第五話 告白
「好きです! 付き合ってください!」
「……は?」
「返事はいつでも構いません!」
「お、おう」
「では!」
こうして、あたしは告白された。
放課後、優と一緒にいるときにだ。
「な、なんなんだ? アレ」
「すごいね! 他人が告白されてる現場、初めて見ちゃった!」
「おめーは関係ねーもんな」
「でも、わたしも前に告白されたことはあるよ?」
「いつだ?」
「夏休み明けからかな。だからこう言ってあげたの! 『わたしたちは学業に励むためにこの学び舎に来ています。不純な動機は感心しませんね』って」
「あー、言いそう。おめー、あたしといないとドライだもんな」
「そゆこと!」
なるほどな。
でも、あたしは優みてーに真面目じゃねーし……
「どうすっかなー」
「わたしは応援してるね!」
「他人事だと思いやがって……優なら、こういうときどうする?」
「…………もしかして、断りたいの?」
「おう。ものすごくな」
「どうして?」
「おめー以外にダチはいらねぇ」
「そ、そっか……」
「照れんな。こっちにもうつるだろ」
「ごめん。だけど、それなら素直に言ったら? 『恋愛より友情の方が大事です』って」
「…………でも、相手にわりぃからさ」
「そっか」
それにしても、どうすりゃいいんだ?
『実は優と付き合ってます!』って言うか?
いやいや、全然そんな関係に見えねーよな。
マジで、どうすりゃいいんだ……?
「とりあえず、明日考えっか!」
「あっ、逃げた」
「うるせー。頭が良くても、悩み事はあるんだよ!」
「そっか。わたしみたいにちょっとおバカな人でも、悩み事はあるしね!」
「ちょっと……?」
「それより、今日はなにをする? ウチ来る?」
「おめーの家は窮屈だからなー。親御さんうるせーし、騒がしくできねーもん」
「宙ちゃんちは共働きだから、わたしは騒げて好きだなぁ」
「おう、サンキュー」
こうして、あたしたちは下校する。
すると、水たまりの近くを通る優。
そんな中、遠くからバイクの音がしたので、急いで優を抱きかかえた。
「危ねぇ!」
「なになに!? なんでお姫様抱っこ?」
「泥が跳ねそうだったからな」
「あー、そういうこと! ありがとね」
「おう。それよりさっきの話だけど、おめーと付き合ってるとか嘘ついてもいいか?」
「え? ……ふーん、宙ちゃんは他人の好意を踏みにじる気なんだ?」
「悪かった! もう言わねぇ」
「うんうん。大体、わたしと宙ちゃんが付き合ってるように見えないもんね」
「だよなぁ。一晩考えてみるわ! じゃあな!」
「うん!」
それから、その日は優と遊ばずに、ゲームをしながら考えた。
「恋愛ってくだらねー。つーか、めんどくせー」
そういう感想しか出なかったけどな。
それから翌日、早めに登校する。
「よう、優」
「あっ、宙ちゃん。珍しいね?」
「おめー、いつも早いよな」
「うん。優等生だからね!」
「自分で言うな」
めんどくせーから適当な理由でも考えるか。
ということで、優に尋ねてみる。
「優」
「なぁに?」
「あたしに恋人ができたらどうする?」
「うーん……仲良くなる!」
「そうか」
「宙ちゃんは?」
「あたしは……気に入らねーとか思いつつ、『お二人さんでうまくやんな』って感じかな」
「ならわたしは、一生恋人できないね」
「な、なんでだよ」
「だって、宙ちゃんが好きだから。いや、宙ちゃんも好きだから、三人がいいかな」
「…………そうか。あー、そうだな」
「宙ちゃんは?」
「おめーの場合、仲良くなるって言ってたろ?」
「違う。そうじゃなくて……嫉妬とかしないのかなーって」
目を逸らして照れながら言う優。
「だっはっは! そんなもん……」
「な、なに?」
「するに決まってんだろ。マブダチを幸せにしねーやつは許さねー」
「ふふっ……わたしも同じ気持ちだなぁ」
「うし! なら、昨日の告白は断るか!」
「え? もしかして、わたしのせい?」
「おう。おめーのせいだ」
「なら、もし宙ちゃんが一人きりだったら、一緒にいてあげる! ……って、前も似たようなことを言った気がするけど……」
「おう。頼むわ! じゃ、昇降口であの子を待つかな」
「わ、わたしも行く!」
「なんでだ?」
「気になるの!」
「ははっ、いいぞ? あの子が来るまで、二人で駄弁るか」
「うん」
こうして、昇降口で昨日の子を待つ。
「でも、わたしが嫉妬しなくなる日が来れば、宙ちゃんも誰かと交際とかできるね!」
「はぁ? そんなのイヤだね。おめーと一緒じゃねーとつまんねーよ」
「うん。わたしもそう思う。でも『もし』だから!」
「なら、そんなこと考えんなよ」
「うん、ごめん……」
そんな話をしつつ、あの子を待ち、あの子がやってくると告白を丁寧に断るあたし。
それより、もし嫉妬しなくなったら……か。
その言葉に引っかかりつつ、いつもどおり優と話すあたしだった。




