かつて世界は今よりも発展し、賑わっていた。
しかし、世界を暗雲に包み、恐怖のどん底へと落とす魔王が誕生した。
魔王は空を飛び、国を回り、人々を殺して回った。
当時あった国々は団結して立ち上がるが一蹴されてしまう。
その絶望の淵に一人の青年が立ち上がった。
そう、後に勇者と呼ばれる青年である。
彼は神聖国の端の小さな村に生まれ、決して豊かでは無いが信奉深い生活を送っていた。
ある日彼に神託が下った。
この剣を持って立ち上がれと、魔王に脅かされる世界を救うのだと。
神より賜りし聖剣を持って勇者は苦しむ民を救っていく。
神聖国も彼を聖人に認定し、支援を行う。
より多くの人を救うために、勇者は遂に魔王に挑む。
勇者は仲間を連れ魔王場へと攻め入るが、待っていたのは卑怯にも多くの魔族たちだった。
仲間たちは己が身を顧みず勇者を先へと進める。
勇者は聖剣を振う、その先にある平和を目指して。
魔王と対峙した勇者は全身全霊を賭して戦う。
その戦いは三日三晩続き、島の形が変わるほど激しいものだったと伝わっている。
果てに勇者は魔王の角を断ち、首を刎ねたのである。
勇者は残された魔族に対し、神のごとき慈悲をもって「和平」を提案したのである。
勇者の高潔な魂に触れた魔族たちは涙を流して受け入れる。
しかし、魔族の本性は醜悪であった。
魔族は魔物を操って今なお人を襲いながら、自分たちも被害者だなどど嘯き同情を誘っている。
これこそが魔族の狡猾な罠である。
魔族は闇に生きながら世界の支配を企んでいる。
だが、案ずることはない。
魔王が再び現れる時、神聖国には勇者が現れる。
聖剣を携え、救を求める人々を救済し、安寧を齎す。
これこそが神聖国に神から与えられた役割なのである。
「どうですかね。こんなもんで」
勇者物語(仮)の草案を渡す。
一番高い位置に座る彼女は足を組んだままさっと目を通すと。
紙を突き返す。
「もっと魔王を残虐非道に書いてくれる? 忠告を無視して勝手に建国したとか、人を攫ったとか書くこといっぱいあるでしょ。あと勇者の仲間たちの加入があっさりし過ぎ、信仰が強い者から選ばれるとかそう言うことを書いてよ。やり直しね」
「今でも結構盛ってますよ」
「全然足りないわよ。漠然と勇者を信じさせるだけじゃないの、教会に貢献するようにさせないといけないのよ」
机が叩かれる度に山のように積まれた金貨が揺れる。
「これ以上は勇者様に怒られませんか?」
「その時は適当に謝っておけば良いじゃない。どうせ勇者は王国から出てこないんでしょ。それに、あなたは勇者から直接聞いたんだから胸張って書いとけば良いのよ」
「聞いたって言っても、もう原型ないですよ?」
「良いのよ、それが物語って物だから。まぁ、早く書いてきなさい。これ以上待たせるなら、報酬減らすから。ほら、紙とインク代よ拾いなさい」
彼女はいつも投げて金貨を渡す。
金貨を貰えるなら拾うぐらい何も無いんだけど。
どう直そうかな、
かつて世界は神の秩序の下に平穏で、今よりも発展し、賑わっていた。
しかし、世界を暗雲に包み、恐怖のどん底へと落とす邪悪なる魔王が誕生した。
神の理を嘲笑うが如く魔王は土地を侵し、魔王領として建国した。
空を飛び、従わぬ国を回り、人々を殺し、又攫って回った。
悪逆非道たる魔王は善良なる市民に対して自らの血を注ぎ、手下たる魔族を作り出した。
ちょっと増やしたぞ。
魔王領は魔法帝国として存続してるんだけど、まぁ怒られるのは上か。
適当に書いたら逃げよ。
神より賜りし聖剣を持って勇者は苦しむ民を救っていく。
信仰深い民の迷える声に導かれ勇者は風より早く地を駆け、川を渡り救済を与える。
神聖国も彼を聖人に認定し、支援を行う。
後に勇者の永遠の友となる仲間たちも現れた。
神聖国を守る盾であったが、勇者と同じく神の神託を受け大盾を授かった騎士ベネディクト。
外様の民でありながら、勇者に救われ同じ志を持った狩人ルチア。
そして我らが神聖国の神官を勤め、神の声を聞き、勇者の危機を幾度となく救った神官長サミュエル・テオ
不浄なる魔族の魔力に染まらぬ信仰の盾を心に持つ彼らこそが、勇者を支え導く仲間たちである。
より多くの人を救うために、勇者は遂に魔王に挑む。
仲間ってこんな感じで良いんだろうか?
国に変な奴を付けられそうになったから、貧民街で適当な奴を仲間と言い張った。とか言ってたけど、今更かな。
よし、これを出して隠居しよ。
勇者が王になった王国に行って見たかったんだよね、隣の魔法帝国も教育がしっかりしてるとかで良い国って聞いてるから、妻が出来れば移れたりしないかなぁ。
最後までお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
本作をお楽しみいただけましたら、ぜひ星評価にて応援をいただけますと大変嬉しく存じます。
忌憚のないご感想もお待ちしております。今後の作品づくりに活かしていく所存です。
次作でも皆様とお会いできることを楽しみにしております。
終わり