↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/38

第28話:開幕!決死の聖域攻略戦(セルフ実況付き)


天を突くほどの巨大な山。

その頂きに鎮座する白亜の神殿群『聖域』へと続く道は、ただ一つ。


麓から頂まで、雲を貫いて続く、気が遠くなるほど長大な石の階段だった。


「うわー、最終ダンジョン、気合入ってるねー! グラフィック最高じゃん!」


麗奈が観光気分で歓声を上げる。

しかし、健太にとっては絶望でしかなかった。


(どうやって、この荷車で階段を登るんだよ! エレベーターとかないのか、このクソ仕様!)


健太が鎧の中で絶望していると、フィーリアがこともなげに言った。


「案ずるな。私が運ぶ」


次の瞬間、健太は凄まじい浮遊感に襲われた。

フィーリアが、荷車ごと健太を、米俵でも担ぐかのように軽々と肩に担ぎ上げたのだ。


「うおおおおお!? 揺れる! めちゃくちゃ揺れる! もっと丁寧に扱え、この脳筋王女!」


健太の悲鳴をBGMに、フィーリアは息一つ切らさず、常人なら数日がかりで登るであろう何千段もの階段を、驚異的なペースで駆け上がっていく。


その姿は、もはや人間のそれではない。


◆ ◇ ◆


数時間後。

ついに階段を登り切った一行は、聖域の入り口、第一の宮『賢者の宮』の巨大な門前に立っていた。


その瞬間、天からまばゆい光の柱が降り注ぐ。

光の中から、完璧な美女の姿を保った女神アスタルトが、悲壮な表情でゆっくりと降臨した。


「勇者たちよ、よくぞここまで……!」


彼女は、まるで最終決戦前のヒロインのように、憂いを帯びた声で語りかける。


「これより先は、神をも恐れぬ者たちが待ち受けています。ですが、教皇との『契約』により、わたくしが直接手を下すことは禁じられているのです。そこで……!」


アスタルトは、どこからか取り出した禍々しいデザインの黄金の矢を、高々と掲げた。


そして、一行が制止する間もなく。

その矢を、自らの胸へと深々と突き立てた。


「ぐはっ……!」


鮮血が、純白の衣を赤く染める。


(こいつ、また面倒なことを……!)


健太が顔を引きつらせた、その時だった。


――テテテテテテーン……!


世界のどこからともなく、緊迫感を煽る、やたらと古臭いBGMが、大音量で鳴り響き始めた。


◆ ◇ ◆


「な、なんだこのBGMは!?」


一行が音の出所を探して困惑していると、今度は荘厳で、どこか聞き覚えのある第三者のような声が天から響き渡った。


(アスタルトが必死に声色を変えているだけだろ……)


『――邪悪の矢に女神が倒れた! 女神の心臓に矢が届く時、世界は大いなるリセット、「グレート・リセット」を迎える! リセットまで、あと9時間! 戦え、女神の戦士たちよ!』


その重大な予告が、まるで80年代アニメの次回予告のように、高らかに、そしてご丁寧に告げられた。


◆ ◇ ◆


「9時間限定のレイドイベント!? やばい、急がないと! 失敗したらサーバーリセットってこと!? 運営、鬼畜すぎでしょ!」


麗奈は世界の危機を、超高難易度の時間制限イベントと即座に解釈し、緊張でゴクリと唾を飲んだ。


一方、健太は。

もはやツッコミの処理能力が限界を超えていた。


(なんでだよ! なんでBGMまで流れんだよ! ていうかグレートリセットって何!?)

(世界の終わりをそんな軽く告げるな! しかも『戦え』ってお前、自分で刺したんだろうが! マッチポンプも甚だしいわ!)


健太の魂のツッコミが、兜の中で木霊する。


荘厳なナレーションが終わると、アスタルトは胸に矢が刺さったまま、今度はハッとしたように目を見開き、ホラー漫画の語り部のような口調で話し始めた。


「ま、まさか……! この先に待ち受けるのは……!」


彼女がそう言った瞬間。

一行の脳裏に、威圧的にそびえ立つ、四つの黒いシルエットのイメージが、強制的に浮かび上がった。


アスタルトの解説が、その映像に重なる。


「なんだってー! 教会最高戦力、四天王! その正体は謎に包まれ、真の姿を見た者は誰一人として生きては帰らないと噂されているわ……! まさか、いきなり、あの伝説の四天王と戦うことになるなんて……!」


(いや、その内の一人、この間まで普通に道端で会ってたし! 全然伝説感なかったし!)


健太は心の中で激しくツッコむが、もちろん口には出せない。


こうして、自らタイムリミットを作り、世界の終わりを予告し、さらには思わせぶりな解説で敵の格を(無理やり)引き上げてくれる――


世界一有能で迷惑な解説者が爆誕した。


一行は、それぞれの困惑と緊張とツッコミを胸の内に渦巻かせながら、ゆっくりと開かれていく第一の宮の巨大な扉へと、足を踏み入れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。