第19話「成功」
あの日から1ヶ月。
富士大会の予選が始まろうとしていた。
『松下、大丈夫か?』
「はい、大丈夫です。」
『すまないな、このあと急用が入ってな。これからの対応は高山に任せるから、高山からの指示に従ってくれ。』
「分かりました。」
『松下くん、よろしくね。高山秀紀です。』
「よろしくおねがいします。」
『さぁ、予選が始まったよ。今回は松下くんに優先権があるよ。』
31号車がピットを離れる。
「すごい。アンチロールバーの硬さを変えるだけでもこんなに変わるのか。曲がる、曲がる。楽しい。」
低迷を続けていた自分だったが、ただ単に見落としていたアンチロールバーという、クルマのサスペンション周りのねじれ具合を調整するパーツを変更してみたところ、一気に浮上の兆しが見え始めた。
1回目の計測で4番手タイムを記録する。
『4位、4位。いいタイムだよ。このままなら予選Q2も見えてるよ。』
2回目の計測では各セクターの自己ベストを記録し、さらにQ2進出を確実なものにした。
予選日の日程が無事終わる。
結果、
10号車 杏堂 7位
31号車 松下 5位
「この順位からスタートできるのか。最高だ。」
「中根、頑張ったじゃん。前回の思い出払拭できたんじゃないか?」
最終リザルトが表示されたモニターを2人で眺めていた。
「いや、明日の決勝で結果を残してこそですよ。まだわからないですよ。」




