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第26話 UR対決 ミカエル vs ゴッドウォーリアー (決勝戦中盤)

4. 中盤・後半 ―― 前衛の死闘


「ZERO、前に出るわよ! いつまでも撃たれてるだけじゃ話にならない!」

ボイスチャット越しに響くScarletの声に、俺は短く頷いた。後衛の射撃戦で一歩先を行かれた以上、システム的な不利を覆すには、前衛の物理的な暴力で切り開くしかない。


「行けScarlet。まず鉄将軍を落とせ。壁を一枚剥がす」 『任せなさい! ―― レーザーナイト、前へ!』


ScarletのSSR『レーザーナイト』が、光剣を構えて敵の前衛に弾丸のように突撃した。 目標は、Night

Houndを守る二重壁の外殻――SSR『鉄将軍』。基礎HP1200。そして、通常攻撃によるのけぞりを無効化する『常時スーパーアーマー』持ちの厄介な機体だ。


レーザーナイトの光剣が、鉄将軍の分厚い胸板に叩きつけられる。だが、鉄将軍は微動だにしない。 『スーパーアーマーか……! 普通に斬っても止められない!』

「ブレイクゲージを溜めろ! フルバーストスラッシュだ!」


左入力スキル『フルバーストスラッシュ』――五連の光剣乱舞。ブレイク蓄積一二ポイント×5=六〇ポイントの削り値。

光の奔流が鉄将軍の重装甲を連打し、ブレイクゲージの数値が一気に跳ね上がる。鉄将軍の巨体がよろめいた。ブレイク状態への移行。厄介なスーパーアーマーの判定が剥がれる。


だが、HP1200の鉄壁は、レーザーナイト単体の火力では削りきれない。ブレイク中に下入力スキルのレーザーフォール(急降下攻撃・ダメージ2倍)を頭上から叩き込むが、まだHPが三割残っている。ブレイク時間が終了して体勢を立て直されれば、全ての苦労が振り出しに戻る。


そこへ――横合いから、弾丸の嵐が鉄将軍を激しく叩いた。 俺のマッハガンナーだ。

撃破される直前の最後の行動タスクとして、俺はマッハガンナーを意図的に前進させ、鉄将軍の射程内に無理やり移動させていた。スキル『フルバースト』――ダメージ倍率0.5倍×12hit。瀕死のマッハガンナーが足を完全に止め、残された全弾をブレイク中の鉄将軍に叩き込む。


マッハガンナー自身は、その直後にナイトメアスナイパーの無慈悲な狙撃で撃破されたが――その決死の前進射撃が、鉄将軍の残りHPをミリ単位の狂いもなく正確に削り切っていた。


【 SSR マッハガンナー ―― 撃破 】 【 SSR 鉄将軍 ―― 撃破 】


「壁の一枚目、突破……! マッハガンナーと引き換えだが、SSRのコストは無駄にさせない。計算通りだ」

だが、レーザーナイト自身もHPを大幅に消耗している。鉄将軍のアイアンバッシュ(ブレイク蓄積+二十ポイント)とシールドチャージの痛い反撃を何発も受けているからだ。


そしてその背後から――二枚目の壁が、地響きと共に前進してきた。


UR『ゴッドウォーリアー』。基礎HP1500。ブレイク状態ののけぞり時間を半減させるパッシブスキル『不屈』持ち。

Vikingのアバターは巨大な戦斧を軽々と振り上げ、画面越しに獰猛な殺気を放っている。

Viking:『壁を一枚壊したか。だが俺は、鉄将軍よりずっと硬いぞ、小娘』


『ならこっちも、一番強いのを出すわ! ―― UR 大天使ミカエル、展開!!』


白銀の甲冑に六枚の翼。Scarletのデッキに潜む最大の切り札が、光の粒子を撒き散らしながら戦場に降臨した。 基礎HP1300。攻撃力90。移動速度300。

――そして、ジャンプ回避のクールダウンが完全にゼロになる『常時エアリアル』。空の支配者。


UR 対 UR。前衛の頂上決戦が、今始まる。


    *    *    *


ミカエルの右入力スキル『ディヴァインチャージ(光速突進・1.8倍)』が、黄金の尾を引いて猛突進する。

対するゴッドウォーリアーの右入力スキル『ゴッドチャージ(スーパーアーマー突進・2倍)』が、大地を砕きながら正面衝突した。


凄まじい衝撃波がアリーナ全体を揺さぶり、両者のアバターが大きく弾き飛ばされる。 「互角……!? あのデカブツ、アタシの突進と正面からぶつかって弾けないの!?」

「スーパーアーマーの判定だ。被弾してもアクションが止まらない。正面からの物理的な力比べではお前がシステム的に不利だぞ、Scarlet」

『分かってる! なら――上から行く!』


ミカエルの六枚の翼が大きく羽ばたき、空中へ飛翔する。 常時エアリアル――地上の敵が容易に触れられない聖域。ミカエルの絶対的な優位領域だ。

上空からの上入力スキル『ホーリーランス(光の槍・2倍・打ち上げ効果)』が、ゴッドウォーリアーの肩口に鋭く突き刺さる。


だが。


Viking:『……効かんな』


オープンチャットで、Vikingが笑う。

『不屈』のパッシブ効果。ブレイク状態でものけぞり時間が半減する。通常の打ち上げ効果が、この戦神にはほとんど機能しない。着地の隙を狙ったミカエルへ向けて、ゴッドウォーリアーの下入力スキル『アースクラッシュ(範囲攻撃・一・八倍・画面半分)』が下から襲いかかる。

地面が爆発するように隆起し、アクション画面の下半分が完全に攻撃範囲と化す。 Scarletは無限ジャンプで空中の更に上へと逃れたが――。


Viking:『まだだ』


Vikingが詠唱に入った。 左入力スキル『ラグナロク』――詠唱時間2秒。画面全体攻撃・5倍。ブレイク蓄積+35ポイント。スーパーアーマー中に発動。


画面全体。空中ですら逃げ場が存在しない、回避不能のシステム攻撃。 Scarletの目が大きく見開かれる。 『逃げ場がない……! 来るわよZERO!』

「やり返せScarlet! カウンターだ!」 『ジャッジメント!!』


ミカエルの左入力スキル――詠唱一秒。画面全体に光柱・4倍。 ラグナロクの大剣が世界を叩き割る直前、聖なる光柱が戦場を正確に貫いた。


相打ち。


轟音と閃光が吹き荒れ、両者がアリーナの端と端まで吹き飛ばされる。ゴッドウォーリアーのHPが大きく削れ――だが、ミカエルのHPも残り六割を切った。


「くっ……このデカブツ、HP1500がどれだけ硬いか、身に染みて分かったわ……」 Viking:『いい根性だ、小娘。だがお前のHPは先に尽きるぞ』


    *    *    *


前衛が派手にぶつかり合う最中、MAP上の後方では別の冷徹な攻防が進行していた。


消耗しきっていたScarletのSSR『レーザーナイト』に、Viking側のSSR『ドワーフメイジ』がMAP魔法『アースロック(十字二マス範囲攻撃)』を叩き込む。

岩柱が地面から突き出し、瀕死のレーザーナイトの装甲を貫いた。


【 SSR レーザーナイト ―― 撃破 】


「レーザーナイトが……!」 だが、俺もただ指をくわえて盤面を眺めていたわけではない。


ミストメイジの霧の中から――UR『ウラヌス』のMAP魔法『アースロック(十字三マス)』が、Night Hound側のダークガンマンの座標を正確に捉えた。

ウラヌスの魔法効果範囲は、十字3マス。ドワーフメイジのそれより1マス広い。霧に隠れて詠唱の予兆が分からないウラヌスからの理不尽な奇襲に、ダークガンマンは回避ボタンすら押せなかった。


【 SSR ダークガンマン ―― 撃破 】


Night Hound:『ウラヌスはアースロックも持っているのか……。厄介だな』

URユニットはスキル情報が未公開のまま実装されるため、実戦で使われていないURユニットには事前情報というものが存在しない。

決勝直前に、俺が全財産を突っ込んでガチャで引いたことが、ここで最大の幸運バグとして機能した。


中盤終了時点での残存戦力。 俺たちの陣営:UR ウラヌス(ほぼ無傷)、SSR ミストメイジ(中程度消耗)、SSR ホーリーナイト(ほぼ無傷)、UR

ミカエル(HP六割未満)。 Night Hound側:UR ナイトメアスナイパー(ほぼ無傷・ヘイストゾーン上)、SSR

クロノメイジ(無傷)、SSR ドワーフメイジ(軽消耗)、UR ゴッドウォーリアー(HP六割)。


互いのSSRの駒が抉り合い、盤面はURユニット中心の最終局面に移行した。


    *    *    *


ダークガンマンを失ったNight Houndは、即座に思考のアルゴリズムを修正し、次の標的を定めていた。 ナイトメアスナイパーの銃口が――俺の後衛に向けられる。


Night Hound:『お前の火力源は潰した。次は、その鬱陶しい霧の維持装置を狙う』


射程七マス。透明化ゴーストクロークを意図的に解除し、正面から撃ち込んでくる。もはや隠れる必要がないと合理的に判断したのだろう――残った射撃ユニットが自分だけである以上、火力を目に見える標的に集中させる方が効率的だからだ。

ナイトメアスナイパーの極悪な弾丸が、霧の端に位置するミストメイジの傍をかすめる。 二発目が肩を撃ち抜いた。ミストメイジのHPが大きく削られる。


(ミストメイジが落ちれば、霧のデバフを維持できなくなる。切り札であるウラヌスの姿が丸裸になる――)


俺はミストメイジの位置を後退させ、霧の奥へ深く隠したが、Night

Houndは既に発射軌道からミストメイジの移動パターンを完全に計算している。三発目、四発目と、射撃の命中率が確実に上がっていく。


Night Hound:『あと六発だ、ZERO。お前の張る霧は、そこで終わる』


(……このまま後衛での射撃戦を続ければ、確実に俺が負ける。Night

Houndの射撃精度は、霧の中でも時間とともに必ず収束する。ミストメイジが落ちる前に――俺の一手で、この盤面の決着をつけるしかない)


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