第六話 ゲームしたい!
「ゲームしたい!」
わたしがそう言うと、宙ちゃんは一瞬だけゲームの手を止めた。
「……どういう風の吹き回しだ?」
「だって、宙ちゃんが前に、『あのキャラ地味に厄介なんだ! 一人だけ武器使うなよな……って、あ、すまん。おめーにはわかんねーこと言っちまって……』って言ってたじゃん!」
「おう、言ったな」
「わたし、ゲームしたい! 共通の話題がほしい!」
宙ちゃんの膝に座りつつ、わたしは騒いだ。
そんなわたしを目の前にしていた宙ちゃんは耳を塞いでいたけど、そんなにうるさかったのかな……?
「わーったよ。今日はゲーム三昧だ!」
「うん! ありがとね!」
「なら、さっさと降りろ」
「ん? どうかしたの?」
「おめー向きのゲームを考えるから、待ってろ!」
「普段はむすっとしてて逆に可愛い宙ちゃんが……! やる気を出してる!!」
「少し黙れ……」
「照れてる?」
「ああ、少しな」
「そっか! わたしのために頑張ってくれてありがとね!」
「おめーのためならなんでもする……とまでは言わねーけど、ダチのためだ」
「ふふっ……わたし宙ちゃんのそういうところ、好き!」
「……そーかよ」
こうして、宙ちゃんはスマホをいじる。
「……パンよこせ!」
「はい、どっちがいい?」
「前は揉めたから、半分ずつ食べるわ」
「はーい! はい、クリームパン!」
「おう」
わたしは宙ちゃんの顔の近くにパンを近づける。
すると、宙ちゃんがパンにかぶりついた。
「ふふっ……可愛い」
「可愛いか……?」
「うん!」
「……あたしにはよくわからん」
そう言う宙ちゃんは、やっぱり可愛い。
「じゃあ、わたしで考えてみて?」
「…………あー、なるほど」
「ね?」
「おう」
それから五分後、考えがまとまったようだ。
「よし、できたぞ! ランクSからランクDまで!」
「おおっ!」
「まずはファミリー向けのやつ全般だ! ほとんどの格ゲーは外してる」
「な、なるほど……格ゲーって、格言の多いゲームってこと?」
「それだと格ゲーの範囲狭すぎだろ! 一部のRPGしか当てはまらねーじゃねーか!」
「冗談だよ? 格闘ゲームね」
「おう。あと、FPS」
「ああ、わたしがいつも宙ちゃんに抱きつくゲー……」
そう言いかけると、消しゴムが投げつけられる。
「いてっ」
「……いらんこと言うな!」
「ごめんごめん。アレは苦手っていうか、操作法が複雑そうでわかんないからいいや」
「だな!」
「まあ、宙ちゃんに学ぶやり方もあるけど」
「……というと?」
「宙ちゃんが後ろで、二人羽織みたいに教えてくれるの!」
「そんなことするわけねーだろ!」
「だ、だよね……」
「最初からそうやって教えるつもりだったからな!」
「だよね! 最近のコントローラーって、ボタンたくさんあるもんね!」
「おう」
宙ちゃんが話し始める。
簡単に言うと、すごろく系ゲームがS。
例のスマッシュゲームはA。
あとは、見たことのないキャラばかりのゲームだった。
「じゃあ、スマホゲーすっから」
「わかった!」
「……ん!」
「うん……」
ふたたび宙ちゃんの膝の上に座るわたし。
それにしても、久しぶりのゲーム……楽しみだな!
放課後になると、宙ちゃんが手を引いてくれた。
「ほら、帰るぞ優」
「うん!」
手を繋ぎながら宙ちゃんの家に向かうわたしたち。
その道中、こんな会話をした。
「なにが楽しみだ?」
「うーん、宙ちゃんと遊べること!」
「お前……意味わかってるのか? 勝負の世界は弱肉強食だぞ」
「でもわたし、宙ちゃんに食べられるなら……いいよ?」
「はー……なら、あたしが頑張るか」
「いつもごめんね?」
「謝んな。言っとくけどあたし、おめーを迷惑だと思ったことはねーから」
「…………うん!」
そうして、宙ちゃんの家に着く。
「開けて?」
「おう」
「ゲームゲーム~」
「ははっ……」
宙ちゃんがドアノブを回し、二人で家の中に入る。
「先に行け」
「うん!」
ドンドンドンという足音と共に、二階へ急ぐわたし。
「もう少しゆっくり上れよな……」
なんて呆れる宙ちゃんをよそに、わたしは宙ちゃんの部屋に入る。
「おお~! 宙ちゃんちの匂いだ」
「……そういうこと言うな」
「でも、宙ちゃんの匂いの方が好きかな!」
「人前でそういうこと言うなよ……?」
マジトーンで言う宙ちゃんが、ちょっぴり面白い。
「大丈夫! ほら、やろう?」
「おう」
そして、宙ちゃんがわたしの背後に座る。
「ん~! 宙ちゃんの香りだ!」
「……いいから、早くゲーム選べよ」
「…………カセット入れた?」
「……お前、ソフトをダウンロードできるの、知らねーの?」
「あ……ああ、そういうこと! だからいっぱいあるんだね!」
「そうだよ! それと、あたしもおめーの匂いで緊張するんだよ! わかったらさっさとしろ!」
「はーい!」
こうして、例のスマッシュゲームを選ぶ。
「よし、落ちるなよ? 基本的には『落ちるな』だ」
「受験と一緒ね! オッケー!」
「なら、コントローラーの右のボタンを押せ」
「はいはい……」
こうして、コンピューターと戦うことに。
「まずはコンピューターとだ」
「うん! レベルは九ね!」
「ああ、頑張れよ!」
「うん! わたしはピンクの悪魔にしよう! ストーンで落ちてるだけで倒せるからね!」
「おめー……友達いなくなる戦法を堂々と言うんじゃねーよ」
「あー……だからわたしハブられてたの……?」
「今さらダメージ喰らってんじゃねー! 来るぞ!」
たしか敵は、ビームを撃つマスクのキャラだ。
「はっ! ストーン!」
昔と同じ感覚で使うと、落ちて死んだ。
「おい下手くそ、ここからはあたしも手助けしてやる」
「あっ、うん!」
「手をあたしの動かした方向に動かせ!」
「わ、わかった!」
そのあと、指がくすぐったくて、ゲームに集中できなかった。
それでも宙ちゃんとやるゲームは、見てるときの何倍も楽しかった。
「あー、くそ! あのクソマスク覚えておけ! あと優! おめーももう少しシャキッと動け!」
「えー? だって、宙ちゃんの手がくすぐったかったから……」
「あのなぁ、勝負するなら勝つのが一番だ!」
「でも、宙ちゃんと一緒にゲームできて楽しかったよ! 見てるときの何倍も!」
「……そうかよ」
「だから、またいつか一緒にやろう?」
「…………おう、今度はもっとムズいゲームにしてやる」
「なんで!?」
「あと、こういうのは二度とごめんだ」
「…………ごめん」
「……だから、たまにだけしかやらねーかんな!」
「宙ちゃん!!」
「だーもう、くっつくな!」
そんなこんなで、宙ちゃんと一緒にゲームを楽しんだわたしだった。




