乾かす場所を空け、椅子から立った。俺が先に寝床へ潜ると、少し遅れて隣の布が沈んだ。
窓の外で、荷車が石を踏んでいた。俺はその音を数え、いつの間にか途中を失った。




