第18話「悔し涙」
表彰式を終え、杏堂が戻って来る。
表彰台に上がれたことを報告していた。
「写真撮りましょう!」チームのマネージャーが提案する。
杏堂が乗る10号車を囲むようにメカニックたちと杏堂が座る。
「松下さんも一緒に撮りましょうよ!」
「いや…大丈夫ですよ…」
そう言い、テントの方へと向かった。
テント内で着替えたスーツや、ヘルメットなどのレーシングギア一式をまとめていた。
もう一度外に出るとすっかり日は沈み、真っ暗な空が広がっていた。
その中でサーキットを照らす電灯が眩しい。
またあの日の記憶が蘇る。
レーサーなんてやめるべきだよな。こんな成績しか残せないんだ。もう意味ない。
バックを車に積み込み、もう一度ピットへと戻る。
すると、そこでは杏堂が1人荷物をまとめていた。
「おーう、松下、おつかれ。」
「杏堂先輩、俺…俺…」声が勝手に震えてくる。
涙が溢れてくる。
「どうしたんだよ、松下〜、ちょっとおいで。」
ピットガレージの上にある観戦スペースに向かう。
「どうした。急に泣き出しちゃって。」
「根岸とか、永野とかルーキー組が結果出してるじゃないですか。なのに自分は結果も出せてないし、クラッシュっていう一番やっちゃいけないことやっちゃったじゃないですか。それが悔しくて…」
「そうかぁ。まぁ、俺も先月、悔しかったからな…ル・マンの結果見たろ?俺がクラッシュしたやつ。」
「あぁ…あれですか。」
「俺も悔しくて、クルマ降りてから泣いたもん。勝ってやるって意志持っていった結果があれだったからな。今日のお前と似てるな。」
「もう、ずっと前から焦っていて…あいつらに負けるんじゃないか、負けたらどうしようって。」
「そうだよな。お前はあいつらより長くレースやってるもんな。負けたくないって気持ちは十分わかる。
とりあえず、今日は泣け。そんで、また明日から頑張っていけばいいさ。」
「はい…」
その言葉にとても安心した。
次はゲーマー時代から得意だった富士スピードウェイでのレース。
絶対にここで悔し涙を嬉し涙に変えてやる。




