第四話 甘い関係
それは、宙ちゃんと一緒にお出かけしているときに起こった。
なんと、とあるカフェでカップル割をしてるようだった。
「おっ、カップル限定で割引だってよ」
「へー! 食べに寄る? 宙ちゃんパフェ好きだもんね」
「おう。それじゃ、入るか」
わたしたちが入店すると、カップルが多かった。
「おおー、カップルばかりだね!」
「ま、こうなるだろうな。そもそも、金を安くしてもらうために入店してるやつらがほとんどだろうし」
「宙ちゃん、言い方!」
「おっと、わりぃわりぃ。でも、結局は金を払うんだし、どっちでもいいだろ?」
「まあ、そうだね!」
店員さんが来ると、宙ちゃんがパフェを注文する。
「つーわけで、チョコレートパフェひとつ。優は?」
「わたし? 宙ちゃんの食べてるところを眺められたらいいかな。わたし、あんまり甘いもの好きじゃないし」
「じゃあ、チョコレートパフェふたつで」
「えー? いいのに……」
「ちげーよ。あたしがふたつとも食うんだ」
「なーんだ、ならいいか」
それから、わたしたちはパフェの到着を待つ。
「でも、パフェは久しぶりだなぁ」
「そもそも、出かけるのも久々だろ」
「もう秋だもんね」
「だな。あたしが夏休み以降不登校になったからな……」
「……どうして休んでたの?」
「それはな……もっとおもしれーもんを見つけたからだ」
「いまは?」
「お前に夢中だから」
「あー、それはそうだね」
「否定しろよ。恥ずいわ」
「パフェきたよ?」
「……聞けや」
こうして、ふたつのパフェがわたしと宙ちゃんの前に置かれる。
「じゃあ食うか」
「宙ちゃん?」
「……へいへい、いただきます」
「…………いいね!」
「そいつはありがとう。じゃ、食うか」
「うん! どうぞ?」
「口開けろ」
「えっ?」
宙ちゃんはわたしの口にスプーンを無理矢理入れてきた。
「もがっ!?」
「そっちのはやるよ」
「せめて普通に食べさせて?」
「わりぃな。あたしは普通が嫌いでね」
「もー……」
そうして食べ続けるも、半分くらい残してリタイアする。
「あー、甘い甘い甘い!! カフェラテが飲みたいよー!」
「ふっ……甘いな。じゃあ、あたしは完食したから、そっちよこせ」
「あっ、いつものだね?」
「おう。口開けろ」
口を開けると、宙ちゃんが優しく口にスプーンを入れ、食べさせてくれる。
「あー、楽」
「ちゃんと噛め」
「はいはい」
そんなこんなで全部食べるわたしたち。
というか、食べさせられたわたし。
「あっ、クリームついてるぞ」
「取って?」
「へいへい」
宙ちゃんは指でクリームを取ると、それを舐めとった。
「いやー、やっぱりふたつ目もあたしが食べるべきだったかな」
「太るよ?」
「……だよなー」
会計に行くと、カップル割として証明しろだとか。
「正直どうすればいいのかわかんないな……」
「どうするよ? 優?」
「うーん、ここはオペレーションオメガでいくかな!」
「なるほど。じゃあ頼むわ」
「うん! まずは宙ちゃんにもついてる邪魔なクリームを指で取るね?」
「おう」
「じゃ、いくよ?」
「ああ。照れるからはやくしろ」
「うん!」
そう言ってクリームを指で拭うと、クリームがあった場所にキスをした。
「ふふっ……柔らかい」
「バカ」
「いてっ」
宙ちゃんに軽く頭をどつかれるわたし。
「なにすんのさ!?」
「いまのはオペレーションアルファじゃねーかよ!」
「あー、そうだっけ? ごめんね?」
「まあいい。その代わり、あたしは払わないからな」
「うん。といっても、カップル割は半額だから、パフェ一個分の値段なんだけどね」
そうして、わたしたちはカフェを出た。
「いやー、甘かった」
「だな! 週一で行こうな。あそこのパフェうめーから!」
「いや、わたしはちょっと……一人で行けば? カップル割も半額だから、わたしが頼まなければ変わらないし」
「……この薄情者が」
「はいはい。一緒に行けばいいんでしょ? 宙ちゃん、意外と寂しがり屋だもんね」
「おう。それでいいんだ」
「ただ、毎回わたしのパフェを頼むのは勘弁してほしいかな……」
「なら、あたしが食べさせる場合は?」
「食べるよ? 四トンは食べる!」
「それ、胃袋破裂すんだろ」
「あー、じゃあまずは、胃を鍛えないとね」
「だな」
あっ、そうだ。これ聞いておこうかな。
「ところで、カップルだって思われるのはどう思う?」
「はぁ? イヤに決まってるだろ」
「だよね! わたしも同じ気持ち!」
「だよなぁ? だって……」
「カップルなんて言葉で片付けられたくないから!」
「カップルなんて言葉で片付けられたくないからな」
わたしたちは口を揃えた。
「ふふっ……同じこと考えてた!」
「だな。カップルじゃなくて、マブダチだし」
「うんうん、カップルじゃないよね。親友だもん」
「つーかよ、カップルってなんなんだろうな?」
「それは、告白した両思いの二人……とか?」
「それって、関係性薄くね? まあ、あたしたちほど分厚くしろって意味じゃねーけど」
「だよね。でも、宙ちゃんのことが好きな人がいて、宙ちゃんもその人が好きなら、わたしはなるようになると思う」
「あたしもだ。優のことを好きなやつがいて、優もそいつが好きなら、無言で去ってくよ」
「まあ要するに、わたしたちにはまだ恋愛は早いってことかな?」
「…………だな。じゃ、二軒目のカフェに行くか!」
「まだ食べるの!?」
「ああ。口直しだ」
「そっか」
「優のな」
「……そういうところ、大好き!」
「街中なのに、大声でそういうこと言うな!」
こうして、今日も宙ちゃんと遊んだわたしだった。




