第二話 不登校生徒、登校する
約束どおり来てくれた宙ちゃん。
ただ、机に伏せてるから、わたしは激励しにいく。
「昼休みだよ、宙ちゃん!」
「お、おう……」
「どうかした?」
「いや、久しぶりの学校はこたえるな……」
「宙ちゃんファイト! 放課後になったら、一緒に帰ろ!」
「おう……」
そう言うと、宙ちゃんが椅子を引いてくれたので、膝の上に座る。
「ふぅ……」
そんな中、宙ちゃんは横を向いてスマホをいじる。
わたしの長い黒髪がゲームの邪魔になるからって、横を向くようになったっけ。
というか、三ヶ月前まではこれが日常だったな……。
そんなことを考えていると、女の子の二人組に話しかけられる。
「ねぇねぇ、宙ちゃんだっけ?」
「カッコいいね。ロングウルフでメカクレとかエグすぎるわ」
「あの……宙ちゃんはわたしのだから!」
「ふーん……」
「へー……」
なんか、おかしなこと言ったかな……?
そう身構えていると、二人とも口を揃える。
「「カワイイ~!!」」
「えっ?」
「優ちゃん可愛いね」
「いつもはしっかり者なのに!」
「それな!」
「わわわ……」
「アタシたちと食べない?」
「話し合おーよ!」
「あの、わたし……」
「おい」
わたしが困ってると、宙ちゃんが言う。
「こいつはあたしのもんだ。バカ共はバカ同士よろしくやってろ。あたしは同レベルのやつらとしかつるまねーよ。少なめの脳みそで考えてから回れ右しやがれボケども」
「宙ちゃん……」
「いいんだよ。あたしはおめー以外、眼中にねーんだから」
「なにこのコンビ」
「めっちゃ刺さる」
「……ねぇねぇ、宙ちゃん」
「なんだよ?」
「この子たち、なに言ってるの?」
「あー、アレだ。IQが三十くらい差があったら会話が成り立たないってやつだ」
「あー、アレか!」
なるほど……。
「そういえば宙ちゃん、ごはんは?」
「あー、持ってきてねぇな」
「なら、クリームパン一口あげる。はい、食べて?」
「おう。サンキュー」
がぶりと三分の一を食べる宙ちゃん。
「相変わらずワイルドだね……」
「おう」
「えーと、ここから食べてたから……」
「そういうのやめろ! 照れるわ!」
「でも、間接キスは恥ずかしいし……」
「あ、あたしは平気だ!」
「ならいいか。わたしも、宙ちゃんが平気なものは平気になりたいから」
「なんだその理屈」
そんなことを話しながらクリームパンを食べる。
周りがなんかいつもと違う目で見てくるのは気のせいだと思いたい。
「あ! そんなことより、明日はちゃんと食べ物持ってきてね!?」
「おめーのがあんだろ」
「えー? 間接キス意識しないようにするの、結構恥ずかしいんだよ?」
「……おめーにもそういう感情あるんだな」
「とにかく! 明日からは菓子パン二つ用意するからね!」
「へいへい。勝手にしろ」
「もー……」
絶対両方食べるよね。
宙ちゃんって、結構……いや、かなり意地悪だから。
そして、昼休み終了のチャイムが鳴る。
「じゃあね、宙ちゃん」
「おう。またあとでな」
それから午後の授業も終わり、放課後がやってくる。
「なっはっは! 予習してたところドンピシャだったわ!」
「だねー。三ヶ月前に予習してたところだったから、余裕だったね」
「おう。じゃあ三ヶ月間サボってたから、勉強教えてくれ。図書室でいいぞ」
「うん。どの教科を勉強する?」
「国語だな。漢字はともかく、作者の心情を書けとかわけわかんねーこと言ってくるからよ」
「だね。わたしもいまだに迷うから、一緒にやろ? 数学とかは答えが一つしかなくて楽だよね」
「マジでわかるわ」
こうして、図書室へと向かうわたしたち。
「意外と人いるね!」
「よし! 『世界の朝食』でも読むか!」
「宙ちゃん?」
「……なんだよ?」
「こっちの『料理本』の方が面白いよ! オムレツの作り方載ってるし!」
「マジか。でも、オムレツは技術的にキツくね?」
「あー……そうだね」
「プロの作る動画と比べると、どうしても見劣りするからなー。やっぱり見るのが一番!」
「えー? やっぱり作れないと、将来困るよ?」
「……じゃあ、おめーが作ってくれ」
宙ちゃんがそう言うと、図書室の空気が一瞬だけしーんとする。
「…………いいけど、当番制ね!」
「チッ……卵かけご飯でもいいか?」
「それ、宙ちゃんも同じもの食べるんだよ?」
「あっ、そうか」
ここでわたしは、宙ちゃんに言ってあげる。
「やっぱり、同棲するならどっちも作れた方がいいよー?」
「同棲? あたし、そんなこと言ったっけ?」
「あっ! ……もう! 宙ちゃんの意地悪……」
「ははは! 冗談だよ。ずっと一緒にいような!」
「えー? ならわたし、子孫作れないのかぁ……」
「なら、どうにかして作るか!」
「いや、無理でしょ」
「けどまあ、おめーの人生だ。無理にとは言わねー」
「……まあいっか! 子どもがいなくても!」
「…………で、そろそろ勉強しねーか?」
「だね! 料理の勉強しないとね!」
「いや国語に決まってんだろ。バカか?」
「え? 一緒にいようとか言ってたのは……?」
「それはガチ」
「ならいいか。よし、勉強しよー!」
「おう」
そうして、勉強を宙ちゃんに教えるわたしだった。
主人公の優は黒髪ロングの女子です。
会話中心の作品なので、本文では容姿描写が少なめです。
すみません




