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第15話 銀河大戦、参加者募集


「……武闘大会を開く。その名も…『銀河大戦』だ…」


ギデオンの疲労困憊の宣言に、その場にいた冒険者たちは一瞬、何を言われたのか分からないという顔をした。


「ぎ、銀河大戦…?」

「なんだそりゃあ…?」


しかし、彼らの視線が、穴の中心で神々しい光を放つ鎧に向けられた瞬間、空気が変わった。


「あの鎧が賞品なのか!?」

「すげえ…! 一目見ただけで分かる、伝説級の武具だ!」


健太は、我に返ってギデオンに詰め寄った。


「正気ですか!? 大会なんて! ていうか銀河大戦って、いくらなんでも名前が壮大すぎませんか!?」

「俺に言うな…」


ギデオンは死んだ魚のような目で答えた。


「女神様のお告げだ。逆らえるわけがなかろうが…」


彼は役場の者たちに命じ、神の鎧を厳重に、しかしどこか汚物でも扱うかのように、慎重に運ばせた。


噂は、尾ひれどころか銀河翼ギャラクシーウィングまでついて、あっという間に街中に広まった。


「東の牧場に神の鎧が出現!」

「優勝賞品は神の鎧! ギルドマスター主催の武闘大会『銀河大戦』開催決定!」


というニュースに、静かだった街は、祭り前のような異様な熱気に包まれ始めた。


◆ ◆ ◆


その夜。

一行が泊まる激安宿「馬小屋の眠り亭」は、いつも以上に騒がしかった。大会の噂で街に人が集まり始めたのだ。


健太は、藁のベッドの上で一人、決意を固めていた。


「いいか、お前ら。あの大会は俺たちには関係ない。神の鎧だかなんだか知らんが、俺たちの目的は明日のパン代を稼ぐことだ。明日からはまたギルドで地道に依頼を探すぞ」


しかし、その健太の常識的な宣言は、一人の女神によって無に帰された。


その夜、健太の夢に、ぼんやりと女神アスタルトが降臨した。

リソースが少し回復したのか、その姿は前より安定したポリゴンになっている。


「健太! 銀河大戦、もちろん出るよね? 勇者がこういう王道イベントに参加しないとかありえないから! 最高の見せ場だよ!」

「冗談じゃない!」


健太は夢の中で全力で拒否した。


「俺が参加してどうするんだ! 一撃で死ぬわ! いいか、俺の役目は肉壁だ! 目立つ主人公じゃない!」


だが、女神は全く聞く耳を持たない。


「大丈夫だって! 死んでも私が生き返らせるから、問題なし! これは、あんたが主人公として輝くための重要なフラグなんだからね! はい、エントリー完了!」


アスタルトがウインクした瞬間、健太の手の中に、固い木の感触が生まれた。


「人の話をきけーっ!」


健太が叫んだところで、夢から覚めた。

手には汗をびっしょりとかき、そして、そこには夢で感じた通り、


『銀河大戦 出場者証』


と書かれた、安っぽい木札が握られていた。


◆ ◆ ◆


数日が過ぎた。


街の東の牧場には、急ごしらえの観客席と、立派なリングが設置され、すっかり大会会場の様相を呈していた。

会場脇に設けられた参加受付の長机には、ギデオンがまるで魂が抜けたかのように座っている。


そこへ、健太たち一行が、それぞれの思惑を胸に現れた。


「魔王・姫川麗奈、参戦! よろしく!」


麗奈は、意気揚々と参加者リストに、堂々と本名を書き込んだ。

続いてフィーリアが、無言でリストに名を連ねる。


健太が「お前も出るのか!?」と驚くと、彼女は兜の下でこともなげに言った。


「貴様が参加する以上、貴様以外の参加者をすべて排除するのが私の役目だ」


(それ、俺が優勝するんじゃなくて、不戦勝になるだけじゃねえか!?)


健太がツッコミを入れる間もなく、ひときわ異彩を放つ男が、優雅な仕草で受付に立った。


「面白そうだ。私も混ぜてもらおうか」


『光速の賢者』レグルスだった。

彼は涼しい顔でリストに名を連ねると、健太を一瞥し、フッと鼻で笑って人混みの中へ消えていった。


ギデオンは、また一人、明らかにヤバい奴が増えたことに、もはや表情を変えることすら諦めていた。


◆ ◆ ◆


やがて参加受付が締め切られ、ギデオンが、まるで死刑囚リストでも読み上げるかのように、震える手でトーナメントの組み合わせ表を掲示板に張り出した。


健太も、恐る恐る自分の名前を探した。

そこには、彼の短い異世界ライフの終わりを告げるかのような、絶望的な事実が記されていた。


【銀河大戦 一回戦 第八試合】

田中 健太 VS 姫川 麗奈


健太は、自分の目を疑った。


健太の視線の先で、麗奈が自分の名前を見つけ、「あ、ケンタとだ! 一回戦よろしくね! 正々堂々、全力で戦おう!」と、満面の笑みで親指を立てている。


自分の対戦相手が、ゴブリンの巣を銀河ごと爆砕する女であることを再認識し、健太の目の前が、ゆっくりと暗転していく。


(……終わった)


健太の短い異世界ライフは、今、終わりを告げようとしていた。

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