終幕
大変失礼いたしました。送り仮名をルビに含めず、漢字の部分にだけルビを振るように修正しました。また、ご指示通りアティマ、アスラ、レオ、アルテア、ウィアトルなどのカタカナにはルビを振っておりません。
継承される魔王の座と、勇者との決着
更に十年が過ぎた。
特に大きな事は無いが、着実に拠点は広がり、発展していく。
子供たちは大人へと変わっていく。
身長が伸びた?声が低くなった?髭が生えた?
何をもって大人と呼ぶのか、勉強島に居た頃は卒業がそのきっかけだったがそれはもうない。
子供の育成は一つのきっかけ足り得るだろう。
勿論この十年で多くの子が産まれ、最初魔力に覚醒しただけの少年少女は二次性徴を終え、新たな子供たちの姉や兄として立派に振る舞っている。
勉強島にいた時のような教育を施せていないのが心残りだ。
まあ、僕も子供を育てその子が独り立ちしたのだ。
「アスラ、教義の国が勇者なる人物を選出してきたぞ」
「知ってる」
笑みを浮かべて、答える。
「知ってたか。どうするつもりだ?」
「どうもしないさ。アティマを殺した連中とは関わりが無いだろ。向かって来たらこれまで通り撃ち落とせば良い。だが、勇者か、勇者なら俺が対峙しないといけないな。そう思うだろ?」
「思わん。今の平和の、緊張状態の中心はアスラだ。死にました、まで行かなくても戦闘が困難です、だけで人類同盟側が活気付く可能性もあるんだぞ」
「それでいいんだよ。先の戦争は俺が殺戮したことで止まった。なら、向こうが恨むのは俺だけだろう?」
「は?死ぬつもりなのか?上手くいく保証も無いのに?」
「俺を倒した勇者が、」
扉が勢いよく開く。
凛と立つ人影はもう小さな少女ではない。
金髪や佼しさにアティマの名残を残しつつも、巻いた角や滲み出る性格にアルテア特有の美しさが、いや性格はこんなもんだったか?
「お父様。死ぬつもりとか聞こえたんですけど、説明頂けますか?」
やっぱり圧が強まっているかも。
「別に死ぬつもりは無いさ。倒された事にして和平の方向に持っていけないかなぁ、と」
「普通に考えて出来るわけないでしょう。レオさんもそう思いますよね」
「まあ、そうだね」
指を眼前に出され、逃げるように背筋を伸ばす。
だが、これ以上は、椅子がひっくり返る。
「縦んば、勇者が俺の知り合いだったら?貧民街で拾って角はあげられないから壊れる寸前まで魔力を与えて無理やり魔力量を増やしたから、最後で俺の半分位はあったぞ」
「その拡張方法は痛みを伴った筈、そこまで増やすなんて非人道的な事を」
「もしかしてそれを根に持って」
引っ込められたのは良いけど、二人してドン引きするのはどうなんだ。
「根に持たれているかもしれないが、勇者となって貰うのも頼んだことだ。今人類同盟側で最も魔力を持っているのはあいつで、つまり力を持つのもあいつだ」
「勇者として宣伝し、倒され、その勇者が和平を結ぶと」
「魔物とかを倒したりして知られる時間が数年は必要だろうけど、そうなったらアルテアが三代目魔王だな」
「待ってよ。倒された後、お父様はどうするの?魔力を持ってる人なら生きてる事なんて気づくでしょ。本当に死ぬつもりじゃないのよね」
一転して涙目になるアルテアに年相応の幼さを感じ、笑みが零れる。
「外に漏れる量が問題な訳で、魔力を空にしておけば感知できなくなる。そのために寝ている間も勝手に使われる道具も造ったし、終わったら勉強島みたいなことしようかな。希望者だけ集めて」
「取り合えず後数年あるんだな?」
「あいつが俺の事をよっぽど恨んでなければ?」
「仕方ないどうにかなるように考えておこう」
レオが早足で去る。
部下も取ってたし話し合うんだろうな。
勇者の情報も何処からか掴んでたし、外国とも繋がっているのかもしれないな。
何とかなりそうで良かった良かった。
良かった良かった、チラ。
丸く収まりそうで良かったなぁ。
チラ。
「お父様。お話、良いですか。良いですよね」
アルテアから魔力が広がり、服が椅子と離れなくなり、扉と窓が凍結する。
乾いた笑いを絞り出す。
「お父様も楽しそうで良かったです」
ハハ、悪魔が見える。
角だけで羽が無いから鬼の方が良いかな。
勇者の選出から丁度三年目に決戦の日が来た。
あいつはちょっと違うが国のトップ同士が一騎打ちとは何時の時代だよと。
海に浮かぶ孤島が指定され、向かう。
他の人も付いて来が、ただの見届け人でありお互いに面倒にならないよう干渉はしない約束だ。
久しぶりああいつと対面する。
「こっちは全員に話して|い|る。魔王らしく振る舞う必要は無いぞ」
「良い仲間を見つけられたみたいだな。それで、名前は決めたか?」
「決めたさ、僕の名前はウィアトルだ。クソッたれめ」
大きくなった体で、剣を振り降ろされる。
魔力で相応に強化され、重く鋭いが受け止める。
「おい、俺は倒された振りをするから戦う必要は無いんだって」
「それでも一発斬らないと治らないだろ。どれだけ痛かったと思ってるんだ」
「でも、今はちやほやされて嬉しいんじゃないか?」
「そうだけど。納得出来るかは別の事だ。アルテアさんを|くれたら許してやる」
拳撃が響く。
「俺が上げるものじゃない。平和条約を結ぶんだ、自分で手に入れて見ろ。だが、お前が娘に付く悪い虫だというのなら、ちょっと締めておかないとな」
指を鳴らし、威圧する。
|こちらからにじり寄れば、後退する。
「丁度、戦った証にこの島をボロボロにしようと思っていたんだ」
「ま、待てよ」
「待たない」
ウィアトルには当て無いが、出来るだけ凄絶に、悲惨に見えるように、そして魔力を使い切るように島を破壊する。
「じゃあな、ウィアトル。頑張ってくれよ」
「まだ話は終わってないぞ」
「俺に話すことはない」
伸ばされた手を振り切って、離れる。
役割は終わったと、海に入れて流されてみる。
魔物化した魚たちがうようよしていて危険だった。
なけなしの魔力で適当な国に滑空していき、適当な人に拾われた。
角が生えただけの変わり者として二百年程度は生きたが、もう皺くちゃで寝たきり生活だ。
此処からは聞いた話だが、勇者は魔王を討ち、次代の魔王と和平を結んだらしい。
勇者と魔王の仲は傍目には良いらしいが魔王の方が袖にしているとか。
勇者を崇める宗教が出来たとか、国を建てたなんて話も聞いたか。
|そして何故か魔王の見た目が変わらないらしい。
側近等も老けるのが遅いことから魔力によって長寿になるとかならないとか。
僕が魔力を使い切るようにしていたのにこれだけ生きているからそれは確かなんだろうな。
魔王と勇者が揃って行方を眩ます日があるらしい。
毎年その日だけはおらず、またその日にある一軒の窓から光が溢れるのを見た者がいたことから若返り奇跡を起こしている、なんて噂が立っている。
あと一話、閑話があります。




