第七話 スキンシップ
今日もあたしの膝には優が乗っている。
そして、スマホでFPSをプレイしている。
正直、学校ではあまりプレイしたくねーんだけどな。
時間かかるし、優が見るとうるせーから。
実際、テレビ版のFPSだと少しグロくて、優は毎回あたしに抱きついてくる。
さすがに学校で抱きつかれたら、変な噂も湧きそうだ。
それだけは勘弁してほしい。
「宙ちゃん」
「あー? な、なんだよ?」
「わたし、画面見てもいい?」
「……グロいぞ?」
「な、ならいいや」
「……おう、すまねーな」
なるほどな。
グロいって言えばいいのか。完全に盲点だったな。
今後は毎回これを使うか。
「パンよこせ」
「はい、どうぞ……!」
「あむっ……うん、サンキュー」
「わたしも食べていい?」
「…………好きにしろ」
「わかった!」
そう言って、あたしの食った部分から食べようとする優。
「おいこら」
「えー? 許可は取ったよ?」
「はぁ……あとで覚えておけよ」
「うん!」
それから、いつもどおり授業を受け、放課後を迎える。
「よし、帰るか」
「わたしもついていっていいよね!」
「ダメだ」
「えー?」
「おめーは自分勝手なことをしすぎたから、罰だ。今日は一人で帰る」
「…………この間は『罰なんてない』とか言ってたのに……」
「それ言ったのおめーだけどな」
「じゃあいいや! 宿題するから!」
「はん! ならあたしは、おめーの真横でゲームするわ」
「宙ちゃん……!」
「べ、べつにおめーが心配なんじゃねーぞ? ただ、ゲームする場所がたまたまおめーの隣なだけだ」
「はいはい」
こうして、FPSをやる。
うーん、やっぱり飽きねーな。
「はい、一位! やっぱ野良でも余裕だな! ……ん?」
気がつくと身体が温かい。
そう思って顔を動かすと、真横に優の顔があった。
「おめー……あたしの身体に足を絡めて抱きついてくるとは、いい度胸じゃねーか」
「だって、宙ちゃんがかまってくれないんだもん!」
「重いしウザいし暑苦しい」
「ご、ごめん……」
「はぁ……」
まあでも、こいつのことはゲームより大切だからな。
今回はあたしが悪かったかもしれねーな。
「つーかよ、スマホの画面見てたんだろ? どうだった?」
「テレビ版よりはグロくなかった!」
「そうか。でも、だからと言って抱きしめてくんなよな」
「えー? だって宙ちゃん、全然スキンシップしてこないじゃん」
「恥ずいんだよ! あと、あたしがしたら変だろ」
「可愛いと思うんだけどなー……」
「とにかく、あたしがしたら変なんだ!」
「……わかった。じゃあ、わたしが宙ちゃんの分までスキンシップしてあげるね!」
「………………だな。頼むわ」
「やった!」
こうでも言わないと、こいつうぜーからな。
たまには飴と鞭で調整しないと。
「あ! でも、昼休みのときにこんなふうに抱きついてくんなよ?」
「んー……条件次第ではいいよ?」
「条件……?」
どうせろくでもないんだろうな……
そんなふうに考えていると、本当にろくでもない考えだった。
「宙ちゃんもわたしにスキンシップするの!」
「は、はぁ!?」
「あ、放課後でもいいよ? 最低週一ね! それなら、渋々膝に乗る程度にしてあげるから!」
「ぜってーイヤだ!」
でも、毎回抱きつかれるのはな……
あたしがスキンシップするのは、柄じゃねーっつーか、似合わねーし。
「で、どうするの? なんか色々考えてるけど」
「くっ……! スキンシップしてやるよ! その代わり、下手でも笑うなよ!?」
「よし! それじゃあ、抱きつくのやめるね?」
「……べ、べつに、いまは二人きりだし、やめる必要はねーだろ? 知らねーけど」
そう言うと、優はギュッと力強く抱きしめてきた。
「宙ちゃん……!」
「苦しいし重いから離せ!! 暑苦しい!」
「ああ、ごめんごめん」
「でも、本当に……下手でも笑うなよ?」
「うん」
よし! それじゃあ、景気良く一発目をやってやるか!
「スキンシップするからな!!」
「うん! 来て!」
「じゃあ、手を出せ!」
「…………手?」
スッと手を差し出す優。
そして、その手を強く握るあたし。
「ほら、スキンシップだ!」
「宙ちゃんってさ……」
「な、なんだよ?」
「可愛いね!」
「ほっとけ! これがあたし流だ!」
「ふふっ……あったかいよ?」
「そりゃ、おめーが抱きついてるからだろ」
「……そうかもね」
「ま、手はあったけーけどな」
「…………宙ちゃんって、やっぱり可愛いね」
「フン……」
やっぱり、優と一緒だと調子が狂うな。
まぁ、悪い気分ってほどでもねーけど。
そんなふうに、今日もあたしたちは日常を過ごした。




