明日の朝の分
夜、サダの家には六人が集まった。
火のそばへ老人を座らせ、膝を冷やす布を替えた。大きく腫れるようなら町の手当場へ運ぶと決めると、彼はそんな金があるなら靴へ使いたいと言った。サダは靴なら少なくとも片方がまだ履けると返した。
昼から戻っていない籠を取りに行きたいというので、俺が取りに行った。籠の中に残った干し豆を盗み食いしていいか聞くと、老人は急に具合がよくなったような声で断った。
ダナは明日の図を床へ広げていた。
元締めは夜明けから、上の荷を動かすつもりだった。荷には古い受け所から外した大きな石枠があり、滑り木を敷いた斜面を曳いて下ろす。その先で軍道の曲がりが狭まるため、沢の上の張り出しを崩す計画になっていた。
「荷を上に置いたまま、曲がりを直すならできる」
ダナは別の線を描いた。
「上の三本を先に抜かず、下へ足す。手間と材は増える。その間、人は沢を通す。春までに高い道も横へ残す」
元締めが嫌がる理由は明らかだった。先に買った短い材では足りず、もう一度人を呼ぶ必要がある。安く早くできることを示して取った仕事だったのだろう。
「町の人は、朝に来る」
キナが戸口から言った。
荷場の持分を持つ二人と、谷に畑のある家の代表へ知らせてきた。彼女は椅子へ慎重に腰を下ろし、腰の片側へ布を挟んだ。
「私の分も運び賃に入れる。走ってないけど、遠かった」
ダナはうなずいた。
エイムは卓の隅で、自分の手袋を縫っていた。袋を返したあとから、誰とも目を合わせようとしなかった。サダは彼へ茶碗を置き、離れようとして、止まった。
「あの時のこと、一つ聞いていい」
エイムの針が止まった。
「答えられるか分からん」
「縄の向こうへ桶を投げた。私が持っていこうとした桶」
男は手袋を卓へ置いた。
「忘れたのは、そのへんだ。記録には、俺は東の番にいたとある。家の東なら、たぶん俺だ」
「たぶんって言われるの、腹が立つ」
「うん」
「桶の中に、母の薬があったの」
火がはぜた。
エイムは膝の上の掌を見た。サダの方を見直すまでに、少し時間がかかった。
「ひどいな」
「あんたが、そう言うの」
「ほかの言葉が出ない」
彼は自分の髭を掻きかけ、手を下ろした。
サダは茶碗を置いた場所から手を引いた。二人とも謝罪の続きを言わなかった。彼女は火の上の鍋を回し、エイムは冷えるまで茶を飲まなかった。
俺たちは、村の人数を数えてから帰った。
明朝、軍道を通る人、家にいる人、水を運ぶ人。普段なら誰も数えない動きを、ダナは一人ずつ聞いた。サダは自分の家を空いている色に塗らせず、図の上へ指で丸をつけた。
「朝はここ。昼に市へ。小さい籠を二つ」
ダナがそのまま書いた。
帰り道、エルナは眠そうだった。暗い水路を歩くので、俺は灯りを少し前へ出した。今日張った縄が手の中で冷え、結び目に雪が小さく引っかかっていた。
「自分のことを調べるの、遅くなったね」
彼女が言った。
「うん」
二つの受け口。俺へ二度届いた何か。その答えが、いつでも頭の奥にあった。あの石枠を荷主へ売るためだけに読めば、謝礼と一緒に先の図が手に入ったかもしれない。
「早く知りたい」
俺は言った。
エルナは、否定も励ましもしなかった。滑りそうな板で俺の腕を取って、そのまま少し歩いた。
「明日、終わったら、眠る」
「一緒に?」
「あなたが歯ぎしりしなければ」
「してる?」
「勝負の前の日は」
俺は口を閉じ、奥歯が当たっていたのを離した。
彼女は笑った。暗くて顔はよく見えなかったが、袖を通して肩が小さく揺れた。




