第17話「外」
夏休み明けのもてぎ大会。
「暑い…8月の真ん中ってこんなに暑いの…?」
40℃に迫る暑さの中もてぎ戦が始まろうとしていた。
なんとか107%ルールへの抵触は回避した。
無事予選を終え、順位は
10号車 杏堂 3位
31号車 松下 23位
フォーメーションラップを終え、グリッドに着く。
そして、全車一斉にグリッドを離れる。
スタート直後の混乱の中、順位を2つ上げる。
そこから進展なくレースは中盤へ。
レース12周目、ピットインの指示が届く。
『松下、この周ボックス、この周ボックス!』
タイヤを交換し、再びレースへ。
目の前には杏堂。今回からはチームメイトとして見ることになった。
彼の走りをトレースしながら走る。
「なんだ、杏堂先輩。ありえない。どうしたら、そんな走り方ができるんだ?」
一方杏堂もミラーで後方を確認する。
「松下もやるじゃん。俺の走りについてくるなんて。」
目の前の杏堂がピットレーンへと消えていく。
「さぁ、ここからは俺のレースだ。」
ペースアップしていく。
もてぎの最終コーナーであるビクトリーコーナーにさしかかる。
その時だった。
加速の瞬間、マシンが横を向く。
「え…まずいっ…!」
ハーフスピン状態に陥ったマシンを落ち着かせようとする。
進行方向とは反対にハンドルを切るカウンターステアをし、ブレーキを踏む。
減速の姿勢をとる。
しかし、間に合わなかった。
体の左側から鈍い衝撃が来る。
つむっていた目を開き、目の前を見ると左フロントタイヤのサスペンションアームが破損していた。
こうなってしまえばもう自走は無理だ。
『松下さん!大丈夫ですか!大丈夫でしたら、状況の説明を一応お願いします』
いつもとは違い、エンジニアから無線が届く。
「えっと、最終のビクトリーで縁石を踏みすぎて車体が跳ねてそのはずみでスピンしたと思います。」
『分かりました。エンジンを切って、マシンを降りてください。』
「はい。」
指示通りエンジンを切り、マシンを降りる。
ピットに戻ると、代表が歩いてくる。
「松下、ちょっと来い。」
パドックのミーティングルームに向かう。
「なんで、あんなミスしたんだ。あのケースはシュミレーターでも経験してたから想定できていたはずだ。それに見た感じオーバースピード気味だった。攻め過ぎだよ。」
「はい…」それ以上のことは言えない。その通りだ。自分の修正力、学習力がなかった。
「とりあえず、もう終わったからお前の道具は片付けておけ。それと、着替えてこい。」
「分かりました。」
更衣室に入る。
その瞬間悔しさが湧き上がってくる。
「クソっ!」無機質な金属の音が響く。
頑張っても頑張っても結果が出ない。
そんな自分が嫌になりそうだった。
着替えを終え、ピットへと戻る。
杏堂は2位を走行し、表彰台は明確だった。
その後ろにセルモの根岸が続く。
戻ってきたタイミングでレースはファイナルラップに突入する。
メカニックたちは2度目の表彰台が待ちきれず、ピットサイドへと駆け出す。
杏堂が乗る10号車がホームストレートに戻って来る。
メカニックたちは大喜びだった。
自分は誰もいなくなったピットでモニターを見ていた。
杏堂の喜びの無線も聞こえてくる。
その日いいレースをした選手に送られるドライバーオブザ・レースには永野が選ばれていた。
表彰台に向かうと、すでに3人が表彰台に上がっていた。
シャンパンファイトも終わり、レースの終わりが近づいてきた。




